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舞台「大正浪漫探偵譚-エデンの歌姫-」 #3 大正時代背景


こんにちは。

作・演出の鈴木茉美です。


前回の、秘密結社エデンについては楽しんでいただけたでしょうか?


今回は、今作の大正時代における歴史的背景について解説できたらと思います。
目次はこんな感じです。


今作では、大正時代だからこその台詞や内容が出てきます。
それについてガッツリではありませんが、少しだけお話しできたらと思います。

意味を知ることにより、また歴史的背景を知ることにより、内容理解がさらに深まれば嬉しいです。

また、この時代の珈琲についても少し話せたらと思います。
そしてさらに発展していくつか珈琲のお店も紹介できたらと思います。


ではまずは、秘密結社エデンの中で出てきました、この言葉から。

西南戦争

沼井「西南戦争を最後に武士の心は行き場を無くし魂は彷徨い続けている。その
  魂は国民を守るためにあらねばならない。私には信念がある。他国に負けな
  い強さもある。組織が強固なものになれば、我々の思想はより多くの者に受
  け入れられる。それには皆の力が必要だ。互いに意見を持ち寄り、この日
  本を何者にも負けない強くて正しい国にするんだ」

舞台「大正浪漫探偵譚-エデンの歌姫- 脚本


秘密結社エデンがカフェーに集まっている中で言った、沼井の最後の台詞です。

西南戦争とは何のことなのでしょうか。
歴史に詳しい人ならご存知のことと思います。


ここでは言葉は聞いたことあるけどという方に少しかいつまんで説明できたらと思います。

西南戦争とは、最後の士族の反乱です。
明治に入り、政府が江戸時代までと違う新しい政治を目指しました。
天皇を中心とした政治です。
土地と戸籍を天皇に差し出す(版籍奉還)、藩の制度を廃止する(廃藩置県)、米ではなく土地に税金をかける(地租改正)そして、武士たちに頼ることをやめ、農民から兵を集め、武士から刀を取り上げる(廃刀令)。

どれも武士たちにとっては歓迎できるものではありません。
特に廃刀令は、武士たちの存在意義をなくすと感じさせるには十分なものでした。

それに反発した武士たちが次々と反乱を起こしていきます。

その中で、1877年、武力反乱に動き出した私学生徒を抑えることができず自らが首領となったのが西郷隆盛です。

西郷軍は元士族で構成された警察官(警視庁抜刀隊)とも戦います。
その結果西郷軍は鹿児島に追いやられます。
最後まで抵抗しましたが、鹿児島の城山で西郷隆盛は自決。
西南戦争は終結しました。

徴兵制で集められた農民が、戦いのプロフェッショナルである武士に勝ったということで、士族の没落は決定的となったのでした。


神仏分離令

本川「他国は強いですか」
沼井「強い。日本はこういった組合を尊重しないからだ」
森下「それはやはり、日本の宗教観に問題があるのではないでしょうか」
木崎「無論神仏分離の令により日本の神道はより明確になった。しかし、未だ大多
  数の神の在り方は、生き方を問うものではなく崇め拝むだけだ」

舞台「大正浪漫探偵譚-エデンの歌姫-」 脚本


同じくカフェーでの会話です。

神仏分離令とは、明治初期における政府の宗教に関する政策です。
神道と仏教、神と仏、神社と寺院をはっきりと区別させようということです。

それまではごちゃっとしていたんですね。
当たり前に混ざっていました。

どちらかというと、神道を国強化しようという方向で、神社の仏像が壊されたりと、仏教が弾圧される形となりました。


新しい女

東堂「狙われるとわかっていてなぜ東京で歌手なんて」
西宮「夢だったから、人前で歌うのが。東京なら『新しい女』なんて珍しくもな
  いでしょう」

舞台「大正浪漫探偵譚-エデンの歌姫-」 脚本

大正時代の言葉で、「新しい女」という言葉があります。

女性文学者のグループが主張した、近代的・進歩的な女性のことです。
この時代、家庭的にも社会的にも自立した新しい地位を獲得しようという女性たちの動きがありました。

西宮はそれを知った上で、言葉遊びとしてこの単語を用いました。


オペラ

この時代のオペラといえば、浅草オペラですかね。

高尚なオペラとは違い、大衆にも楽しんでもらうために作られた日本語音楽劇です。
オペラは上流階級のためのものという概念から、一般の人にも楽しめるように作られました。

今作では、これに反発するかのように、「オペラ曲を中心とした上流階級のための音楽会」というイベント名で音楽会が開催されますが、特に意識して反発的にしたわけではなく、資産家や資本主義に対して好意的な方々が集まる会にしたかったためこのような名前にしました。

しかし浅草オペラ、気になりますね。
皆が笑って楽しんでいるようなイメージがありますがどうなのでしょうか。
入場料も安かったそうなので、娯楽としてとても活気のあるものだったのではないでしょうか。


刺青文化

実は明治時代に刺青は禁止されました。
海外からの出入りが増え、刺青のような野蛮なものをしていると思われないようにという明治政府の政策です。
日本では野蛮なイメージだったんですね。
海外ではそのようなことはありませんでしたが。

当時の彫り師たちは取り締まりを恐れて住居を転々としたそうです。
山根一家も引っ越ししたかもしれませんね。

しかし日本の刺青の技術はすごいぞと、海外の人たちは評価していたので、時が経つうちに黙認されていったようです。

珈琲文化


東堂は珈琲が好きです。
珈琲にミルクを入れたものを好んで飲んでいます。

大正時代、珈琲の価値はどのくらいだったのでしょうか。

珈琲が日本に入ってきたのは江戸時代です。
ですが、本格的に普及したのは明治になってからです。
西洋文化が入りやすくなって珈琲も広まっていきました。

はじめは上流階級の飲み物でした。
ですが喫茶店がオープンしたことにより、庶民にも伝わっていきました。
なので大正時代ではそんなに敷居の高い飲み物ではありませんでした。
ミルクを入れるというのも、明治時代にミルクホール(ミルクとパンや軽食をとれる場所)ができて以来、そんなに物珍しい飲み方ではなかったようです。


神戸の珈琲店の紹介


ちなみに、当時のコーヒーに近いものを飲みたいなと。
そんなことを思った私は、三年前くらいですかね、なんと兵庫県の神戸にある珈琲店をはしごしたことがあります。
あれは何だったのかな。
ちょうど仕事で神戸に行く用事があって。
何かろまたんで役に立つかもと、珈琲好きだった私は飲みまくったんだったかな。

SNSなどではチラッと出した可能性もありますが、3年前の記憶がなさすぎるので、これが初出しということで。
3年間出すことのなかった情報を、これを機に出してみようと思います。
写真も当時の私が撮影したものです。

・日本で初めて提供された珈琲を復刻した「放香堂加琲」

放香堂加琲の珈琲「麟太郎」

すっきりと飲みやすい珈琲で、麦っぽさがありました。
これが日本初の当時のコーヒーなのかと。
感動した覚えがあります。
明治時代ですかね。
東堂が飲んでいた頃のものだと思います。

ミルクを入れたもの

ミルクを入れても合いました。
飲みやすいです。

放香堂加琲
住所:神戸市中央区元町通3-10-6



・高級感漂う上品な店「にしむら珈琲店」

こちらは昭和からのお店になります。
高級感漂うお店でした。
当時は会員制だったそうです。凄いですね。
エデンのような感じでしょうか。

にしむら珈琲店

深みがあり飲みやすく、とにかく雰囲気がよかったです。
上質で、ゆったりと過ごせました。
時間を楽しむ場所です。

2店舗あるようですが、私は下記の店舗に行きました。

北野坂にしむら珈琲店
住所:神戸市中央区山本通2-1-20


・カウンターで一杯を楽しむ「茜屋珈琲店」

こちらも昭和からのお店です。
カウンターのお店です。
一杯ずつ丁寧に淹れてくれます。
珈琲を楽しむためのお店といった感じで、珈琲に対して愛がとても感じられました。
一人でも入りやすいです。

茜屋珈琲店

コクと苦味があり、とても美味しかった。
好みの味でとても素敵な時間でした。

茜屋珈琲店
住所:神戸市中央区北長狭通1-9-4 岸ビル2F 


こはぜ珈琲

さて。
忘れてはいけないのがこはぜ珈琲さんですね。
神戸ではなく東京ですが。

下北沢と早稲田にあります。

下北沢のコーヒーを初めて飲んだ時衝撃を受けまして。
「あれ、珈琲史上一番好き」
と。
まあ惚れ込みまして。


そこから通販で豆を買い、毎日家で飲んでいます。
いくらか以上買うと送料無料なので、毎回買うのはブレンド2袋、それ以外に何か期間限定のものを2袋とかです。

が、今回コラボが実現してからは、ろまたんブレンド2袋、こはぜブレンド1袋、期間限定1袋といった感じで通販しています。
なんとろまたんブレンドも買えるんです。嬉しい。

どれもロースト8。焙煎が選べます。ミルクに合わせる場合は9とかの方がいい場合もありますが、うちではブラックで飲む人もいるので8にしています。

豆じゃなくても、粉にもしてくれます。

私はペーパードリップで飲んでいます。
ドリップ用のペーパーもドリッパーもはかりスプーンも100均でも手に入るので、もし始めてみようかなという人はぜひ。

こはぜ珈琲


ちなみに今作で東堂が使っていたコーヒーカップも本番中物販コーナーで購入しました。

舞台「大正浪漫探偵譚-エデンの歌姫-」物販

珈琲への愛が止まらない私です。

おすすめの珈琲屋さんがあったらぜひ教えてください。
東京以外でも、いつか行きます。
酸味は苦手で、こくと苦味のあるものが好きです。
ミルクはお店で飲むときは基本的には入れないです。
お店の珈琲の味を楽しもうと思っています。


珈琲談義になってしまいました。

あと二つほどぱぱっと行きましょう。


横浜を舞台にしたこと


なぜ横浜にしたのか。
これはもう単純に、西洋文化が入りやすい場所だったからですね。
神戸と悩みましたが、東京から比較的行きやすい方がいいなと思いました。

馬車道らへんは大正時代の空気が残っていてとても好きです。
おしゃれなお店も多いです。
同じく大阪の北浜とかも好きです。
神戸の北野も。

旅行したくなってきた。。。


東堂がしょうたに渡した食べ物と飲み物


これは先ほど出てきた「ミルクホール」で買ったていで作りました。

東堂が自分のご飯にと買ったんですね。
中身は、牛乳とあんぱんです。

しょうたに気づいた東堂は、ただ渡すだけでは遠慮されてしまう可能性もあると、何かスムーズに渡す手立てはないかと考えた時、そうだ依頼の褒美ということにしたらいいかもしれないと、ああいう台詞になったわけでした。
人とうまく接することができなかった東堂らしいシーンでとても気に入っています。

東堂「・・・(紙袋を差し出して)これを食べて動いてくれますか?君に頼みた
  いことがあります」
しょうた「・・・え?」
   しょうた、袋を開けるとパンと牛乳

舞台「大正浪漫探偵譚-エデンの歌姫-」 脚本




さて。
どうだったでしょうか。

今作に関係した大正時代の時代背景を書いてみました。


大正時代はとても短い時代です。
ですがその短い時代の中にはたくさんの変化が起こっています。


ろまたんを脚本として書くときに、毎回大正時代のことを勉強しなおします。
そうすると新しい発見があったりします。
まだまだ知らないことの多い大正時代を、これからも大切に描いていきたいと思います。


次は、いよいよ彼女の話でしょうか。
サブタイトル「エデンの歌姫」
彼女周りの話を深掘りしていけたらと思います。


展示会まであと20日ほど。

なんと30日、ニ部では上野役の林田麻里さんとトークショー、三部ではサイン会をやらせていただきます。
サイン会ではぜひ感想含め色々お話できたら嬉しいです。


引き続き「大正浪漫探偵譚-エデンの歌姫-」の世界を楽しんでください。


✼ 舞台『大正浪漫探偵譚』展示会 ✼
■日程■
展示日程:2023年8月26日(土)〜31日(木)
展示時間:10:00~19:20
入場時間:(1部)10:00~13:00
     (2部)13:20~16:20
     (3部)16:20~19:20
 ※31日のみ展示時間が10:00~16:00になっております。
■会場■
大泉学園ゆめりあホール7階 ギャラリー
■チケット■
前売り/当日券:1,000円(税込)
■特設サイト■

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