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⑫-1『事件現場清掃人 死と生を看取る者』

公募小説の参考文献シリーズ12冊目です!!

この文献も、前回に引き続き、非常によかった(*^-^*)
小説本編にかなり活きそうな予感です!

さっそく、文献情報です。

『事件現場清掃人 死と生を看取るもの』
著者:高江洲敦
発行所:株式会社飛鳥新社
2020年12月4日発行


今回のまとめは長いです!
以下、まとめでございます。



プロローグ 事件現場清掃人の仕事

◆P10 ある事件現場にて

人は亡くなると、夏なら死後1日から2日、冬でも数日で腐り始める。

腐敗は胃や腸から始まり、体内で発生したガスによって遺体が膨張しやがてぐずぐずに溶解した肉と皮を破って体液が噴出する。

いわゆる「腹が割れる」という現象。

目、鼻、口、肛門、体中の穴からも血液や体液が流れ出て、ゆっくりと床にしみこみ、部屋の中には腐敗臭が充満する。

ハエたちは粘膜部分に散乱し、孵った大量のウジ虫やゴキブリ、ハサミムシなどが屍肉をついばむ。(ゴキブリもいる?ほかの文献では見かけないって読んだ気がする…)

死臭は、腐った生ごみや古い油のに臭いを何倍も強烈にしたような、鼻の奥にこびりつく独特の臭気。

 

◆P15 特殊清掃という仕事

防護ゴーグルと防毒マスクは欠かせない。

衣類の上には雨合羽の上着を着用、手にはゴム手袋をし、雨合羽とゴム手袋の隙間は養生テープでしっかりと塞ぐ。

一方、下半身は作業用のズボンのみ。真冬でも大汗をかくような重労働のため、通気性を良くしなければ脱水症状で倒れてしまうためである。

強烈な腐敗臭は、衣服や体に付着するとなかなかとれない。
作業中は手袋をはずすたびに入念に手を洗い、作業後は必ず手と顔を消毒し、一日2回入浴し、清潔を保っているという。

身支度を整え、現場に到着したらまずお清め。
少量の塩と酒を部屋にまき、故人をねぎらう。

 最初にゴミ処理と掃き掃除を行う。
ハエやウジ虫の死骸をうっかり踏みつぶすと、畳をよごしてしまったり、フローリングにこびりついてしまったりする。

屍肉をたべて育ったウジ虫がサナギになったものを踏むと、ぷちゃッという不快な感触が足裏に残る。

ゴミをあらかた片付け終えたら、二酸化炭素を主成分とする特殊な消毒液を部屋の隅々まで噴霧する。

死臭の主な原因は、腐敗の過程で細菌がタンパク質江尾分解して出す物質であるため、薬剤を巻いてそれらの菌を死滅させる。

 

遺体から流れ出た体液や脂、血液、消化液などは、混ざり合い、盛り上がった状態で表面が乾き、固まる。それをスクレーパーで削り取り、残った汚れはスポンジで丁寧に除去。

その体液や血液の塊は、表面を破ると強烈な腐敗臭が漏れ出て、ゴーグルをしていても目が痛くなるほど。

しかしここまでしても、体液や血液が床下にまでしみ込んでいる場合、死臭は消えない。

 

◆P19 鼻をこすりつけ匂いが完全に取れているか確認

すでに別の清掃業者がクリーニングを行ったものの、「まだ臭いがする」ということで依頼がきた。
前の業者は、フローリングの床をふくところまでしか作業をしなかった模様。

家主の許可を得て幅木をはがしてみると、案の定、遺体から流れ出た体液が染みになって残っていた。

部屋の床に畳やじゅうたんが敷いてあれば、ある程度は吸収されるため、それほど広範囲にひろがることはないが、フローリングの場合は、腹が割れて吹き出た体液が、床を伝って部屋中に広がってしまう。

さらに床板をはがすと、床を張るための角材や、その下の1階の天井、さらに柱を伝い、玄関にまで体液が達していた。

このような場合、交換できるものはすべて新品に変え、構造上外せない木材やコンクリは、体液が染みこんだ部分を削り、コーティングを施す。

場合によっては解体することや、全面的にリフォームをすることもある。

清掃を終え、仕上げにもう一度消毒液を噴霧したら、最期は鼻を床にこすりつけるようにして匂いが完全にとれたことを確認する。

 

第1章    誰ひとり忍ぶ人がいない孤独な死

◆P27 人知れず空き家で息絶える


行政から1本の電話が入った。
閉鎖され、長年使われていなかった団地の一室を掃除してほしいという依頼だった。

団地を解体して土地を売却することになっていたそうだが、査定のために現地を訪れたところ、その一室で身元不明の男性が亡くなっていた。

見積もりのために、現地を訪れた。

1階部分は窓やドア、階段の入り口すべてにコンパネが打ち付けられ、一見すると内部に入ることができない状況であったが、人目につかない敷地億の一室だけコンパネがはがされ、誰かが出入りしていた形跡があった。

 

室内に入ると、死臭と食べ物の腐敗臭に加え、糞尿の臭いに襲われる。

原因は、便器からあふれた大便と、汚物の付着した雑誌のページ(おそらく用を足した後にふいたと思われる)。風呂場に垂れ流された小便は、白く結晶化して幾筋も残っていた。

さらに部屋の奥には。飲み終えたペットボトル、ビールの空き缶、コンビニ弁当のトレーやおつまみの袋、たくさんの漫画雑誌、成人向け雑誌――それらが人の背丈ほどうずたかく積まれていた。

 

水道もガスも通っていない場所で、ろうそくをともし、なんらかの賃金を得て物を買い、年単位でここに住み着いていたと思われた。

部屋の大量のごみをおおむね片付け、押し入れを開けてみると、床面に大きな穴が開いている。

中を覗くと、床一面にゴミが溜まっている。

おそらく、床下でひっそりと寝泊まりしており、だんだんと上で暮らしていてもばれないことがわかってきたため、空き部屋の方を住処として利用するようになったのだろう。

住人は、玄関で亡くなっていた。

特殊清掃では、玄関まわりが主な作業場所になることが多い。
それは、突然の身体の異変に恐怖を感じ、助けを求めるからかもしれない。

遺体は死後半年ほど経過しており、白骨化していた。

 

◆P30 身元不明の死者「行旅死亡人」

閉鎖された団地は取り壊しが決まっていたため、残留物の撤去をし、遺体のあった場所を水で流し、ある程度クリーニングをして終了。

ゴミの量は2トントラック8台分にもなった。

山盛りの汚物は、雑誌のページが混ざっていたためにポンプで吸うことができず、結局手でかきだすことになった。
大便は時間がたっているとそれほどに追わないが、表面が敗れると強烈な臭いを放つ。

「行旅死亡人」とは、氏名・住所などが判明せず、遺体の引き取り手存在しない死者を指す言葉であり、自治体が火葬を行い、遺骨は無縁仏として埋葬される。

日本では、「空き家」が大きな問題となっている。
人が住まなくなった家は、売るためにはリフォームは必要となり、取り壊して更地にするにも多額の費用が掛かるため、固定資産税をはらうほうがコストが低いと、放置されてしまいがち。

たとえば、2018年に刑務所から脱走した受刑者が3週間にわたって逃亡を続けた事件があった。
犯人は逃避行の最中に空き家を転々としていたそう。そういった事例のように犯罪の温床にもなりかねない。


◆P37 ある高齢者の孤独死

 
安アパートの大家さんからの依頼。
アパートの一室で、一人暮らしの80代男性が亡くなったとのこと。

 大家さんは、果物が入った袋をアパートのドアノブにかけておくなど、店子(住人)をよく気に掛ける人であった。

亡くなった男性は、そういうことはやめてほしいと言っていたため、交流はほとんどなかったそう。

室内に入り、目を引いたのはマリア像。
他人との交流を拒絶するようになる前は、身の上話などをすることもあった。
故人は、10代で丁稚奉公のためにひとり家を出て、旅館で料理人などをして各地を転々とした末、このアパートの移り住んだのだという。

孤独死の場合、遺族がいなければ部屋の原状回復にかかる費用は大家が負担せざるを得ない。
仮に遺族がいたとしても、引き取りを拒否されることがあり、誰も費用を払うことができなければ、結局は大家が負担することになる。


◆P40 あるリゾートマンションの悲劇

現場は1980年代のバブル期、温泉地に建てられたリゾートマンションの一室。
依頼主は、マンションの管理組合。
室内には生活ごみが散らばり、高齢者用のおむつが脱ぎ捨てられ、散らばっていた。

収納スペースからは、古いゴルフバックやオーダーメイドのスーツが出てきて、かつては裕福な生活を送っていたであろうことが伺い知れた。

 

◆P44 中年男性の孤独死

特殊清掃の現場で、特に多いと感じるのは40~50代の中年男性の孤独死である。

さらに、親族と疎遠の場合、「火葬の費用は出せない、財産は放棄するからゴミとしてすべて処分してほしい」と言われるケースが大半だという。

 

◆P46 生活習慣の乱れが孤独死を招く

中年男性が孤独死した部屋には、ビールの空き缶やコンビニ弁当のゴミが散乱していることが多く、体調が悪くても市販薬で一時しのぎをするということがよくあるよう。

孤独死における死因で最も多いのは病死。

心筋梗塞や脳溢血などによる発作で突然死することもあれば、持病が悪化したことで日常生活を送ることが難しくなり餓死するケースもある。

現場の遺体は警察が検死のために搬出するが、残された状況から死因が推測できる場合もある。

たとえば、糖尿病やアルコール依存症を患っていた人、内臓系のがんを患っていた人などの遺体から漂う腐臭は独特。

糖尿病は、流れ出た血液がなかなか凝固せずに、床一面に広がる。

遺体のそばに血で染まったティッシュが転がり、鮮血が飛び散っているのは、高血圧症で鼻の奥の動脈が切れたため。

 

◆P47 人を“殺す”部屋の共通点

特殊清掃の現場は、例外なくじめじめしていてかび臭く、壁面にはカビによって生じた黒い斑点がある。

 

◆P54 新型コロナウイルスがもたらすもの

社会不安が高まると、自殺と言う形で亡くなる人が増えると予想される。
著者の体感では、自殺する人の大半は、個人や中小企業の経営者である。


次の記事に続きます!!

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