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社員が迷わない企業ビジョンの作り方

企業の北極星を探す「北極星コンサルティング®」をしてます、佐藤です。今回は企業におけるビジョンとは本当は何か、その設定方法をお伝えします。

日本では一般的に企業のビジョンといえば、その企業の理想やなりたい姿を定義されている企業がほとんどです。しかし、それを社員が意識して具体的な行動に移せるでしょうか。判断基準として使える内容ではないケースが多いです。

ビジョンを作る理由は、北極星への道筋をバックキャスティング、逆算することによって、社員がそこに向かってともに努力する、向かっていけるようにすることです。しかし、ほとんどの企業のビジョンが達成できる状態を定義するのではなく概念的であり、どうすればそうなれるのか、そうなれたのかが、何%なったのか、何が足りなくてなってないのかが判断できなくなっています。

具体的に、どうして一般的なMVVにおけるビジョンがうまくいかないのか、では、どういったものを作ればいいのかをお伝えします。



日本企業のビジョンと問題点

日本企業のビジョンの現状

日本の多くの企業が掲げるビジョンは、一見すると魅力的に映りますが、その多くは非常に曖昧であり、具体性に欠けることが多いです。例えば、双日の「サステナビリティ チャレンジ」、三菱商事の「物心共に豊かな社会の実現」、三井物産の「360°ビジネスイノベーション」などは、一見すると素晴らしい目標のように感じられますが、実際には競合他社と交換しても違和感がないほどの一般的で個性のないものです。

ビジョンの曖昧さとその問題点

ビジョンが曖昧であることの問題点は、企業の方向性が不明確になり、社員やステークホルダーにとって具体的な行動指針が見えにくくなることです。その結果、企業全体が一丸となって目標に向かって進むことが難しくなります。

作れば何でも売れた高度経済成長期の後、バブルからの30年が停滞しているのは、その企業の「ならでは」、そしてそこにたどり着くための通過点であるビジョンが曖昧だったことが原因だと思っています。

ビジョンの重要性

ビジョンとは何か

ビジョンとは、企業が将来目指すべき姿や達成したい状態を明確にしたものであり、企業の長期的な方向性を示す重要な要素です。そしてそれはたどり着いたのかを計測できる必要があります。

企業におけるビジョンの役割

ビジョンは、企業の全体像を示すだけでなく、日々の業務や意思決定においても重要な指針となります。明確なビジョンがあれば、社員一人ひとりが自分の役割を理解し、企業の目標に向かって効果的に働くことができます。

判断基準が明確に無い現在は、長時間かつ、大人数の会議を繰り返して合意を取る必要が生じています。

日本企業の具体例

双日のサステナビリティ チャレンジ

双日社は2050年に向けた長期ビジョンとして「サステナビリティ チャレンジ」を掲げ、持続可能な社会の実現を目指しています。しかし、その具体的な目標や行動計画が明示されていないため、社員やステークホルダーにとっては抽象的な概念に留まってしまうことがあります。

双日の長期ビジョン

図を見ても具体的な数値は何もなく、イメージで終わっています。

三菱商事の物心共に豊かな社会の実現

三菱商事は「物心共に豊かな社会の実現」を目指していますが、そのビジョンもまた非常に広範で抽象的です。具体的な取り組みや達成基準が明確でないため、実現への道筋が見えにくいという課題があります。

しかも、どの企業にも当てはまる内容で、オリジナリティがなく、これを聞いてすぐに行動できる、判断基準として使えるものではありません。

三井物産の 360° business innovation

三井物産の「360° business innovation」も、非常に幅広いビジョンです。全方位的な革新を目指すという意味で魅力的に聞こえますが、その具体的な実現方法や指標が明示されていないため、具体性に欠けています。

サブタイトルとして「世界の未来を、世界とつくる。」とありますが、世界とは自分以外と考えるとすべての企業に当てはまり、当たり前過ぎる内容です。明治9年に創業した世界初の商社として三井物産ならではの北極星とビジョンがほしいところです。

ビジョンの具体性の必要性

曖昧なビジョンの影響

曖昧なビジョンは、企業の方向性が不明確になり、社員のモチベーションやエンゲージメントが低下する原因となります。さらに、ステークホルダーや顧客に対しても信頼感を損なうリスクがあります。

具体的なビジョンの利点

一方、具体的なビジョンは、企業の方向性を明確にし、社員が自分の役割を理解しやすくなります。また、ステークホルダーや顧客に対しても信頼感を与え、企業全体が一体となって目標に向かって進むことができます。

定量的な目標を設定する

ビジョンを具体化するためのステップ

ビジョンを具体化するためには、まず定量的なお金以外の目標を設定することが重要です。これにより、目標達成に向けた具体的な事業内容、行動計画を立てやすくなります。

定量的目標の例

例えば、二酸化炭素の排出量を5年間で50%削減する、レアアースの水酸化物の輸入量を3年後に20%増加させる、といった具体的な数値目標を設定することで、企業全体がその目標に向かって一丸となって取り組むことができます。

北極星コンサルティング®としてのビジョン

北極星コンサルティング®のビジョン概念

北極星コンサルティング®における北極星とは、その企業、創業者の思いの入った他社とは交換できないその「企業ならでは」かつ、創業者や経営者の「働きがい」を込めて作ります。社員はその北極星に共感して、入社してきます。特にZ世代はその傾向が強いと思います。

そして、ビジョンとは、企業が北極星を目指すべく途中の通過点、具体的な数値目標であり、その目標を達成するための道筋を示す指針となります。
北極星はお金ではなく、具体的ななにかである必要があるので、ビジョンはお金の金額目標には決してならないのです。

長期的な目標とその重要性

長期的な目標は、企業が持続的に成長し続けるために重要です。短期的な利益にとらわれず、持続可能な成長を目指すことで、企業は長期的に安定した成長を遂げることができます。

3年以上先のビジョンを設定する場合、VUCAの時代ですから注意が必要です。私個人としては3年以上先のビジョンを設定する必要は無いと思ってますが、どうしても長期ビジョンを作りたい場合は、まず2軸または3軸を設定し、その軸からシナリオプランニングで4つのシナリオを作成し、そのうち一つ無いし二つを採用して未来を想定します。そして、その未来で定量的なビジョンを設定します。

キリンは、「政治経済」「生活者価値観」「業界エコシステム」の3つの軸に整理しシナリオプランニングしています。

キリンが想定する未来の3軸


短期および中期の目標設定

1年後の目標設定

1年後の目標を設定することで、短期的な行動計画を立てやすくなります。これにより、具体的な成果を上げるためのステップを踏み出すことができます。

3年後の目標設定

3年後の目標を設定することで、中期的な視点での計画を立てることができます。これにより、企業の持続的な成長を目指すための具体的な戦略を策定することができます。

企業に取って最も重要な数値だと考えています。

ミッションとビジョンの関係


北極星コンサルティング®

ミッションの役割

ミッションとは、別の note で書いた通り、 企業が日々の業務において何を達成しようとしているのかを示すものであり、ビジョンを実現するための具体的な製品、サービスとなります。決して神からの啓示などの第三者から命じられた外的コントロールではありません。

ビジョンとミッションの関係性

ビジョンとミッションが一貫していることが重要です。ミッションがビジョンを実現するものであり、ビジョンに向かって企業全体が一丸となって進むための具体的な行動指針、ストラテジーが必要となります。
ビジョンの先には、北極星があります。

MVVとビジョン

聡明な読者の皆様にはおわかりいただけたかと思いますが、MVVの定義するあいまいなビジョンは百害あって一利なし、絶対に作ってはいけません。

ドラッガーが「ネクスト・ソサエティ」でMVVを定義しているという記事が横行してますが、この本にはそのような話はでてきません。誰かが勝手に捏造した話がコピペされ、大変恥ずかしいことになっています。この話は別の記事で取り上げたいと思います。

新規事業とビジョン

新規事業開発におけるビジョンの役割

新規事業を開発・企画する際には、ビジョンが重要な指針となります。ビジョンが明確であれば、新規事業が企業の長期的な目標、北極星にどのように寄与するかを理解しやすくなります。

経営企画は、現場に決して金額の予算を与えるべきではありません。バブル時代、日経新聞が人々を財テクに煽って社会全体がおかしくなりました。本業をおろそかにして、日本全体が金儲けに走ったのです。企業は結果的に売上を得るべきであり、売上、お金を目標にするべきではありません。

金額以外の予算、目標が経営企画から降りてきたほうが、新規事業をより具体的に検討することが可能になります。その数値目標が到達すべき状況、ビジョンです。

現在の事業の見直しとビジョン

現在の事業を見直す際にも、ビジョンが重要な役割を果たします。ビジョンに基づいて現在の事業を評価し、必要に応じて改善や改革を行うことで、企業の持続的な成長を目指すことができます。

北極星とビジョンは一貫しています。そのビジョンを達成するための製品やサービス、すなわち事業がミッションです。ビジョンを実現できない事業はクローズするか売却すべきです。

たとえば、「渋谷の犬を幸せにする」という北極星を定義していたときに、爬虫類を扱うべきではありません。そこで逆に北極星を「世界のペットを幸せにする」、「爬虫類と犬が大好き」と変えてしまうと「ならでは」がなくなってしまったり、コンセプトが共感されなくなり大手の資本に潰されてしまいます。

まとめ

具体的なビジョンの重要性

企業におけるビジョンは、企業の方向性を明確にし、社員やステークホルダーに対して信頼感を与える重要な要素です。ビジョンが具体的であればあるほど、社員が一体となって目標に向かって進むことができます。

企業の成功に向けたビジョン設定

企業の成功に向けて、ビジョンを具体化し、定量的な目標を設定することが重要です。これにより、企業は持続的に成長し続けるための具体的な行動計画を立てることができます。

FAQs

1. ビジョンとは何ですか?
ビジョンとは、企業が将来目指すべき姿や達成したい状態をお金以外で定量的に明確にしたものであり、北極星に向かう企業の途中経過を示します。

2. 具体的なビジョンの利点は何ですか?
具体的なビジョンは、企業の方向性を明確にし、社員やステークホルダーに対して信頼感を与えます。また、企業全体が一体となって目標に向かって進むことができます。
次に何をすればいいのかが明確になり、新規事業の企画でもざっくりとした検討範囲からやるべき範囲が絞り込めます。

3. 定量的な目標とは何ですか?
定量的な目標とは、具体的な数値で示された目標のことであり、企業の目標達成に向けた具体的な行動計画を立てやすくします。


3年後に400店舗を出店する
3年後に3000のチームに貢献する

4. ビジョンとミッションの違いは何ですか?
ビジョンは企業の短期的な到達目標を示すものであり、ミッションはそのビジョンを実現するための具体的なサービスや、商品、製品です。決して髪からの啓示やかっこいい宣言ではありません。

ミッションについてはこちらを参照ください

5. 北極星とは何ですか?
企業における北極星とは、企業が長期的に目指すべき最終的な目標を示すものであり、その目標を達成するための道筋を示す企業「ならでは」と「働きがい」がセットになったものです。社会的存在意義を示すパーパスとも異なるものです。

※北極星コンサルティング®は、アクセラス株式会社の登録商標です。

※三井物産様、三菱商事様、双日様、北極星コンサルティングのご用命をお待ちしております。


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