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ないものはない。でも、本当に「何もない」?

先週の「ぺこぱポジティブNEWS」、ポジティブな取り組みを行っている「ローカル鉄道」がテーマだったのですが、
銚子鉄道とか大井川鐵道みたいなメジャーどころ以外にも、様々なおもしろい取り組みを行っているところがたくさんあるんですね…!

いくつか紹介されていた中で、個人的に目を引かれたのが、
岩手・三陸鉄道の「ナイトジャングルトレイン」と
静岡・岳南鉄道の「夜景電車」でした。

前者は、増え続ける動物との衝突被害(なんと2日に1回ペースで動物との衝突事故があるそう…)を逆手にとって、
夜の沿線に出没するシカなどの動物を観察しよう!という、
いわば「電車版ナイトサファリ」とも言えるもの、
後者は「紙の街」富士市の工場地帯を走る路線の特性を生かして、
根強いファンの多い「工場の夜景」を、電車に乗りながら至近距離で堪能してもらおう、という取り組み。

この2つの取組みに共通するのが、「電車の明かりを消す」こと。
これ、言い方を変えて、ものすごく意地悪な見方をすると、
「ただ電車の明かりを消しただけ」なんですよね。
(いや、もちろん正確にはいろいろ準備は必要なんだとは思いますが…動物を解説する人とか。)

車両に何か細工をする必要もなければ、大枚はたいてゲストを呼んできたりする必要もない。
電車の明かりを消して、あとはいつもより少しゆっくり電車を走らせれば、
そこにいつもいる動物、いつもある風景が、たちまち特別なもの、
「お金を払ってでも体験したいコンテンツ」に早変わりする。
目の付けどころ、コンテンツへの昇華のさせ方が、とっても美しいな〜と、すっかり感心してしまいました。


正直、田舎に行けば、そこらじゅうをシカやイノシシ、タヌキといった野生動物が闊歩している風景なんて、もはやありふれすぎていて別に何の感情も湧かないし、
工場の夜景だって、そこで暮らしている人にとっては、珍しくもなんともないから、ただ「当たり前」のもの、それ以上でもそれ以下でもないはず。

でも、改めて客観的に見つめてみると、
それを「珍しい」「おもしろい」と感じてくれる人は確かにいて、
その体験をするために、わざわざお金を払いたい、と思ってくれる人もいるかもしれない。
あとは、その体験がより印象的になるように、ちょっと工夫を加えれてあげればいい。

ナイトジャングルトレインも夜景列車も、
変に肩肘張ってないのがいいですよね。
ナイトジャングルトレインなら、ただただ「動物との遭遇」を楽しめるし、
夜景列車は、きっと夜景の撮影に没頭できるから、夜景ファンの人にとっては至極の体験なはず。


三鉄沿線は確かに風光明媚な場所だし、岳南鉄道もあらゆる場所から富士山が見える良いロケーションではありますが、
正直、日本の田舎に行くと、少々「景色が良い」ぐらいの場所って、それなりにありふれてるんですよね。
そうなると、もはや「何もない」と言ってしまうのは簡単で、いくらでも思考停止できてしまう。
でも、シカしかり、工場地帯しかり、それこそ「ありふれている」と思ってしまうようなものにこそ、スペシャルな体験・非日常を生み出す源泉が隠れている。
そう考えると、自分たちの身の回りにも、そんな「スペシャル」の種が隠れていないだろうか?と、今一度探してみたくなります。

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