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いいクラウドファンディングのつくりかた

▼この記事は以下のような方におすすめです。
・クラウドファンディングについて知りたい方
・クラウドファンディングをやりたい方
・個人またはスモールチームの方

はじめに

2021年から大学の映画制作がきっかけでクラウドファンディングを経験しました。2022年に行った映画「カフネ」プロジェクトでは160名以上の方にご支援いただき目標金額を達成しました。そして、その事がきっかけで知人からクラウドファンディングについて聞かれる事が増えましたが、奥が深いクラウドファンディングを短い時間で上手く説明することが難しいと感じたので、このように文章にまとめることにしました。クラウドファンディングについてある程度知っているという方は最初の方は飛ばし読みするのがおすすめですし、辞書のように箇所箇所確認しながら読んでいただくのがおすすめです。

01. クラウドファンディングとは

クラウドファンディングとは、群衆(クラウド)と資金調達(ファンディング)を組み合わせた造語で、インターネットを介して自分のやりたいことや目標を発信することで、その想いに共感したり、応援したいと思った不特定多数の人々から少額ずつ資金を募る仕組みのことをいいます。

また、クラウドファンディングでは「資金調達を始める」ことを「プロジェクトを行う」と表現し、プロジェクトを行っている人のことを「起案者」、プロジェクトにお金を支払い支援する人のことを「支援者」と呼ぶことが一般的です。

クラウドファンディングの歴史

クラウドファンディングの成り立ちについて、クラウドファンディングサイトのREADYFORではこう紹介されています。

クラウドファンディングという言葉自体は比較的新しいですが、人々から資金を募り、何かを実現させるという手法自体は古くから存在していました。寺院や仏像などを造営・修復するため、庶民から寄付を求める「勧進」などがその例です。インターネットの普及に伴い、2000年代に米国で先駆的なウェブサイトが続々と開設され市場が拡大してきました。代表的なサービスにIndiegogoやKickstarter等があり、特にアメリカやイギリスではクラウドファンディングは資金集めの方法として一般的なものになりつつあります。日本では、2011年3月にREADYFORが日本で初めてのクラウドファンディングサイトとしてサービスを開始し、現在まで複数のサービスが開設され、クラウドファンディングの認知も徐々に広まりつつあります。

READYFORより

街頭募金やチャリティー番組など資金を募る文化は昔からありましたが、クラウドファンディングの登場によってどんな立場の方でもインターネット上で資金を募ることができるようになりました。

クラウドファンディングの種類

クラウドファンディングには「購入型」「寄付型」「金融型」と大きく分けて3つの種類があります。

▼購入型
購入型クラウドファンディングとは、プロジェクトに対して支援者がお金を支援し、起案者はリターンとしてモノやサービスを支援者におくる方法のクラウドファンディングです。

「映画を作りたい」「お店を開きたい」「本を作りたい」といったプロジェクトが購入型で行われる傾向にあります。

また、商品を受注販売のプロジェクトなども購入型クラウドファンディングです。

▼支援型
支援型クラウドファンディングとは、街頭募金などリアルな寄付と同様に支援に対してのリターンが無い方式のクラウドファンディングです。リターンはありませんが、プロジェクトによってはお礼として手紙や活動報告書などが支援者に送られる場合があります。

社会課題を解決するための取り組みなど、社会貢献度が高いプロジェクトが支援型で行われる傾向にあります。

▼金融型
金融型クラウドファンディングとは、「融資型」「株式投資型」「ファンド型」方式の総称でクラウドファンディングのしくみで「融資」や「投資」を募る方式のクラウドファンディングです。

購入型・支援型とは異なり、事業者向けの方式です。

※この記事は「購入型」についての情報を中心に紹介しているため、「金融型」の参考にはなりにくい可能性があります。

02. クラウドファンディングのしくみ

【01. クラウドファンディングとは】に書かれているとおり、クラウドファンディングは、起案者が自分のやりたいことや目標を発信し、応援したいと思った支援者が支援することで成り立っています。

支援が生まれるしくみ

支援者は欲しいリターンを選んでお金を支払うというのが特徴ですが、支援をするということは「お金を支払い商品を受け取る」という通常の購買行動とはことなり、支援者が「この人を応援したい」や「このプロジェクトに関わりたい」という「想い」をお金を支払い支援をすることで起案者に伝えるというのがクラウドファンディングです。

支援者と起案者との関係性は、お金を支払ってリターンを受け取ることで終了する関係性ではなく、起案者がプロジェクトに取り組み、支援者はそのプロジェクトをそばで見守る同じチームの一員のような協同関係だというイメージです。

このことをCAMPFIRE創業者の家入一真さんはインタビュー「支援をするということを通じてそのプロジェクトに参加している」と表現されていました。

03. いいクラウドファンディングのつくりかた

この章では、僕が実際に行った映画「カフネ」のプロジェクトを例にクラウドファンディングのつくりかたを紹介します。このプロジェクトが完璧だから例にするのではなく、良い部分・悪い部分、参考にできる部分があるため例にしています。

https://camp-fire.jp/projects/view/589588

いいクラウドファンディングとは

クラウドファンディングをやる上で必要なことは「誠実さ」と「根性」と「理由」です。そして、その3つの要素を兼ね備えたプロジェクトがいいクラウドファンディングの条件だと言えると思います。

「誠実さ」はプロジェクトに対し直向きに取り組む姿勢、「根性」はどんな状況にあってもやり続ける姿勢、「理由」は自分あるいは自分たちがプロジェクトを行なっている理由を明確に持っているかどうかです。

その3つの中でも、「誠実さ」と「理由」はクラウドファンディングのページ上にあらわれると考えています。

挑戦する方式と場所

▼方式
クラウドファンディングには、「All or Nothing」と「All In」という2つの実施方式があります。

「All or Nothing」は募集期間中に目標の金額を超える支援を募ることができた場合にのみ、起案者が支援金を受け取ることが出来る方式です。

「All In」は支援された金額が目標金額を超えていなくても起案者が支援金を受け取ることが出来る方式です。

「All In」の方が安定しているようにも思えますが、「All or Nothing」はよいプロジェクトの場合「盛り上がりやすい」という特徴があります。「All or Nothing」の場合、目標金額が達成できなければ今までの積み重ねがゼロになってしまうため、プロジェクトに支援した支援者の人たちが再度支援を行いプロジェクトが成功するということがあるからです。

実施するプロジェクトにあった方式を考えて選ぶことが必要です。

映画「カフネ」プロジェクトでは、多くの関係者の知人がクラウドファンディングに馴染みがなかったことや、達成しなかった場合のリスクを鑑みて「All In」での実施を選択しました。

▼場所(プラットフォーム)
クラウドファンディングプラットフォームは多く存在します。例えば、CAMPFIREはあらゆるジャンルのプロジェクトを取り扱っていて、READYFORやGoodMorningは社会貢献性の高いプロジェクトに特化しているのが特徴です。

手数料の割合、サポート体制、実施方式などを比較し、自分にあったプラットフォームで挑戦することが重要です。SNS公式アカウントを見て、プラットフォームを運営している人たちの想いを知ってみることも自分にあった場所を見つけることの役に立つのではないかと思います。

映画「カフネ」プロジェクトでは、プラットフォームの中での知名度や、アプリの有無、そしてサービスの豊富さからスケールのしやすさなどを基準に考えCAMPFIREでの実施を選択しました。

文章(本文)

クラウドファンディングページに訪れた人は冒頭の約500字を読んでその先も読み進めるかどうかを決めると言われています。

読んでもらえる文章を書くために、多くのプラットフォームで以下の6つのポイントを文章を記載することが推奨されています。

▼はじめに
起案者の自己紹介や、プロジェクトが始まったきっかけを書く場合が多い部分です。ページに訪れた人が最初に読む箇所なので、出来るだけ完結に500字以内におさめることが良いとされています。

▼どういうプロジェクトなのか
【はじめに】の部分できっかけを書くとありましたが、ここにきっかけを書くこともあります。プロジェクトについての詳しい説明ではなく、プロジェクトをやりたい理由を読む時に必要最低限のプロジェクトの情報について短く書きます。

▼プロジェクトをやりたい理由
プロジェクトをやりたい理由はクラウドファンディングページの中でもっとも注目されるポイントです。支援者は「何をやっているのか」ではなく「なぜやっているのか」の「なぜ」の部分に心を動かされ支援をするため、プロジェクトに懸ける想いやプロジェクトを始めた理由、そしてこれからもやりたい理由について正直な言葉で書きます。

▼プロジェクトについての説明
【どういうプロジェクトなのか】で書ききれていない詳細について書きます。映画を作るプロジェクトの場合はあらすじ、お店を作るプロジェクトの場合は販売する商品、進学するプロジェクトの場合は進学する学校について等を記載するのが良いと思います。

▼資金の使い道
この部分では資金が集まった後、具体的に何に何円使うのかを記載します。見積もりが確定していない場合でも可能な限り何万何千円単位で記載するのがおすすめです。

▼最後に
文章を最後まで読んでくれた人へ感謝の言葉と最後に一番伝えたいメッセージを書きます。一番伝えたいメッセージとは「このプロジェクトで何がしたいか」です。

上記6つのポイントを考慮して、映画「カフネ」プロジェクトでは、以下のトピックに分けて文章にまとめました。

今回は上記の中でも特に重要度が高いと考えられる以下の赤線のトピックについて実際にどんなことを考えながら書いていたのかをまとめました。

▽はじめに
先述の通り【はじめに】では起案者の自己紹介や、プロジェクトが始まった経緯などを書きます。クラウドファンディングでは、一人称を「私たち」と書く場合と「私」と書く場合がありますが、人数が多いチームでは文章を読んでいると「結局誰が書いているのかわからない」となり距離が遠くなってしまうことがあると考えたため、映画「カフネ」ではチームを代表してプロデューサーが一人称「私」で文章を書くことにしました。

ここで気をつけたことは、出来るだけ短く完結に書くことです。そのプロジェクトのページを開いている時点でプロジェクトに対して好意的な人たちが多いため、一番はじめの文章でいきなり小難しい話をしたり長すぎる文章を書いて、好意度合いを下げてしまわないように読みやすく、すぐに読み終える分量で書くことを意識しています。

また、「何を書いているか」よりも「誰が書いているか」の方が先に知りたい情報の度合いが高く、最初に書いていないと文章を読んでいても「結局誰が書いてるのか」が気になって集中できないこともあるため、自己紹介や自分の活動について端的に記載するのが良いと思われます。

また、三重県熊野市で撮影をする資金を募るプロジェクトのため、思い出してもらいやすいように「この街を舞台に、映画を撮りたい」というキーワードが印象に残るように強調して書いています。

▽映画「カフネ」について

この後に書いてある「理由」を読んでもらうことが重要だと考えていたので、「映画「カフネ」について」は出来るだけ短い文章と1分程度の動画で構成しました。

僕が映画のプロジェクトに支援する際に知りたい情報を順番に並べて考えた時に「あらすじ」の優先度はそこまで高くないと感じることが多く、それよりも起案者の人たちがどんな想いを持ってプロジェクトに向き合っているのかが知りたいと思うので、ここでは「あらすじ」を載せず関わっているメンバーの想いを載せるようにしています。

また、動画は家事をしながら観たとしても音だけである程度の内容が理解できるようにインタビューベースで制作しています。

▽この映画を作りたい理由
先ほども書きましたが「プロジェクトをやりたい理由」はクラウドファンディングにおいて最も重要なポイントだと思います。

例えば、友人にお金を貸してほしいと言われた時「何に使うの?」と質問をし、何に使うのか聞いた上でどうしてやりたいのか理由を聞くはずです。クラウドファンディングはお金の貸し借りではなく支援ですが、重要な信用材料・安心材料である「理由」は貸し借り以上にとても重要です。

そして、クラウドファンディングのこの文章の中で大切なのは「なぜお金が欲しいのか」ではなく「なぜこのプロジェクトをやりたいのか」をきちんと書くということです。起案者としてクラウドファンディングをやっている時点で「お金が必要」という意思表示は出来ているため、本文全体の話の最終地点は「お金が欲しい」ではなく「お金を使ってこんなことがやりたい」になることが好ましいと思います。

【映画「カフネ」について】では関わっているメンバーの「想い」を言葉と映像を使って書いていますが、このトピックではより明確な理由を書く必要があると考え、チームを代表してプロデューサーのこの映画を作りたい理由を書くことにしました。

個人的な内容の話をどこまでわかりやすく、良い表現で書けるかに注意しながら進めていきました。

細かいことですが、文章の始まりからここまで一貫してプロデューサーの言葉で書いていましたが、この「理由」の部分の途中から「僕たち」とチームが主語に変えています。この映画はチームで取り組む作品なので、その意思表示をする必要があると考えたからです。

▼映画「カフネ」プロジェクトの改善ポイント
今回紹介しているのは3つのトピックだけですがページをみると他にも多くのトピックがあり、文字数が多くて読み終えるまでに時間がかかるという部分は改善したいと思います。言いたいことを全て言おうとするとかえって聞いてもらえないこともあるため、本当に言うべきポイントに絞った方が良いと思いました。

リターン

このトピックではリターンと価格設定についてのお話をします。

▼価格設定とコストのバランス(商品販売型は除く)
クラウドファンディングは通常の寄付とは異なり支援する金額を起案者側が設定します。具体的には、1,000円、3,000円、5,000円、8,000円、10,000円、15,000円、20,000円、30,000円、50,000円、100,000円という価格設定が多いです。

価格の選択肢を低い金額から高い金額まで用意するのは全ての人のニーズに合わせるためという理由があります。例えば、1,000円だけ支援したい人がいても選択肢が10,000円しか無いとなると貴重な支援者を失ってしまうことになり、10,000円支援したい人に対して1,000円の選択肢しかない時も同様に支援者を失ってしまうことにつながります。(正確には1,000円に9,000円を上乗せして支援すれば10,000円支援出来ますが、自分が求めているものとあまりにも違う選択肢を提示されると人は配慮が足りないと感じてしまうからです。)

そして、支援金額とコストの関係もとても重要です。リターンを決める時、1,000円の支援に対して1,000円分返さないといけないと勘違いしている方が時々いますが、実際に支援金額=リターンコストにするといくら集まっても資金は全てリターン制作費に変わり、起案者はただのリターン販売屋さんと化してしまいます。

支援者目線で言い換えると、「映画を作りたい」というプロジェクトを支援したいと思って2,000円支払った時、2,000円分のオリジナルTシャツが帰ってくると2,000円払って要らないTシャツを購入しただけでプロジェクトは何も進まない状態になってしまうということです。

「ただ支援」や「会ったときに感謝の言葉を伝えます」などのリターンが成り立っているのもこうした背景があるからだと考えられます。

▼リターンの内容
リターンの内容は様々ありますが僕は3つのカテゴリに分けて捉えるようにしています。

▽データ系(1万円以下)
データ系リターンにはお礼のメールや活動報告書(PDF)、映像のデータなどがあり、オンライン上で送料をかけずに送付することができるものをデータ系と呼んでいます。

そのため、1000円など比較的低い金額の時に送ることが多いです。

▽モノ系(5万円以下)
モノ系リターンには感謝の手紙や写真集、映像のDVDなどプロジェクトに合わせたバラエティゆたかな品々があります。

データ系とは違い送料がかかるため、比較的高い金額の時に送ることが多いです。

▽リアル系(5万円以上)
リアル系リターンには起案者との食事会に参加する権利や上映会に参加できる権利などリアルで人と人が交流できるものがあります。

このリターンはプロジェクトにかかる費用とは別に会場代や準備費用がかかるため高額になることが多くあります。

これらを考慮し適切な価格設定・リターン設定を組むことが非常に重要です。

告知やお願い

文章やリターンが完璧に出来ても、あともう一つ重要な工程があります。

クラウドファンディングはネットで発信すると無条件に支援が集まる魔法のツールでは無いため、多くの人に支援をお願いする必要があります。

ここで大切なのが「3分の1の法則」です。成功するプロジェクトの支援推移を分析すると3つに分けることが出来ます。

3分の1は起案者の親しい友人や知人、そして次の3分の1は親しい知人・友人の知人や友人、また次の3分の1はそれ以外の人たちが支援するという法則で、支援が集まる順番も親しい順から始まります。

ということは、プロジェクトを開始するとき最初に告知やお願いをするべき相手は親しい友人や知人、家族です。この工程をサボるプロジェクトはうまくいかないことが多いです。

04. クラウドファンディングを知ることができるサイト

▼クラファンが何か知りたい

▽READYFOR.jp

▽中田敦彦のYouTube大学

▽『MOTION GALLERY』 にできること


▼クラファンのノウハウを詳しく知りたい

▽CAMPFIREアカデミー

▽Readyfor サプリ

▼プラットフォーム運営の人たちの想いを知りたい

▽CAMPFIRE

▽READYFOR

▼過去のデータを見たい

▽CAMPFIRE統計データ

最後に

上記の点に加えて大切なことはクラウドファンディング期間中も終了後も支援者の方を何よりも大切に想うというということです。リターンは丁寧に作り、活動報告も丁寧に考える、心の中で常に感謝をするなど、感謝を伝える行動はいっときではなくずっとやり続けることが大切だと思います。

また、この記事では短くわかりやすい文章を書こうという内容を書きましたが、その説明が長すぎるという皮肉な感じになってしまいました。その点は参考にしないでください。

そして、クラファンについて知りたいことがあったり、誰かに話を聞いてほしいと思った時は身近な信頼できる人に相談してみてください。

この記事がきっかけで小さな挑戦の機会損失がなくなることを祈っています。

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