医療者の発信の影響

少し思い切ったことを書いているのかもしれません。現在、感じている不安を書こうと思います。


最近、寄せられる相談、希望の会の会員限定の掲示板の内容が変化してきていることに不安を抱いています。

発信する医療者を妄信して、現実の医療者との間に誤解、行き違いが生じているということです。


私は自分が情報に溺れた失敗を、公開してきました。
私が情報の波に溺れたのは6年前。
科学的根拠が乏しい療法が『あきらめない』『がんが消えた』などの言葉で手を広げていました。
病への理解、治療がどのように確立されていくのか、創薬のこと…
無知であった私は、『○○大学名誉教授の推薦』『動物実験で効果が出ている』の言葉が科学的な信頼を保証するものだと思ってしまいました。
命はお金には代えられないと、アホみたいにすがり、そのうえ、助けたかった夫の治療を妨げる結果になってしまいました。後悔してもしきれない気持ちが、今の活動に繋がっています。


現在、日本胃癌学会と共催して配信している【動画で知る胃がんのすべて】は、胃がんについて、がん治療について理解するには、これ以上ない情報発信だと思っています。
講師の先生方も、よくこの企画を快諾してくださったと思う顔ぶれです。医療者から見ても、その価値はご理解いただけるのではないかとすら思います。


街中に出て発信するグリーンルーペプロジェクトは、がんを告げられてからの狼狽を思い、普段から知る機会の必要を感じて取り組んでいます。
内容、講師の依頼も精一杯考え、さらには【イベント】で終わらないように、厚生労働省、各自治体の後援を得られる中身にとこだわってきました。
発信から何かが動き出すことを趣意とし、実際、動き出していることがあります。


動画シリーズ、がん啓発プロジェクトは、とてもわかりやすく話してくださっても、科学、医療の話はエンターテイメントみたいに、ウキウキというわけにはいかず、受け手には、知ろうという、いくばくかの努力は必要なのだと思っています。

最近、発信する医療者が増えているように感じています。


発信は、前述した「科学的根拠が乏しい情報」に埋め尽くされた分野への誠意ある取り組みであることを理解しています。


ただ、『人は易きに流れる』ということも痛感しています。


自宅に居ながら、自分のタイミングで、わかりやすい方法で、医療者からの情報を得られることは、とても便利なのです。
コメントに答えてくれる…そこに親しみを抱く気持ちもわかります。
病に向き合っている不安と、人との接触が減っている日常には、自分に応えてくれる存在はうれしい。
人はどうしても、視覚、聴覚、言葉に抱く感情により、好感を抱くことには肯定の気持ちが働きやすいのではないかとも思います。
好意が、知ろうという入り口になることは大切だけれど、内容の理解ではなく、『○○先生が言っていた』が、信頼の裏付けになっている人が増えてきているのを感じています。
私が、あの時に、誠実に現状を伝えてくれる医師よりも、自分が欲しい言葉をいってくれる医師に好意を抱き、『信じたかった』気持ちに通じているのではないかと感じているのです。


がん治療に関しては、がん種を超えて共通していることもある一方、個々の治療に関しては、がん種、部位によって、例えば同じ抗がん剤を使用していても違いがあるのです。
医療者には、それぞれの専門性があります。例えば、胃がんなら、胃がんの治療に携わっている外科医、内科医、腫瘍内科医、病理医、それぞれが、一番、胃がんへの正確な専門性を持っているのです。
発信する医療者は、それは百も承知のことで、発信の中で、そのことに時折、触れているのですが、受け手に『そもそも』の知識が無いと、抗がん剤の名前に反応してしまったり、自分がわかりやすい内容だけが心に残ってしまうのだと思います。
さらに、患者さんの発信も増えています。
以前は患者のブログが、読む人の医療選択、医療者に抱く感情にまで影響を及ぼすことがありましたが、動画になると、それは、もっと力を持つ発信になります。


最近、受ける相談の中に、「それ、違うがん種の話ですよね」ということが増えています。中には、術前化学療法なしに手術適応であるのに、体験者の苦労話を知り、拒否してしまっているケースもあります。

私は説得する立場ではありません。正確な情報を伝え、そこからの選択は個々のものです。でも、体験者の話は強く、その先がそれなりに予想されるからこそ、無力を感じています。


私は、【公開セカンドオピニオン】を始めた本人です。
公開セカンドオピニオンは、医療者と患者が同席し、医療者からは見えていなかったことを伝え、その発信は、こう誤解される可能性があると対話しながら進めていくことを大切にして開催してきましたが、集客型が難しくなり、web配信になることで、届きやすい対象が増える一方、様々な課題が生じてくることを現在、痛感しています。


患者家族から寄せられる声の中には、医療者への恨みに近いものもあります。
そのほとんどが、『誤解』です。


専門的知識が高い医療者と、一般の私たちは、そもそもの言葉への理解が食い違っていることがあり、私は、当初、医療者の言葉が【音】にしか聴こえませんでした。その誤解が、負の感情となり、絶望や後悔に繋がってしまう経験をしたから、解消したくて活動してきたつもりでした。


発信する立場にあるものとして、webを使うことがメインにならざるをえない状況の中、今後、どうしていくのかを問われているのだと痛感しています。
そして、胃がんという臓器に特化した患者会としての存在意義をも問われているように感じています。


※追記※
『押川先生の毎週のがん相談飲み会は、ロミさんが裏で仕掛けている』という噂があるのだと知り、愕然としています。
噂ってすごいなと思うし、GANNOMIと誤解しているのかなとも思いますが、それは、あまりにも押川先生に失礼なので、ここで、ハッキリと、私は関わっていないことをお伝えします。
そして、連日のように『がんサバイバーのためのYouTuber養成講座』への参加リクエストを様々な方からいただいているのですが、希望の会、グリーンルーペとしての公式YouTubeチャンネルからの発信はしても、個人的にyoutuberになる気持ちにはなれず、ブログも今春、やめています。すみません。

全国胃がんキャラバン、多くの人にがん情報を届けるグリーンルーペアクションに挑戦しています。藁をもすがるからこそ、根拠のある情報が必要なのだと思い、頑張っています。