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マーケター森岡毅に学ぶ

ユニバーサルスタジオジャパン編

始まり

USJは元々ハリウッド映画だけのテーマパークだったが、売り上げが低迷していた。
当時P&Gの社員で抜群の実績を収めていた森岡に目をつけた当時のUSJのCEOグレンガンペル氏によりヘッドハントされ、2010年6月、P&Gを退社しUSJに入社する。
まず、リサーチを計ったところ、エンターテイメント全体の中、「映画を観る」は10%しかなかった。
割合でみると単独1位ながら、ゲームや漫画、ネットなど複数のカテゴリーへと分散していた。

そして、関西圏の人口を1とすると関東圏の人口の割合は3、関西圏だけで10%の映画だけのテーマパーク運営には無理があった。

森岡はマーケターの考え方として「情熱がある人ほど冷たい鋭利な客観性が必要」だと思っている。
数学だけは得意だった森岡は「数学というのは世の中の構造を解き明かす冷徹なメスである」と言っている。
数学の勉強はなぜ必要か、教えてくれる大人がいなかったが、
「問題に辿り着くために論理的に考える練習」であり、問題に辿り着く「問題解決能力」なのである。

数学には「定数」というどうにもできない部分と「変数」という自分でどうにか変えれる部分がある。
要領が悪い人はこの「定数」を一生懸命変えようとして無駄な努力をしている事が多い。
どこに時間と労力を集中すべきかが問題である。

経営回復のための大戦略『三段ロケット構想』

第一段ロケット『USJの弱点であったファミリー集客を強みに変える』ものとして新エリア「ユニバーサル・ワンダーランド」を2012年にオープンし、そこから稼いだ資金で第二段ロケット『集客の関西依存体質からの脱却』を目指して450億円を投下してウィザーディング・ワールド・オブ・ハリーポッターを2014年にオープンし、そこから稼いだ資金で第三段ロケット『効率的にテーマパークを経営するノウハウで新パークを日本全国やアジアへ多拠点展開する』ことで、USJをエンターテイメント分野におけるアジアのリーディングカンパニーにするというもの。

森岡の入社当時に730万人台まで落ち込んでいたUSJの年間集客は、森岡の着任年である2010年から上昇に転じ、2012年にオープンした第一ロケットのユニバーサル・ワンダーランドの集客効果を柱に、2013年には年間集客が1050万人を記録。
 第二ロケットのハリーポッターの新エリアをオープンした2014年度は、悲願であった開業年度に記録した1100万人の年間集客記録をついに更新し1270万人もの集客を達成した。
しかも大型アトラクションをオープンした翌年は反動で集客が下がるテーマパークの常識を覆し、ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリーポッター導入翌年の2015年度の年間集客は、記録をさらに大幅に更新し1390万人を記録し東京ディズニーシーを超え、世界第4位になった。
2016年度も引き続いて集客は昨年を上回り、ついには2010年の着任以来、毎年百万人単位で集客を伸ばし続け、730万人台のUSJを倍の1460万人にまで伸ばした。

特筆すべきはこの間、森岡がUSJのチケット料金を大幅に値上げしながら集客数を倍増させたことである。就任当時から入場料金は5,800円から7,600円へ、年間パスも10,500円から22,800円へ大幅に値上げされている。

USJのブランド戦略を大改革

こうして森岡はUSJのブランド戦略を『ハリウッド映画にこだわったテーマパーク』から、『世界最高のエンターテイメントを集めたテーマパーク』へと大改革した。

森岡は、2010年6月入社前後の時期にUSJの置かれた市場構造を徹底的に分析し、長年に渡る集客の低迷の原因を500キロ離れ交通費という3万円の川が流れている東京ディズニーリゾートとは別マーケットであり激しい競合状態にないのに差別化するために「映画」だけにこだわっていたこと、「映画だけ」にこだわりエンターテイメント需要の1割しかカバーしていないこと、と結論付けたのであった。

入社直後から社内外の強い反対を押し切り、人気漫画ワンピースのショーを集客の中心にしたり、人気ゲームであるモンスターハンターの大規模イベントを実施する等、改革を断行した。
この大転換によって森岡入社直後からUSJの集客は劇的な上昇に転じる。2012年度には、映画とは関係のない人気キャラクターを集めたファミリーエリア「ユニバーサル・ワンダーランド」を建設し、USJを本格的な成長軌道に乗せる。
2014年度には、日本発の人気コンテンツ、ヱヴァンゲリヲンを一同に集めた大イベント「ユニバーサル・クールジャパン」を展開し、現在ではテーマパーク永遠の閑散期と呼ばれた冬季を絶大な集客シーズンに転換させた。

他に森岡が発案した『ハリウッドドリーム・ザ・ライド~バックドロップ~』は2013年3月のオープン以来、アトラクション待ち時間の日本記録を大幅に更新し『9時間40分待ち』を記録する大ヒットとなった。

「刀」設立

2017年1月USJを退任したのち、2017年10月18日、株式会社刀を設立。
マーケティング力の注入による企業成長や事業創造に事業として取り組み、「マーケティングとエンターテイメントで日本を元気に」を掲げる。

「刀」の立ち上げには、市場構造の解析および需要予測モデル開発・運用のプロフェッショナルでもあり、森岡の長年にわたる盟友でもある今西聖貴、ファイナンスのプロフェッショナルである立見信之が創業メンバーとして参画しており、また様々な分野の突出した能力を持つプロフェッショナルが多数在籍している。

「刀」では、マーケティングノウハウを移植する世界初のマーケティングノウハウのライセンシングに挑戦、企業をマーケティングができる会社に変えることを目指している。


では続きはまた

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