【わたしのキャリア(番外編)】今までで一番尊敬していた人
わたしのキャリアの話。番外編。
銀行員時代を振り返ってみると、色々な方にお世話になった。中でも思い出すのはド新人の頃お世話になった支店長だ。仕事を教えてくれたとか、心に響く名言を聞かせてくれたとかいうわけではないが、思い出す顔はいつだってとびきりの笑顔だった。
夕方になるとふらふら1階に下りてくる
銀行のカウンター業務は15時に閉店した後が忙しい。1時間くらいはみんな雑談をすることなく黙々と事務処理に励むのだ。16時くらいになると、忙しさが和らぐ。支店長は、そんな頃を見計らって執務室から1階へと下りてくるのだった。
私たち新人だけでなく、パートの女性陣や主任、課長といった管理職の人たちと、どうでもいい話をしてはガハガハと笑っている。支店長はみんなから好かれていた。(特にパートの女性陣から絶大な支持を得ていた)新人の頃は「支店長って暇なのかな…」などと思っていたが、後にこれが支店長の仕事の一環であることを知った。支店長は、人をよく見ていた。
とにかく怒らない
わたしが仕事でミスをして落ち込んでいたとき、廊下で支店長とすれ違った。
支店長「◯◯ちゃん!ちょいちょい(←手招き)コレあげる!」
支店長から手渡されたのは、某人気キャラクターのマグカップだった。窓口で大口入金をしてくれたお客さまに渡すノベルティだ。欲しくても貰えるモノではない。
わたし「えっ、良いんですか?」
支店長「いいよ〜!あ、でも勝手に取ったと思われたら困るな!」
そう言いながら、支店長はマグカップの箱にデカデカと自分の名前を書いてくれた。
わたしがミスをしたことは耳に入っていたかもしれない。でも注意するどころかそれに触れることすらせず、元気づけてくれたのだ。
もっと驚いたことがある。
配属された支店は男性がほとんどで、飲み会が多かった。飲み会の翌日、ある先輩が連絡なしで遅刻してきた。(前日飲みすぎてへべれけになっていた)課長は「アイツ!何やってんだ!」と怒り心頭だった。2時間以上遅れて先輩が出社してきて、支店長に謝罪したとき、支店長はこう言った。
支店長「ははは!若いっていいなぁ〜!おまえ、今日お客さまとのアポはあるのか?」
先輩「今日はありません…」
支店長「それなら、一回帰って、シャワー浴びて髭剃ってこい!そんな顔でお客さまの前に出られないだろ」
支店長は、とにかく怒らない人だった。
支店長の仕事の流儀
支店長と仕事の話をした記憶はほとんどないが、ひとつだけ仕事する上で心がけていることを教えてくれたことがある。
「俺は、自分がやられて嫌だったことを部下にはしない」
銀行の営業マンは、常に数字のことで上司に詰められているイメージがある。「おい、お前今月あといくらやるんだ?材料(見込み客のこと)はあるのか?」
支店長がそうやって部下に詰め寄っているところをわたしは見たことがなかった。しかし支店の業績は優秀で、何度か表彰もされた。営業部のエースが後輩を指導してバンバン契約をとっていたのだ。先輩は「上から色々言われない方がやりやすい」と言っていた。相性がよかったのかもしれないし、支店長が営業部の面々の個性を見抜いて、あえてそうしていたのかもしれない。わからなかったけど、支店長の手腕だったのだろうと思った。
雑談力で天下をとる
支店長は、年齢的には最後の異動になるであろう辞令で、超大型店へ異動していった。栄転である。みんな寂しがった。
送別会ではどんちゃん騒ぎでとにかく楽しかった。みんな支店長が好きだったのだ。
ある先輩が、「支店長は立ち回りで出世した人だ」と言っていた。言い方が皮肉っぽいなと思ったが、きっと若かった頃はお客さまや上司に好かれて良い評価をもらっていたのだろうと思った。とにかく人と距離を縮めるのが上手い人だった。
飲み会ではまぁまぁの下ネタをぶっ込み、女性職員から「支店長、セクハラです」といつも怒られていたが、それもなんとなく許されていた。キャラ的に。
わたしは支店長から、仕事以前に「人間」を学んだ。ほんとうに、ほんとうにお世話になりました。
このnoteを書いていて、当時のことをいろいろと思い出した。書くのっていいな。支店長(今は支店長じゃないと思うが)元気かなぁ。
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