ここまでの「わたしの文学フリマ東京35後編(明日、11月20日にお会いしましょう)
どんな本にするか決めた前編はこちら
食べ物日記を書く難しさに直面
好きなものってことで食事日記を書こう!と決めたものの、早速難しさに直面した。普段から何度も通っている飲食店にもかかわらず、いざ食事のディテールを文章にしようとすると、「あれ、この写真に写っているこの煮込みって醤油ベース…?赤味噌も入ってるっけ…?具はモツのほかに野菜も入ってたっけ???それともモツだけ???」と迷いが生じてしまうのだ。
食レポ日記にするつもりはないとはいえ、完全に間違っている内容は書けないなあという責任感がでてしまい、一つの章(=一食のエピソード)を書こうとするためにそのお店へ何度も足を運んで確認した。
筆は進まぬわりに体は肥えた。わはは。確認は口実だろ、とは言わないでください。
ただ、解像度をあげて食事をするということ自体はとても楽しかった。気を抜くと感想が全部「おいし〜〜〜〜」になってしまうところ、「これがあるから食感が面白いんだな」とか、「同じ商品を頼んでみたけれど、さっきのお店は○○な味付けで、こっちのお店はXXなんだな〜」と考えながら食べると、一緒に食べている人との会話も自然と弾んだ。
6・7月には構想があったのに、いわゆる”脱稿"までは10月中盤まで苦戦した。途中、「私が食事した日記なんて誰が読んでくれんねん……」と卑屈になったり、いやいや私が用意した場所なんだし私が好きに使えばいいじゃん、と自力で立ち直ることを繰り返した。
(ジャンルは違えど創作経験のある同僚が一人だけいて、この度の活動とこの卑屈な気持ちを打ち明けてみたら「あ〜〜〜あるあるですね〜〜誰もが通る道」と秒で返されたので、みんなそうなんだなと思うことにした)
どんな形のどんな色のどんな紙の本にする?決めることの多さと自由さ
原稿が中盤にくる頃、原稿の合間の息抜きや言葉が思うように出てこない日に、本の体裁を考えることをはじめた。
本づくり、とにかく決めることが多すぎる。
本のサイズ、印刷所、紙の種類、フォント、行間、タイトルや装丁……何が決まっていてなにを決めなくてはならないかという段階からなので、自分の進捗が遅いのか早いのか何度も自信をなくした。
私は仕事柄(スマホアプリやWEBの開発ディレクター)、なにかの判断を下してチームメンバーに伝えて動いてもらう事が多い。
それらの判断は必ずなにかの客観的事実(マーケティング・効果検証の結果や、ユーザーからのご意見など)に基づいてそれぞれに重みを付けたうえで行われる。私はこっちのほうが好きだから〜〜〜という理由で物事を決めることは無いに等しい。
しかし本づくりには判断の寄る辺がない。
私の好きなように決めていい。ユーザーからのご意見なんて承ってない。
その自由さが私を悩ませた。と、同時に「自由に決める筋肉」が衰えていることを実感した。
幼い頃は「あれを食べたい」「このおもちゃがほしい」などと、好きと欲求が直結していたように思うが、小学生にもなれば「自慢がしたい」とか「流行っているから」と、欲しい=好きではなくなってくる。
大人になればなおさら、なにか大きめの物事を決めるのに自分一人で決まることは少なく、いろんな人の意見を求め、経験則や類似の前例に基づいた判断が多くなる。
本づくりに関して赤ちゃんな私は、「本をつくりたい!」以外の明確な要求がまだ言語化できていない自身と向き合って、まだ語りえぬ要求を引き出す作業が必要になった。これがとても骨のおれる作業だった。
物件や大型冷蔵庫など、大きな物事を決める作業は毎回ノイローゼみたいになるまで意気込みすぎてしまう。
スタババさんはじめ周りの知人が励ましてくださったおかげで正気を保てた。ありがとうございました。
原稿を書くがてら飲食店にいくと、たくさんのポップやメニュー、看板などたくさんのデザインに出会う。いままで何気なく見ていたそれらも、「誰かがこだわってこれをつくっているのだよな〜」と思い直し、作った人を褒め称えたい気持ちになった。
誰も知らねえ店に、客が来るわきゃないんだ。
「映像研に手を出すな!」の金森氏の至言。
SNS運用やグッズ展開を頑張る金森氏を見て、「宣伝ってそんなに必要なもん?」と仲間が発言する。
その後、「その昔、私は一軒の酒屋が消滅する現場を見た」と、"いい商品を揃えているのにも関わらず、立地が悪くなってしまって知名度があがらず、運用コストとの兼ね合いで閉店しなくてはならなくなった金森氏の親戚の店”のエピソードが入る。
そしてそのエピソードの最後に、上記の至言だ。
この発言のあと、「店や商品の充実だけを考えても意味がない。宣伝なくして商売は成り立たない」「いい店なら自然と客が来るなどという考えは甘い」と、心をグサリと刺してくる言葉が続く。
そう、一人ではじめたからには、一人で広報もやる必要がある。
「本を売ります!!!」とクソデカい声で宣伝するのは、好きなものを好きだと人に言うのがちょっと恥ずかしいと感じてしまう私にとって、勇気のいることだった。
でもなりふりかまってもいられない。せっかく出すなら、仮に一冊も売れずともやれることはやりたい。
ということで脱稿後、入稿作業をしつつ、本以外に置くものを考えるようになった。
いち早くお品書きをつくって宣伝したい。でもお品書きをつくるためには、並べるものを決めなくちゃ。本だけでいいのかな?
そう考えたときにまず浮かんだのは試し読み。試し読みを大量印刷して無料配布する。それならあまり制作コストはかからなそうだと思った。
でも……
私の文章の中身には、店の名前がそのままでている。試し読みで店の名前をみだりに拡散させたくないな、と思った。
読んだお店のひとが不愉快になるようなことは何一つ書いていないけれど、なにかの巡り合わせでお店の人が先に読んじゃったら妙な食レポ宣伝媒体ととられかねない。あくまで方針としては日記のようなものなので、抜粋された文章だけが紙として広まるのはちょっと避けたかった。
う〜〜ん……
と悩んで思いついたのがフリーペーパー。昔からフリーペーパーを集めるのが好きだったことを思い出した。収集していたフリーペーパーを引っ張り出して見ると、その中に、「A4を四つ折りにして、ひとつのテーマについて漫画と文章を織り交ぜたペーパー」を見つけた。
直感的にこれだと思った。開いて中を見る構造にすることで、表紙のようなものをつけられるし、裏面にあとがき欄・宣伝欄も設けられる。
折ってあるがために、読むにあたっては「紙をめくる」という行為が発生するので、ペラ1の紙を出すよりも満足感がありそう。
ということでさくっと2・3日でデザインまでつくりきれるボリュームのペーパーを作ることに決めた。
最初はこれも食べ物系のテーマにしようと思って草案をかいてみたけれど、いまいちピンとこない。ペーパーなので写真をいれようとすると、読む部分が少なくなってしまうし、文字ばかりだと本誌と代わり映えしないように思った。
より多くの人に目を止めてもらうには、ブースにあるテーマの種類を増やして間口を広くしたほうがよさそう。
私が下調べをいまからあまりせずに1日で書き終えられるほど熱量のあるトピックといえば……と本棚に目を向けると、本棚のてっぺんで寝ている飼い猫が目に入った。
そうだ彼だ。彼について語りつくそう。
彼のことなら1日でA4くらい余裕で埋められるし、写真もたくさん素材がある。そう思って、飼い猫についてのフリーペーパー作成に取り組んだ。
猫の一生はどうしても人間よりも短い。家猫だから、一生のうちに出会う人も少ない。彼のことを書いて記録に残すことは、彼の飼い主として意義のあることかもしれないなと書きはじめてから思えた。
フリーペーパーを作るために写真フォルダを漁っていると、素材が多すぎて悩ましかったので、かわいい写りのものをついでに来年のカレンダーにもしてみました。
ちなみに、先述の至言ののちにはこの一言も続く。
ぐうの音も出ない。
準備が終わった、あとは祭りまで待つ
・・・・・・・というわけで、上記至言を心に刻みつつ、フリーペーパーも本誌原稿も最後までなんとかやりとげた。
恥ずかしかったけれど夫にも読んでもらって、「その店を知らない人でも文章を読んで伝わる内容になっているか」など確認してもらった。
書影、商品、もろもろ出揃ったところでお品書きポスターもえっさほいさとつくり、名刺代わりにしおりもつくりました。かわいくできたよ。
それらを主にはTwitterで宣伝し、WEBカタログもまあまあ早い段階で整えた。
11月は宣伝投稿が多くなってしまって恐縮だったけれど、なるべく毎日なにかしら露出するように心がけてみた。
フォロワーを伸ばしたいわけではないので戦略的宣伝ではないけれど、「なんにもしてねえじゃん」って感じでもなくなったかな。と思いたい。
このへん、本づくりの赤ちゃんが具体的にどんな手段でどうやって本をつくったのか、本以外には何を準備したのか、情報収集として何を参照したのかは、備忘録として文学フリマのあとにまとめようと思います。次に活かせたらいいな。
(先に言うならみんな、映像研の漫画読むかアニメを見るかしたほうがいい。私はアニメがすき。これはアニメの9話にもあるエピソードだよ。ネトフリで見られるよ。オオルタイチ氏の音楽もいいよ。)
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ついに明日だよ〜〜〜〜!!文学フリマの宣伝させてください
▼当日のお品書き
▼試し読みはこちら
お店の名前が出ない範囲の試し読みです。文章の雰囲気を掴みたい方はどうぞ!
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いま、まれに見ぬ乾燥・マスク荒れに悩まされてまして、何を顔につけても顔が激痛で、顔面絶不調なんです。人前にでる自身がビジュアル面で全く無いけれど、そんなことはまっっっっっっっったく気にならないくらい楽しみなきもちでいっぱいです!
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