対面授業のメリット:2020年オンライン大学教育を振り返って①
オンライン授業を一年間やってみて、これまでの対面授業の重要性が見えてきた。学習意欲が高い学生にとっては驚異に高い学習効果が得られたものの、成績不良の学生は対面授業をしていた時と比べて散々たる結果であった。対面授業について再考してみる。(小野堅太郎)
オンライン授業といっても様々な形式がある。小野は講義風景を撮影し、簡単に編集した動画をアップロードし、授業開始時間から試験終了まで閲覧可能とした。閲覧履歴が残るので、どの学生がいつ、何回学習しているかを把握することができる。さらに、講義グラレコなるものを提出させるようにしたので、学生がどの程度理解してくれているかフィードバックも得られた。
今思えば、この時、結果を十分予想することができた。動画のリンクをクリックしただけで閲覧していない、講義グラレコの内容が薄い、小テストを不可能な5秒で解答しているなどなど、明らかに勉強していない学生を認識していた。こういった学生の中の一部は、週末や試験前にちゃんと勉強していたものの、残りはそうではなく、勉強しないまんま試験へと流れ込んだ。つまり、オンライン授業は、学生成績の極端な二極化を引き起こしていた。
メールなどで質問してくる学生は、基本的に成績に問題ない。そもそも勉強していない学生から質問が来るわけがない。学生からの質問に答えてオンライン教育をしている気でいたが、不十分であったと反省している。歯学部では歯科医師を社会に送り出すという役割を担っている。漏れなく全ての学生を教育して国家試験に合格してもらわなければならない。
対面授業は、強制的に学生を講義室に着席させ、授業を聞かせることになる。これにはある程度の効果があったのだろう。対面で授業を受けさせても、どうせやる気のない学生は寝たり、他のことをやって授業を聞かないので、状況はオンラインと変わらないのでは?という批判も聞こえる。確かにそうだが、少しは耳に入るし、少しは教科書や資料に目を通す。ふとした事で興味を持ってやる気を出すこともあったと思われる。教員は、寝てたり内職している学生を注意するとことができるし、授業の後で学生を呼び出して指導する事もできる。実は、こういったことは「やる気のない学生の意欲を上げるチャンス」になっていたと考える。オンライン授業ではやる気のない学生を注意することがほとんどできない。
対面授業は授業外において、学生同士の横の繋がりを促進する。全国的に大学でオンライン授業が行われた本年度は例年に比べて退学者が少ないらしい。横の繋がりによる人間関係のもつれが退学理由となっていた可能性がある。それくらい大学内では人との交流があるのだ。
一方、オンライン授業では大学内での人付き合いが減ってしまう。勉強を一人でやる不安もあったかもしれない。試験のヤマの情報が入らなかったかもしれない。他の人がどのくらい勉強しているかわからないのも、自分のやる気に火がつかなかった理由かもしれない。ましてや、新一年生は、新しい環境の中で、友人も少ない中、かなりのストレス下にあったと思う。これらの事は、学業に大きな弊害となる。
そんなわけで対面授業はある程度、新一年生においては大学に復活させた方がいい。オンライン授業の高い学習効果と、対面授業の強制指導と副次的な人間関係構築を組み込みながら、教育方法の再構築が必要となる。
というわけで、始まった新年度。本学は大変な幕開けとなりました。詳しくは書きませんが、ハイブリッド講義予定がフルオンラインになったりしました。一年前と感染症の状況はさほど変わっていない。さて、どうなるやら...。
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