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しあわせの青い豆(枝豆、青えんどう)|酒と肴 その三十一

この時期、寝床で聞く雨音は心地良く、特に夜が格別です。

布団の上で肘枕、目を瞑り、最初に聞こえるのは外気を満たす雨粒のさざめき、次いでアスファルトで弾む水滴のリズム、樋を伝う水の唸り。時折、水琴窟を思わせる雨垂れも響き、飽きることがありません。なぜだか柔らかく、穏やかな音から耳に入ってくるので不思議です。

次の日に予定がないと、その味わいはさらに増します。
色とりどりの音に包まれて、何をして過ごそうか考えながら寝落ちする気持ち良さ。湿気た梅雨の楽しみのひとつです。

いつもよりちょっと遅めだったようですが、関東地方も数日前に梅雨入りしました。七十二候では「梅子黄(うめのみきばむ、うめのみきなり)」、梅仕事のタイミングです。

「この夏こそは梅仕事を」と思いながら、果たせぬまま盛夏を迎えるのは毎年のこと。言い訳させてもらうなら、幼い頃に味わった祖母の梅ジュースと梅酒のノスタルジアを、いつまでも残しておきたいのでしょう。

そこで、せめてお手軽でも季節の移ろいを感じたく、はしりの枝豆と名残の青えんどう(グリーンピース)で水無月の昼酒です。

枝豆は端を切り落とさず、そのまま塩茹で。茹で上がりをざるにあけたら、追加で塩をまぶします。そうすると、さやを唇に運んだときに塩がふれてちょうどいい塩梅になります。

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グリーンピースもこれまた塩茹で。青臭さが苦手な方も多いようですが、そら豆も含め私は豆の香りが大好きです。スプーンで山盛り掬って、口の中を豆で満たします。

選んだお酒はナショナルビールの二大巨匠、スーパードライと一番搾り。シェアワンツーフィニッシュのビールで喉をやっつけます。

思いつきで平日に休みを取りましたが、特にやることもありません。この後は本でも読んで過ごしたものか、昼寝でもしたものか。何事もない雨の水曜日、久しぶりに大瀧詠一でも聴いてのんびり考えます。

しあわせの青い豆、それとビール。中年になったチルチルは、大切なものは自分のすぐ近くにあることを知りました。

メニューと材料(という程のもんじゃないですね)
・塩茹で枝豆(枝豆、塩)
・塩茹でグリーンピース(青えんどう、塩)

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