「夏の雲」と歌の作り方
雲を見上げる気にもならないほどの暑い日が続いていますね。前回に続きまして1994年のアルバム『夢の名残り』の中の歌を歌ってみました。暑っ苦しい歌い方ですみません。なおさら温度が上がります。
久しぶりに歌いましたけど、こういうタイプの歌を今ではすっかり作らなくなりました。こういうタイプの歌というのは、こういう作り方をした歌ということなので、僕だけが勝手にこういうタイプの歌と思っているだけです(笑)
どういう作り方かというと、メロディを先に作って、そのメロディから思い浮かんだイメージを言葉にしてあてはめていくという作り方です。それって、もっともよくある(オーソドックスな)作り方じゃん!と言われそうです。おっしゃる通りです。
今ならせめて現実味のある歌詞をはめるところなんですけど、そこは若さゆえ、もっと歌の可能性を広げたかったのか、歌に自分を投影するのが恥ずかしかったのか、架空の世界を歌の中に作り上げたいと思ったのでした。共感とか感情とかは、どうでもいいと思っていました。
歌の作り方というのは、あたりまえですけど本当にいろいろあって、百人百様だし百曲百様で、これが正解というのはないんでしょう。いや、どれも正解と言ったほうがいいかな。一曲ごとに自分であれこれ考えながら、自分の声と歌唱力と折り合いをつけながら形にしていくしかないものなのでしょう。
それでも他の人がどうやって歌を作っているのか、特にそれが自分のあこがれの人のであれば、創作の方法は気になるものです。ギターを弾いて間もない頃にこんな雑誌を買いました。
アコースティック・ギターの教則本です。一曲目がさとう宗幸さんの「青葉城恋唄」で、最後に載っているTAB譜がジェイムス・テイラーさんの”Sweet Baby James”という感じで、邦楽と洋楽、バランス良くたくさんのTAB譜が載っていました。
その中に『シンガーソングライター17人に直撃質問「私はこうして曲を作る」』というコーナーもありました。
けっこう細かいことまで質問があります。
アリスの御三方、五輪真弓さん、世良公則さん、原田真二さん、尾崎亜美さん、井上陽水さん 、渡辺真知子さん、小室等さん、天野滋さん(N.S.P.)、大久保一久さん(風)、松山千春さん、財津和夫さん、松任谷由実さん、南こうせつさん、八神純子さんと、錚々たるラインナップです。みなさんそれぞれきちんと回答されていて、勉強になります。
中でも井上陽水さんのコメントは独特というか異色で、子ども心にもウワッと思いました。ウワッとというのは、引き込まれる感じというか、畏怖の念を抱く感じというか、中1ぐらいの僕にはよく理解できないことが書かれていて、だからこそ何度も読み返したからか、今でも記憶に残っています。
ほーー、そうなんだーーって感心しちゃいますよねえ?
当時、井上陽水さんの歌をまだ全部は知らなかったので「私の問題点」と「逃げろ」っていう曲を聴いてみたいな〜って思いました。今だったらネットで調べて、すぐに聴けたりもするし、そんな歌は存在しないということにも気付けるんですけど(笑)
特に印象に残っているのが次のQ&A。
ここで、これらの回答は実際とは違う、創作物(フィクション)であるということに気づくべきなんですけど、音楽初心者だった僕は気づくことができませんでした。SコードXコードというものが本当にあると思ってしまいました。今はまだ知らないけれど、いつか知ることになるんだろうなと。
回答10なんかも、今読むとちょっと笑っちゃいますけど、当時はうーん深い(よくわからない)とか思っていたんじゃないかなと思います。僕が子どもだったから真に受けてしまったというのもありますけれど、ユーモアや遊び心に満ちた井上陽水さんのキャラクターをテレビで知るのはもうちょっと後のことでしたから、これらの回答が諧謔であると理解するのは難しかったです。
20代の前半にほんの短い間でしたけど井上陽水さんの事務所にお世話になったことがあり、一度だけお会いしたことがあります。紹介されて挨拶し、やさしい言葉をかけていただいたのに、かしこまってしまって返す言葉が出てきませんでした。そのときにこの話ができたらよかったな。アンケートを書いたことを覚えてらっしゃらないかもしれないけれど、あれにはまんまと騙されました、と言えたならよかった。
長くなってしまいました。何の話でしたっけ?(笑)
そうそう、歌の作り方。歌の作られ方と言ったほうがいいのかな?このことについては追々書こうと思います。
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