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永盛愛美
2020年8月26日 21:21
就職して初めてのゴールデンウィークが、思わぬアクシデントにより呆気なく味気なく終わってしまった。大樹はカレンダーを眺めながら、軽いため息を吐いた。「ゴールデンウィークってこんなに短かったっけ?」〔カフェバー 岬〕に連休前日から、30日の夕方まで滞在し、オーナーの基や店長の葵に世話になっていたので当然である。但し、本人は約一日半の間、基の部屋で眠り込んでしまったので記憶が抜けている。
2020年8月24日 21:27
ゴールデンウィークに入って2日目の昼。ブランチを基に用意して貰い、さあ食べよう、という時、ピンポーン……とインターホンが鳴った。その時、基が低く「チッ」と舌打ちをした。大樹は(どうしたのかな?)と、今までにこやかに話していた基が一瞬で表情を崩した事に驚いていた。「あっら~眠りの国の王子様はお目覚めになったのねえ?良かったわ~!」(店長さんだ!)声を聞いて、大樹は倒れる寸前の記憶
2020年8月23日 07:33
……今、何時だろう。大樹はベッドの中で、寝返りを打ちながらぼんやりと思った。なんだか身体がスッキリしている様な気がする。ぐっすり眠れたのかな……もう起きる時間かな……?ベッドのヘッド部分に置いてある、小さな目覚まし時計を取ろうと、目は瞑ったまま、右手を伸ばした。あれ?……無い?落っことしちゃったかな。もう一度手を伸ばし、何となく違和感を覚える。ヘッド部分が変だ。っていうか、高
2020年8月21日 23:39
「重要書類良し、名刺良し、身だしなみ……多分、良し。」小西大樹(こにし ひろき)は、初めてのおつかいの様に緊張していた。(この重要書類をお得意先の〔カフェバー 岬〕のオーナー様にお渡しすれば、明日からゴールデンウィークだ!)深呼吸して、ドアを開ける……が、鍵が掛かっていて開かない。「あれ?今日は営業されているはず……それとも、入口が違うのかな。」営業課長の本橋和弥(もとはし か
2020年8月20日 15:23
いつもの様に手早く食事も後片付けも済ませると、基は翌日の食材の確認に入り、葵はメモ帳を前に腕組みをして再び悩み始めた。「そんなに考え過ぎなくてもいいだろう。呼ぶのはお前の兄弟とかでいいんじゃないか。」厨房から基が手元の食材をチェックし、控えを取りながら葵に言った。葵の父が社長をしている杉崎商事(株)北関東支社。そこに葵の従兄弟がそうとは知らずに入社してきた。本人は全く知らない。伯父が社
2020年8月16日 09:05
「基(もとい)、和(かず)兄から連絡が来たわ。調査結果が出たそうよ。」葵(あおい)がエプロンを取りながら珍しく深刻な面持ちで調理場へやって来た。「和兄(かずにい)って、たまにウチの店に来てくれるお前の従兄弟の本橋和弥さんか?」「そうよ。支社の営業課長なのよ。連絡は父から来ると思ってたら違ったわ。」基は洗い終わった食器類を乾燥器に入れてから、翌日の準備作業に入ろうとして手を止めた。
2020年8月10日 14:42
俺は、杉崎基(すぎさき もとい)。母方の従兄弟、杉崎葵(すぎさき あおい)と共に、カフェバー岬をやっている。断っておくが、アイツがオカマだからと言って、オカマバーでもゲイバーでもない。至って普通のカフェバーだ。そのつもりである。ただ、俺たちがゲイだと言うだけだ。葵はわかりやすいからいいとして、俺は身内以外誰にも話していないから、ゲイとは分からないと思う。まあ、分かる奴には分かるだろう。俺も、
2020年8月10日 07:06
アタシは杉崎葵(すぎさき あおい)。身体は男の子だけど、心は乙女よ。いわゆるオカマってワケ。母方の従兄弟の杉崎基(すぎさき もとい)と、昼はカフェ、夜はバーになるお店〔カフェバー 岬〕を経営しているの。基がオーナーでアタシが店長だけど、共同経営者って事ね。実はアタシ達、ゲイなの。基は男の子が好き、アタシも男の子が好き。偶然その事実が発覚した時は……ビックリしたと同時に「ラッキー!」って思っ
2020年8月9日 19:42
俺は、小西大樹(こにしひろき)。この春、大学を無事卒業し、希望通り自宅から30分で通勤可能な職場に入社出来たと喜んでいたのだけど……。就職先は、杉崎商事(株)。自宅近く(だと思う)の本社に採用されたはずなのに、本社、支社合同の新人研修が終わった直後、支社転勤の辞令を受けてしまった。杉崎商事(株)北関東支社。会社から独身寮用のアパートまではそんなに遠くない。ないけど……俺は、大学までずっと家