見出し画像

ピーピー豆の悪夢

ちいさな頃からずっと、「ピーピー豆」(カラスノエンドウ)で笛を作るのが好きだ。

いい具合にふくらんだ豆を見つけると、いまだについ作ってしてしまう。小学生の頃などは、よく友達と競い合いながら作ったものだ。五つくらい口にくわえて一気に吹くと、ひとりでも大演奏会みたいな気分なのである。

そんな無邪気な日々を送っていたとき、僕は素晴らしいアイデアを思いついた。

「ピーピー豆をいっぱい採って集めとけば、いつでも好きなときにつくれるやんけ!」

思い立った僕は大きなゴミ袋を手に、形のいいピーピー豆を手当たり次第に採りまくった。

「よっしゃ! これでいつでもつくり放題や!」

僕はピーピー豆の精鋭たちでいっぱいになったビニール袋を、大事に押し入れの中にしまっておいた。

そして翌日。 

「よし、さっそく作るぜ!」

喜び勇んで押し入れを開けると、信じられない光景が目に飛び込んできた。なんとあの緑色に輝いていたピーピー豆たちが、みんな真っ黒に枯れてしまっていたのである。

彼らの変わり果てた姿を前に、僕はただうなだれるしかなかった。

その日から僕は会う人会う人に、

「人間は自然から必要以上の収奪を行ってはならない」

と説き続けたことは言うまでもない。


いつも応援ありがとうございます。いただいたサポートは、書籍の購入費に充てさせていただきます!!