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初心者マークの我が子の車に乗せられて

夫の実家に家族でドライブに出かけた。
一年ぶりのドライブ。一年前と違うのは、その間に長男が運転できるようになったこと。
市内の運転はまだ怖い彼だが、今日は山道の運転に挑戦してもらった。

家族で何度も通ったこの道を、自分がハンドルを握ってみんなを乗せて走るのはどんな気分だったんだろうか。

余裕はなさそうな姿を後ろから眺める私とは裏腹に、隣に座る次男は、兄の運転が怖くないのか、次第に目を閉じ私の肩にもたれかかり、気づいたらその重たい頭は膝の上にあった。
この位置に座り、チャイルドシートに包まれる我が子を見守りながら移動していた日々を懐かしく思い出した。

海も望める我が家から、山あいの集落の夫の実家まで100kmの道のり。渋滞する沢山の車の群れの中にいたのが次第にみんな消え、マイロードになっていく。

途中に何百本もの桜を見かけ春を感じた割には、道端の日陰には雪が残る。
都会に比べ、車窓から見る景色は24年経ってもあまり変わらない。

車という小さい箱の中にいる人は、恐らく私が乗る前は夫一人だっただろう。一人増え二人増え…。車中に広がる泣き声がしりとりに変わり、くだらない冗談やケンカ、色んな会話が繰り広げられてきた。
流していた童謡は流行りの音楽に変わり、お菓子を沢山用意して退屈させないように気を配ったものだが、今はそれぞれが好みのペットボトルを持つ程度。
こんなに大きく変動した私たち家族が幾度も通ってきたこの道。
誰が運転してようが、中で何が起きていようがお構いなしに存在する自然の雄大さ。
強いていえば、敵はお天道様だけなんだろう。天変地異は、いつかこの景色を変えてしまうかもしれない。
それでも変わらないこの空は、もっとすごい。

変化の激しい時代かどうかなんて全く関係なさそうに、ただ四季と向き合いここにいる自然の在り方に改めて惚れ直した。


長男の運転の話はどこへ行った?

ハンドルに置く手はいわゆる10時10分で、制限速度50キロの道を48キロくらいで進む。
「状況判断に迫られる運転はできない」らしいので、他車との駆け引きのない道を好むそうだ。

「運転は慣れよ」

大学で訳の分からない勉強をし、体力だってピークは過ぎたとはいえまだまだ十分で、降下する親には到底叶わず、親を超えてしまった我が子。

数少ない「上を行けること」を見つけ、つい口にする親の言葉に微笑みながら頷く素直さに、これもいつか超えられるのだろうなと感じた。


♫最後まで読んで下さりありがとうございます♫

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