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『Liella!』の2期生がこんなに「ブースター」なわけがないという話

皆さんは、「ブースター」というポケモンをご存じだろうか。
最近のポケモン事情には疎くて…という方も、初代から登場している「イーブイ」というポケモンが分岐進化した姿の一つだと言えば思い出してもらえるかもしれない。
ノーマルタイプのポケモンである「イーブイ」に、「かみなりのいし」を与えればでんきタイプの「サンダース」に進化し、「みずのいし」を与えればみずタイプの「シャワーズ」に進化し、そして「ほのおのいし」を与えればほのおタイプの「ブースター」に進化するというアレである。
今でこそ分岐進化するポケモンのバリエーションは増え、そこまで珍しいものではなくなったのだが、初代のポケモンにおいては「イーブイ」の進化系以外にこのような「複数の進化先」を有するポケモンはおらず、「イーブイ」をどの進化先に育成するか迷いに迷った方もきっと大勢いたのではないだろうか。

イーブイとその進化系(サンダース、シャワーズ、ブースター)


ここからは少しシステム的な話になるので、ざっくばらんに説明させていただくのだが、ポケモンにはその種族のパラメータの成長度合いに影響する「種族値」(※俗称)というものが存在する。
例えば「ピカチュウ」なら「すばやさ」が高く、「イワーク」なら「ぼうぎょ」が高いというアレである。
「イーブイ」の進化先は、現在では初代の3種類から8種類にまで増えており、そのどれもが共通の数値のシャッフルにより、各パラメータに「種族値」が割り当てられている。
その結果、それぞれの進化先では得意分野・不得意分野が存在することになり、例えば「サンダース」は「すばやさ」が高いので先制して攻撃しやすい、「シャワーズ」は「HP」が高いので打たれ強い、そして「ブースター」は「こうげき」が高いので攻撃の威力が上がりやすいといった具合である。

上記の「サンダース」や「シャワーズ」については、その得意分野を活かした活躍の場が与えられることも多かったが、件の「ブースター」については、習得技のタイプや種類の都合上、このせっかく高い「こうげき」のパラメータを活かしにくく、また「すばやさ」や「ぼうぎょ」が低いためこちらが攻撃する前に倒されてしまうことも多く、非常に扱いづらいポケモンとなっている。
これが、初代から一貫して「ブースター」が不遇と言われ続けてきた理由である。

なぜ「ブースター」がこのような不遇な状況に置かれていると知りながら、これまで公式は「ブースター」の立場が一変するような救いの手を差し伸べなかったのか(それこそ、種族値の再シャッフルなど)。
その理由はズバリ「『イーブイ』に『ほのおのいし』を与えると、なんと『ブースター』に進化するぞ!」というところで、ポケモンとしてのアイデンティティが完全に停止してしまっているからである。
ポケモンの対戦においては、そこから先の「ほのおタイプのポケモンとしてどのような長所を持っているか」が最も重要なのにもかかわらず、「あの『イーブイ』が分岐進化してほのおタイプの『ブースター』になった」というところで役割を終えてしまっているのが、「ブースター」というポケモンの不遇さなのである。


かなり前置きが長くなってしまったが、ここからがいよいよ本題となる。
察しの良い方はもうお気付きかもしれないが、この「ブースター」における「アイデンティティの停止」が、『ラブライブ!スーパースター‼』(以下「SS」と表記)の2期における2期生(1年生)の立場にも大筋でそのまま当てはまるのではないか、というのが今回主張したい持論である。

言うまでもなく、SSの2期生である「桜小路きな子」「米女メイ」「若菜四季」「鬼塚夏美」の4名の最大(かつ、もしかしたら唯一)のアイデンティティは、「後輩」という属性である。

これまでの『ラブライブ!』シリーズでは、1年生から3年生までの学年にそれぞれ3人のメンバーがおり、こと3年生(=最上級生)が存在することから、彼女らの卒業後は同メンバーでの活動ができなくなるため、物語としてもそこで終わりにするしかなかった。
その点、SSにおいては最初の設定を1年生のみの5人組とすることで、これまでは実現できなかった「ユニットとしての活動の2年目」という「その先」が初めて描かれている。
これについては、自分も大いに感慨深いものがあり、特に2期の序盤のかのんときな子の文字通り「先輩と後輩」の関係性の描写は、深く首肯できるものであった。

しかし、これは前置きで述べたところの「『イーブイ』に『ほのおのいし』を与えると、なんと『ブースター』に進化するぞ!」が、「『Liella!』が『2年目』を迎えると、なんと『きな子』という2期生が加入するぞ!」に置き換わっただけの話であり、そこで2期生のアイデンティティも同じく停止してしまったと言えるのではないだろうか。

たしかに、2期生の加入というイベントは非常に感慨深いものであり、それ自体に大きなドラマ性を有していたというのは否定しない。
ただし、そこに2期生自身の「個性」や「魅力」という付加がなければ、本当にそれだけで終わってしまう。
正に、出オチもいいところである。

この点については、まだ「ブースター」の方が救いがあるぐらいであり、ポケモントレーナーの中には、いわゆる「ブイズ」と呼ばれる「イーブイ」の進化系ポケモンのみでパーティーを構成するという趣向を好む者も一定数存在する。
その縛りにおいては、「ブースター」は守りに優れたタイプである「はがねタイプ」への貴重な有効打を持っているという点などから、何かと重宝されることも多い。
つまり「ブースター」は、他の「ほのおタイプ」のポケモンと比べられてしまうと能力的に厳しいものの、特定のコンセプトで組まれたパーティーの中ではきちんと役割と存在意義を発揮できているのである。

一方、「Liella!」の2期生については、他作品の後輩属性を持つキャラと比較しても「個性」や「魅力」という点で劣るばかりか、「Liella!」というユニット内においても(すみれの暴走があったとはいえ)1期生から直々に戦力外通告されたシーンもあり、またおそらくメタ的な観点からも1期生ほどの支持は得られておらず、明確な役割や存在意義に乏しい存在となっている。
これは、制作陣の「天下の『ラブライブ!』シリーズであれば、それだけで勝手に盛り上がってくれるはずだ」という油断と怠慢の結果と言わざるを得ないだろう。

さらに重ねて罪深いのは、これまでの『ラブライブ!』シリーズとは違って、あからさまな「後出しジャンケン」ができたにもかかわらず、この結果を招いてしまったという点である。
従前のシリーズでは、初期から後輩キャラとしての1年生メンバーが存在しており、そこから極端なキャラのコンセプトの変更はできなかった。
しかしSSについては、1期の結果を踏まえた上で、「Liella!」というユニットに足りないものを補うという明確な目的と役割意識を持たせて2期生を配置することが可能であったにもかかわらずそれを怠り、結局は1期生の影に2期生を完全に埋もれさせてしまったのである。
重ね重ね、2期生の加入という一大イベントによる「Liella!」への「化学反応」を期待していたファンの気持ちの置き場が無くなってしまったという現実を、制作陣には深く理解していただきたい。

ただ、個人的には夏アニメの感想にも書かせていただいたとおり、「鬼塚夏美」だけは唯一「後輩」という属性に頼らずにそのキャラクターの魅力と新鮮さだけで勝負できるキャラと認識しており、2期生の中では個人的に別格の存在であったと一言述べておきたい。

以上、SSにおける2期生の加入に対する率直な感想を述べさせていただいたが、2期生のキャラクターに純粋な魅力を感じていた方には不快なものであったかもしれない。
しかし、これも本シリーズへの「愛」ゆえの発言であると理解されたい。
SSの2期最終話の衝撃展開もあり、色々と来たる3期に向けて揺らぎは生じているものの、まだ『ラブライブ!』シリーズの「ブランド力」は失われていないと信じている。
制作陣の方々には、本当の意味で危機感を持っていただき、この先も我々が本シリーズを追っていこうと思えるような脚本を強く求めていきたい。

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