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食生活とコロナウィルス

新型コロナウィルスの流行で困ったことは、買い物に行くことができないことだ。「駅前にスーパーがある生活」という響きは、今や利便性の高さよりも三密の懸念を表していた。とはいえ、人間、食べなければならないし、Stay home中に食生活が乱れると、それこそ健康問題になりかねない。まるで災害後の暮らしのように、食料の確保は大きな問題だった。

ところが、こうした心配とは裏腹に、この問題はいとも簡単に解決した。実は、ここ最近の買い物ではスーパーに行くよりも、自宅近くの近郊野菜を扱う八百屋に行くことが多くなっていた。この店は季節の野菜しか取り扱わないものの、その品質と値段のおかげで我が家の家計消費の常連となっていた。

ものは試しと、いつもと同じように(そしてなるべく人に会わないように)その店に買い物に出かけたところ、店主はいつもの笑顔で迎えてくれが、店内は静かなものだった。

店に客がいないのであれば三密とは言えないだろう。

こうして、緊急事態宣言下でも、我が家はいつもと同じ生活を、一部、続けることができた。気の知れた店主のいる店で、他愛のない話をして、気に入ったものを買う。こうした日常を送ることができることが、どれだけ生活のストレスを軽減してくれていたか。地元の生活に彩りを添える小さな店の有り難みが身に染みた。

ところで、コロナ後は食生活の中身も変わった。人が多く集まる店で買っていた魚は以前のように買いに行きづらくなったので、近所に専門店がある肉か野菜で作った料理が増えた。

最近のお気に入りは、夏野菜のズッキーニ。以前、自宅近くの知る人ぞ知る焼き鳥の名店に行った際に、店主の「『なんだズッキーニか』と思うでしょ?」という口車に見事に乗せられて以来、この野菜はお気に入りの一つになっている。

みずみずしいズッキーニ

ズッキーニ2-7


単純にオリーブオイルで焼くだけで十分に美味しいが、最近はズッキーニを縦に真っ二つに切って焼くようにしている。弱火でじっくりと時間をかけて焼けば、あつあつの野菜のジュースが閉じ込められた、立派な主菜になる。ひょんなことで、パリのArpegeのオーナー・シェフであるAlain Passard氏のInstagramで、そんな焼き方をしている様子を見て、参考にしてみた。名店の味には及ばないだろうが、心は満足といったところ。

こんなことを書いていると、また八百屋に足が向いてしまいそうだが、これがStay home中なら本末転倒もいいところだ。

縦切りにして焼いてみるとジューシーな仕上がり

ズッキーニ2-8


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