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感染症や事故で、突然家族を失う人との接し方

私は、オリジナル会葬礼状の代筆ライターでもあります。
会葬礼状とは葬儀の際に渡される喪主からのお手紙で、故人のエピソードが加わったもの。ほとんどの場合、私のようなライターが逝去の直後に遺族に取材し話を聞いて文章化していると思います。(逝去直後は忙しいので代筆はやむを得ません。そのために、少しでもご遺族の意向に沿うよう、丁寧な聞き取りを行っています)

新型コロナで亡くなった方のご遺族と接するにあたり…

自死、お子さんの死や時には胎児の死、ニュースで見かけた死…。色々な死と向き合う家族とお話しするのは緊張の一瞬でもあります。
今日は、新型コロナウイルスで亡くなった方のご遺族の依頼を受けました。今朝テレビでコロナで亡くなった方の葬儀についての特集を見かけたので、いつも以上に緊張しましたが、私なりにどう接したらいいのかを考えて取材し、原稿を書き終えました。
死因は何であれ、家族にとっての大切なひとであり、思い出は美しい。お電話口の喪主様はとても冷静でした。
亡くなったのは高齢のお母様。幼い頃を一生懸命思い出し、苦労しながら愛情深く育ててくれたお母様とのエピソードを話してくれました。話し始めると止まらなくなり、本来使いたい取材時間を大幅超えてしまいました。

厳しい時代を必死に生き、天寿を全うしたお母さん

・病気による後遺症で障がいの残った自分をただ優しく育ててくれた。
・幼い頃は、リハビリも兼ねた病児療養施設で暮らしたが、9歳の頃いやだと言い出してからは自宅でまた一緒に暮らし始めた。
・特別学級を打診されたけど、普通級で学ばせたいと各所に交渉し、そのおかげで小中高と「勉強は頑張ろう」と思って取り組んだ。
・歩行が困難な我が子のために、配達用の自転車の荷台に乗せ、学校の送迎をしてくれた。商売をしていたため、忙しかったはずなのに。
・妹に、今思えば嫉妬心からの意地悪で髪の毛にガムを擦り付け、ガムがとれず、妹の髪を母が散切りにしたことがある。その私を一切怒らなかった。驚いたのは、妹が覚えてないこと。(妹が兄への怒りを感じないような接し方をしてくれたのではないか?)
・近隣住宅に石を投げてガラスを割ってしまったのだが、やはり怒らず。一人で謝罪に行ったのではないかと思う
・父が30年前に亡くなってからも、一人で力仕事を伴う商売を数年続けた

たくさんの、お母さんの生き生きしていた時代の話を思い出しながら語って下さいました。

大切な家族がなくなったという事実

「接し方が難しい」「こんな亡くなり方をするなんで…」
死因を聞くと、変な遠慮から「そっとしといてあげよう」という判断で距離を置くことがあるのではないかと思います。実際、中学生の息子を亡くした友人に一年経って連絡したら「ずっと待ってた」と泣き崩れられ、すごく悔やんだ、という話を聞いたことがあります。

もちろんそれを望む方もいるかもしれません。でも、その気持ちは、最初の反応でだいたい気づくでしょう。それから距離を置いても十分誠意は伝わるのではないでしょうか。想いを汲んで決める判断は、相手を想っているようで自分の気持ちなのではないかなと思います。
大切な家族がなくなったというのは紛れもない事実。高齢者であるならば、厳しい時代を立派に生き、病気によって天寿を全うしたのです。とても誇らしいことだと思います。

思い出話を語る時間を共に過ごし、しっかりと弔う


大切なひとの大切なひとがなくなったと耳にしたら、その死因が何であれ、そうしてあげたい、と私は思っています。

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