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自分に恥じない生き方|『君たちはどう生きるか』吉野源三郎

「人様に恥じないように」ということばは聞きなれているけれど「他人の評価よりも大切なもの」が、じぶんの中にきっとある。

そう教えてくれた本を紹介する。

雨染みができてしまった。
お目汚しだったらごめんなさい。

『君たちはどう生きるか』吉野源三郎

日本屈指の名著で長いあいだ読みつがれており、最近ではマンガでもリメイクされてベストセラーである。

立派な人とは何か

この本の主人公、コペルくんは「立派な人になってほしい」と育てられる、裕福な家庭の中学生の男の子。(父親は早くに亡くしている。)
コペルくんが学校生活のなかで社会の仕組みや生きかたについて哲学的に考えをふかめていく物語だ。

そんな彼に叔父さんが語りかけるノートの部分と、物語の2部構成になっている。

肝心なことは世間の目より何よりも、君自身がまず、人間の立派さがどこにあるか、それを本当の魂で知ることだ。そうして、心底から、立派な人間になりたいという気持ちを起こすことだ。

叔父さんのノートより抜粋

30を過ぎたが、立派な人になれているのだろうか
そもそも立派とはどんな人間なのか。
はっきりと答えられないけれど、心に浮かんだ答えは「否」だった。

10代の子はもちろん、30代、40代、ひいては50代の方にも読んで欲しい。忙しさの中で忘れてしまった何か、これからの人生に大切なものがきっと見つかるはずだ。

生きかた・在りかたを見つめることができる本である。

人として大切なことは何か

コペルくんが友人を裏切ってしまったと、良心の呵責を感じる場面がある。他の人にはバレていないだろう、それならごまかすことができるのではないかなどと、いろんな場面を想像して言いわけを一通り考えてみる。

そしてそんな卑屈な自分惨めなきもちが苦しくて、唇を噛みしめる。

本当にあの時の自分を思い出すと、コペルくんは自分ながら自分が嫌になってきます。いざとなると、自分があんなに臆病な、あんなに卑屈な人間になろうとはーー(中略)
自分のしたことは、誰が知らなくとも、自分が知っていますし、たとえ自分が忘れてしまったとしても、してしまった以上、もう決して動かすことはできないのです。自分がそういう人間だったことを、後になって打ち消す方法は、絶対にないのです。

わたしたちも日々のくらしの中で自分を恥ずかしく思うことがあるだろう。

例えば高齢の方に席をゆずれなかったとか、仕事でちょっとした失敗をしてしまった、などである。

じぶんだけが知っている、じぶんだけの恥。

しかし、大人になると上手くやりすごす方法も学んでしまう。
そんな場面になれてしまって、心に蓋をしてしまってはいないだろうか。

心に蓋をして「他の人もなんとも思っていないんだからいいじゃないか」と、その場をやり過ごすことは、他人に評価の軸を譲っているのと同じだ。

これでは立派な人間とは言えないだろう。

人からどう思われるかではない。
「一番身近な他人であるじぶん」がどう思うかである。

つらい現実、情けないじぶんから、目をそらさないことが大切なのではないだろうか。

失敗から得る教訓

コペルくんのお母さんは、そっと寄りそう優しさを持った人だ。

大人になっても、ああ、なぜ心に思ったとおりにしてしまわなかったんだろうと、残念な気持ちで思い返すことはよくあることなのよ。
どんな人だって、しみじみと自分を振りかえってみたら、みんなそんな思い出を一つや二つ持っているでしょう。
ーー(中略)
あの思い出がなかったら、お母さんは自分の心の中のよいものやきれいなものを、今ほど生かしていきることはできなかったでしょう。
ーー(中略)
その時、その時に、自分の中のきれいなこころをしっかりと生かしてゆかなければいけないのだということも、あの思い出がなかったら、ずっとあとまで、気づかないでいてしまったかもしれないんです。

失敗することは悪いことではない。
反省し、学びを得られるのなら、その失敗は成功だ。

心に蓋をしてしまっては反省することもままならならい

だめな自分と向きあうことはしんどいけれど、そこを乗り越えた先にわたしだけの、あなただけの答えがある。

教科書には書かれていない、自分だけの教訓が。

その教訓にしたがって、きれいなこころで生きることが立派な生き方なのではないだろうか。

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物語もさることながら、叔父さんのノートが哲学的であたたかくて、こころに染みわたるものがある。

叔父さんから
コペルくんへの手紙のように
書かれている。



マンガではコペルくんの物語が漫画で、叔父さんのノートの部分はおまけのように活字の文章で書かれている。

漫画を読んでいるとおまけページを読み飛ばしてしまうのはわたしだけだろうか。
読み飛ばしてしまうのはもったいないので、是非、文庫などで読んでみてほしいと思う。

自分に恥じない生き方はしんどいし、恥ずかしいし、逃げたくなる。
けれど、惨めな気持ちを感じたことのない人間の方がむなしいだろう。

他人にどう思われるかではない。
自分のこころに正直に、自分に恥じないように生きていきたい。

こちらの本はジブリで映画化もされるとか。とても楽しみ。わくわく。

おしまい。
ほんじゃ、またね〜!




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