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おもちゃメーカー育休中の新米ママ、自社商品に苦戦する。

私はおもちゃメーカーに勤めて13年。
営業部員としてわが社の商品知識はひと通りあると自負していた。

「〇か月ごろの赤ちゃんの発達は〇〇が始まる時期なんですよ!」
「この時期はこうやってあやしてあげることが発達にも大事なんです」

主要な育児用品店のバイヤーさんにはわが社の商品の良さを自信を持ってお伝えしてきたつもりだ。

2022年8月、そんな私がついに母になった。
第一子 息子の誕生である。

おもちゃメーカーの社員だもの。
妊娠する前は漠然と「子どもが生まれたらおもちゃを買いたくなるのかな」と思っていた。
しかし実際は、それどころじゃなかった。
産休に入るまで入院準備をまったくしてなかったし、結局予定日も前倒しになるし、おもちゃのことなんて…。
本当に、少しも頭によぎらなかったのだ。

私のお腹の中に10か月も入っていたけれど、初めましての生き物であるわが息子。
退院してすぐ始まった息子との日々は、まずはこの子を生かさなくては! という気持ちだった。

泣いたらおっぱい!泣いたらオムツ! 
と、いつも解決策を探していたように思う。
幸いにも息子はおっぱいをよく飲んで、よく寝ていたので比較的育てやすい方だったと思うが、それでも毎日必死だった。

あっという間に生後1か月、少しは息子の存在にも慣れた頃、ようやくわが家におもちゃがやってきた。
会社の先輩がおもちゃを見繕って送ってくれたのだ。もちろん月齢的にもぴったりなものばかり。よーし、遊ばせてみるか! と、息子の機嫌を伺いつつ商品を少しずつ開封していく。

光の方を見るようになったら、
足をバタバタし始めたら、
わが社の商品は子どもの発達の段階に合わせた商品でわかりやすく、息子も初見から興味を示した。

脚でキックして遊ぶベビージム。
いきなりバタバタ、脚でぶんぶんキックしている。

「おお、喜んでる!喜んでる!」
やっぱり遊ぶんだなとうれしくなった。

キャキャキャ!キックキック!
いい感じ。

しかしひと通りキックしたら「ふうぅぅ」とひと息つく息子。
息子に対して「こっちだよ!キックキック!」と声をかけたり脚を触っても遊びは再開しない。

もう飽きたか…?

あれ5分しか経ってないじゃん。

この商品はこういうためのものという知識はあるのに、わたし、せっかくいただいたおもちゃを上手く使いこなせない…!という壁にぶち当たった。 
あやすのは簡単でしょって思ってたが、なんだかうまく息子の興味を引くことができない。
月齢的にはぴったりなはずだけど、うちの子にはまだ早いってことなのかしら。
それとも私が下手くそなのか? 
「おもちゃメーカーに勤めてるってことは子ども慣れてるよね?きっと」
何度言われたでしょう、このセリフ。営業部は大人が相手なんだよなあ。
おもちゃで気を引くのって難しいなあ。

そんなことがあり、なんだかおもちゃで遊ぶことから遠ざかっていた生後2か月ごろ、企画部の後輩の子がうちに遊びにきてくれた。
商品開発をしている子だ。
思い切ってその子に聞いてみた。
「あの、このおもちゃで上手く遊べないんですが…?すぐ飽きるのか終わっちゃうんだよねぇ」

そしたら彼女は「ああ、この商品はこういうふうに横に置いてあげたら喜んで遊ぶ子多いんですよ!」

さっそくその遊び方を実践してみたらめっちゃ喜んでる息子。
「それ、早く教えてよ〜!」って少し前に流行った名刺の広告のセリフがつい出たよ。


息子が生まれて、おもちゃをユーザー側として使う初めての体験から気づいたことは2つあった。

ひとつめは、商品を知ってるとはいっても、今までは「どれだけこの商品は売れてるか」など営業的な視点に偏っていたということ。
まともに遊んだことの無い商品を売っていたってことなんだな。

ふたつめは、私みたいにせっかくおもちゃを買ったのに最初なかなか食い付かずに持て余してしまっている新米ママさんもいるんじゃないかなということ。
とくに低月齢期は「あやす」ためにおもちゃを使うことが多いと思うけど、子どもの興味を引き出すコツみたいなものがあったら教えてほしいな。遊び方についてはパッケージに書いて終わりでなくて公式サイトに、簡単な動画でいいのでいつでも見れるようにしておいてあげたら喜ばれるんじゃないかなと思う。
私が後輩に教えてもらったようなコツや開発者が知ってるポイントは新米ママさんたちに余すことなく教えてあげた方がもっと満足度が高くなると思うし、丁寧なブランドだなって感じる。

そんなこと自分がこの立場になるまで思いつきもしなかった!

息子との毎日を通じて、本当に少しずつ少しずつ自分が「母」になっていくのを感じている。
正直、子どもが生まれてすぐからわが子の気持ちがわかるようになるわけではない。今でもわからないことだらけ。
技術的にもいきなりあやし上手にはならない。
抱っこだって、何回も何百回もやるからだんだんコツが掴めてくる。

めでたく11/6で息子は3か月になった。
相変わらずよく飲んで、よく寝て、すくすく育っている。
息子の喜ぶポイントもわかるようになって、私のおもちゃの使い方も少しは上手になったかな? 

ちなみに息子は今、自分の拳をチュパチュパ、ガブガブするのに夢中だ。
脚でキックするベビージムも上手く遊べるようになった。

ド新米ママの私にとっておもちゃは、息子とのコミュニケーションの道具のひとつ。
そしておもちゃと一緒に、子どもも親も成長していくのかもしれない。

《終わり》

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