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⑪-1『死体があった部屋から見えること』

こんばんは。
長編公募の文献まとめ、11冊目です!!
先にお伝えすると……こちらの文献、非常に参考になりました!!

では、さっそく文献情報の紹介です。

『死体があった部屋から見えること 遺品整理と言う仕事』
著者:中岡隆
発行所:株式会社角川書店
初版:平成27年7月31日


以下、メモです!



●はじめに

集合住宅の4階に住む、一人暮らしの60代女性。
トイレで用を足そうとして脳溢血になり、便座に腰かけたまま亡くなった。(※脳出血ともいう。壊死した小動脈壁が高血圧などの影響で破綻を生じ出血すること。)

梅雨の季節、亡くなってから4~5日たって、ほかの部屋の住人が騒ぎ始めた。

ウジ虫は、1階の廊下にまで降りてきていた。
検死の結果は病死。警察は死体の搬出は行うが、現場の掃除まではしない。

母親が死んでいると警察から女性の息子夫婦に連絡が入った。

さらに追い打ちをかけるように、近隣住民から、ウジ虫やハエを駆除しろと言う怒りの声が飛んでくる――。

 

部屋は、扉を開ける前から強烈な死臭が漂っていた。
玄関のドアの下の隙間から、ウジ虫がぞろぞろと這い出てくる。
大人の小指の先ほどの大きさもある、巨大なウジ虫。死体にたかったウジ虫の特徴である。

ドアをあけると、匂いはさらに強烈になる。

臭いの元はトイレ。
電気のスイッチを入れると、床一面にいたウジ虫たちが明かりを嫌って、一斉にもぞもぞと壁沿いに這って逃げていく。

腐乱した死体から腐敗液で、トイレの床はどす黒くなっている。
便器の中にはドロドロの腐敗液と、大量の肉片が詰まっている。

便器の横の排水パイプには、亡くなった瞬間に身体がのけぞり、頭がよっかかっていたのか、ずるッと抜け落ちた大量の髪の毛が皮膚ごとべっとりとくっついていた。

 

第一章    私たちの仕事とは?

著者の会社「セントワークス」では、4項目を主要業務として掲げている。

  • 不用品回収

  • 遺品整理

  •  ハウスクリーニング

  • 家のことならなんでもお任せください

モットーは「お客さまの数だけご要望がある」

 

◆「遺品整理」という仕事

主な業務は、不用品回収、遺品整理、ハウスクリーニングだが、
そのほかリフォーム、外壁塗装、回線工事、不動産売買や車の解体、敗者手続きなどを請け負う業者の紹介も行う。

 

遺品整理の仕事は、主にふたつに分類される。

①  その部屋の主が何らかの理由で、室内で人知れず亡くなり、そのご遺体が腐敗したことで死亡が発覚したケース。
②   病院で亡くなったり、交通事故で死亡しているケース

いずれの場合も、ご遺族や新世紀、関係者からの依頼を受けて、まずは現場で見積もりを行う。

また、急いで荷物を片付けたい、室内をきれいにしたいという方が多く、連絡を受けてすぐ作業を開始することもよくある。

亡くなったのは身内なのに、なぜ自分たちで片付けないのか

  •  亡くなった方と血縁関係はあっても疎遠

  • 荷物の量が多すぎる。(仮に一人暮らしでも、すべての荷物を運び出せば、2トン、あるいは3トントラックがいっぱいになることも珍しくはない)

  • 遺体が腐敗したことにより、凄絶なことになっている部屋を清掃しなければいけないため

セントワークスでは、特殊清掃付きのケースを“マルトク”と呼ぶ。

 

◆にわか業者が急増中

著者が以前に勤めていた大手Zが、遺品整理の先駆け(2002年起業)
それ以前にも、孤独死等の問題はあったはずだが、それまでは誰がやっていたか。
身内の人、公営の団地なら地元の役所や清掃局の職員。民間アパートなら、よろず請負業、何でも屋さんのような業者が行っていた。
高齢化が進み、そういったニーズは増えてきている。

よく見かけるのがリサイクルショップの参入。
それが問題になるのは、回収した家具や家電を、そのままリサイクルショップで売ってしまうこと。
(古物営業法にひっかからないのかな…)

◆遺品“処理”ではなく“整理”

そして、もうひとつ後発の業者と著者の会社(セントワークス)との違いになっているのが、遺品の“処理”と“整理”の違い。

後発の業者は不用品の回収業者。
セントワークスでは箱型のトラックを使うが、後発の業者の場合、屋根なし平ボディのトラックにガンガン遺品を乗せていく。

 

◆アルバイトに必要なのは挨拶

人手の応援が必要になるとアルバイトの若い子を使う。
(私も体験させてもらえないだろうか…)

まずは挨拶。あとは、エレベーターを独占しない、台車を無造作に置かないなどの配慮にも気を配っている。

 

◆タンスの中から五百万円

サービス業としての気遣いをさすれないことが大切。
たとえば、仏壇の処分を依頼された際に、梱包して外に出す。
(古くなって買い替えるということだったが、外の人が見る印象が違う)

器は、布などをかませて、両手で運ぶ。
タンスは、中身を全部箱詰めしてから運び出す。
その際に、五百万円もの残金がある預金通帳が忘れられていることもあった。

 

◆気になる料金は?

荷物の量、家の前に直接トラックを付けられるのか(家とトラック間のピストン輸送が必要になるか)など様々な条件で変わる。

セントワークスは、電話やメールを通しての依頼が大半。

いくらくらいになるかと料金を聞かれた場合は、電話で部屋の数や状況を伺い、だいたいの料金をお答え。正確な料金を知りたい方のために、無料で見積もりに伺う。

家財道具を積み込んで終わりという仕事ではない。
処分場に持ち帰り、木、アルミ、陶器、プラスチックなどに分別する作業がある。
この作業には、梱包以上の手間と時間がかかる。

 

第二章    “マルトク”現場の話

マルトクとは、その家に住んでいる方が、誰にも知られず亡くなり、ある程度時間が経過した状態で発見されたケースを指す。

飼っていた動物が死んで、そのままにしておいた現場もマルトクに入る。

 

◆マルトクでやってはいけないこと

入ってきて半年の阿部くんが、はじめてマルトクの仕事をした時の話。
それまでは、不用品の運び出ししかやったことはなかった。

 荷物を外に運び出していき、最後に阿部くんが畳を持ち上げた。
元住人が倒れていた畳は腐敗液がしみ込んで重く、バランスを崩す。
一瞬厚手のズボンの上からだが、右足の膝の上に畳を置いてバランスをとった。
赤茶色に汚れていた畳のふちが、太腿あたりについた。
その箇所はしばらくして真っ赤にただれてしまった。
病院で抗生物質を処方してもらい、ようやく治った。

 

◆マルトクの基本装備

マルトクで一旦染み付いた服や道具は使い物にならない。

現場では時として、靴の上にビニール袋をかぶせたり、長靴を履いて作業するときもある。
上下は作業着で、手にはゴム付きの軍手。
特殊な現場では、肘上まである土木用のゴム手袋や、外科手術用の薄手ゴム手袋をした上からゴム付きの軍手をすることもある。

 ひどい悪臭がする現場でも、セントワークスの方はマスクをしないという。感染症や、その他ウイルスなどでなくなった方の現場に備えて、防護服の用意はあるという。

 マルトクで使った長靴や手袋、掃除機、雑巾、ちりとり、放棄、洗剤などはすべて使い捨てにする。
ただし、作業着は別。その日着た作業着だけを分け、三回以上洗濯する。

 

◆空前絶後の臭い、死臭

ネコの死骸はネコのおしっこの臭いがする。
イヌは、野犬、獣のような独特な臭い。

 魚屋や鶏肉の、内臓類が腐ったような腐敗臭のとも違う、強烈な臭い。
梅雨の時期などは、現場が見えるところに立つと、もう臭いが漂ってくることがある。

逆に気密性の高いマンションなどだと、匂いが漏れるまでに時間がかかることも…

マルトクの作業をしてから、なぜか2,3日後にふとその匂いが生々しくよみがえることがあるらしい。この業界なら、誰しも経験」があることらしい。

 

◆死臭を振りまきながら歩く

着替えたくらいじゃダメで、三回くらい頭を洗わないと外に出られないくらいの臭いらしい…

 

◆中でウジ虫が蠢く紙パック

マルトク現場にはかならず「虫」が発生する。代表格は「ウジ虫」。

死体にわくウジ虫は、通常よりもはるかに大きい。米粒よりも一回り大きいくらいで、大人の小指くらいの大きさのもいる。
乳白色がかった白で、元気でぴちぴち。

 ウジ虫は、玄関ドアや空気抜きの隙間などから廊下へ這い出し、4階で涌いたものが一階に降りてくることもあるとか。

 セントワークスでは、紙パック交換式の電気掃除機でウジ虫を吸い取ってしまう。

ウジ虫でぱんぱんになったら交換するが、交換したものは、内部で大量のウジ虫が蠢いているため、心臓がドクンドクンと脈打つように収縮を繰り返している。(なお、掃除機は使い捨て)

 ウジ虫は光が嫌いなため、カーテンをバッと開けると、ウジ虫は四方八方へ逃げていく。まるで、床全体が死体のあった場所から外へ向かって波打っているような光景だという。
畳の下や、テレビデッキの隙間などの隙間へ逃げ込むウジ虫もいる。

作業用の長靴の底を通しても、プチプチとした独特の感触が足の裏まで伝わってくる。
ウジ虫から蛹になっても感触は変わらない。
それがハエになると、オゾン発生器という器械を使うため、かさかさした感触に変わる。
まるで新雪の上を歩いてるかのようだという。

 

◆なぜかいないゴキブリとネズミ

死体のあった中心部には、まずウジ虫がいる。
その周りには、白っぽいフナムシに似たダンゴムシのような虫がいる。
さらにその周囲には、ハサミムシ。
主にこの3種類で、たまにでっかいオケラがいたりなどもあるらしい。

ただ、不思議なことに、ゴキブリやネズミはいないらしい…

現場にはネズミのフンやゴキブリホイホイがあったりするので、生前にいたはずだが、一匹たりとも目撃したことはないという。

 

◆黒い塊の襲撃

死後2週間がたった部屋。
ドアを開けた瞬間、銀バエの黒い塊が飛び出してくる。
顔を覆うのが遅かった新人の阿部くんの目、鼻、口に飛び込む。

 死体に沸いたウジ虫は数日するとサナギになり、ハエになり、また死体に卵をうみつけ、ウジ虫に孵る。
銀バエもウジ虫同様、大きさが通常よりはるかに大きく、色もメタリックな緑色をしている。

 

◆秘密兵器にして殺人兵器

「オゾン発生器」は、悪臭の素になる分子を強力に酸化し、匂いのない物質に変化・分解する働きをする器械。

現場の状況にもよるが、作業を行う1,2日前にセットし、夏場に腐敗が進行している場合は、2週間近く使い続ける場合もあるらしい。

 

置く場所は、異臭の発生源となっている、腐敗液が溜まっている場所、あるいはトイレ、キッチンのそばなど。

オゾンは人体にも有害なため、使用中の部屋には、まず窓を開けて、空気を入れ替えてから入らなければならない。

いきなり部屋に飛び込んだりすると、ひどいめまいと吐き気に襲われる。ひどいと、2週間ほど入院しなければいけない場合もある。

そのため、使用するときは必ず、「オゾン発生中。中に入らないでください」という張り紙をドアにはってから稼働させている。

 

◆山盛りの銀バエの死骸

木造の古い一戸建て。死後一週間経過した現場。
オゾン発生器を設置し、数週間後に戻ってきた。

すると、現場の窓がカタカタ動いている。主が死んで誰もいない家。
窓に近づき、ガラス越しに室内を除くと、銀バエがびっしり窓にへばりついていた。

オゾン発生器をまわす際は、まず窓やドアに目張りをする。しかし、古い木造建築だったため、それでも隙間ができていたようで、そこにハエが殺到していた。

 部屋に入ると、大量の銀バエが床一面を覆っている。上を歩くと、新雪をふんでいるかのよう。
オゾンはハエには有効だが、サナギには効かない。
そのため、その家の整理・撤去をした6日後、また室内にハエがびっしり止まっており、またオゾン発生器を設置する羽目になったという。


長いので、次の記事に続きます!

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