全ての親に伝えたい育児と発達の話②発達障害はもう障害とよばない医学的事実。 Neo発達外来シリーズ


Who is ママ友ドクター?? 
三人の子育て中の小児科医で、自閉症を見つめ続けて35年以上(!)の専門家。もともとは大学病院所属の小児科専門医・小児心身症学会認定医・子どものこころ専門医として発達専門外来を受け持つが、2020年の産休をきっかけに、より世間のママに寄り添いながら発達特性のある子供達を多く伸ばしていくため【ママ友ドクター】という活動を開始。セミナー、You Tube、SNSで「ためになるママ会」「Neo発達外来」などを行う。
プロフィール略歴など詳しくはコチラをご参照ください。 コチラ

さて、前回のNeo発達外来#1では全ての子供を伸ばせるたった一つのスキルが結局は【子供の自己肯定感を意識した子育て】だったという、あまり目新しくもない記事でした。今回はさらに、いわゆる【発達しょうがい】の子供を育てる時に不可欠なスキルをご紹介します。

「子供の発達障害は障害ではないし単なる個性とも違う」事実の再解釈と理解


私は小児科専門医として発達の専門家として大学病院で最重度の自閉症から発達に目立つ特徴もない子供まで診てきました。
なので、発達障害は個性です!なんて曖昧なことは言いません。特性が個性と言えるほどまで伸ばせたり薄めることはもちろん可能です。
ただ、専門家として言える事実とそこから見えてくる子育ての大事なこと、二つ目をお伝えします。


神経発達症〜Disorderを障害に翻訳した功罪〜

2013年から世界的に用いられる診断基準(精神障害の診断統計マニュアル第5版DSMー5)が出された際、発達障害というグループで括られていた諸々の診断名から”障害”という単語を医学的に使わない方針になったのです。例えば自閉スペクトラム障害を自閉スペクトラム症、注意欠陥多動障害を注意欠如多動症…のように。
2019年にはWHO世界保健機関が作成している国際疾病分類が第11回の改訂版(ICDー11)という30年ぶりに大幅改訂が決定し、2022年2月正式発行されました。ここの基準でも同様で、〜障害とういう単語は〜症とし、極力使わない方向に。発達障害への大幅なイメージ変更を狙っているのかなと感じています。

が、残念ながら世間ではまだまったくと言っていいほど普及しておりません。

そもそも、医学英語の誤訳から始まり日本で言う発達障害は必ずしも皆がイメージする”障害”ではない。


英語では発達(Development)の仕方がイレギュラーという状態:Developmental Disorderと表記しますが、このDisorder(順序が異なる、順不同の意)がDevelopmental Disabilityと混合し翻訳されてしまったそうです。
Disabilityはもともと機能がうまくいかない、例えば生まれつき目が見えないとか手足が不自由、不可逆的という状態を表します。

もちろん、誤訳によってわかりやすくなった為か、『障害のある人への配慮を、障害のあるなし関係ないインクルーシブな環境を!』といった認知や政策が進んだのは事実だと思います。

ただ、やはりDisorderであって決してDisabilityではない子供たちなので、《発達障害》というフレーズは子供たちを適切に表していないという意見は、かなり前から現場スタッフから出ていました。
そこでようやく、世界標準の一つであるアメリカ精神医学会の診断基準は13年ぶりに改訂され「DCM-5」として2013年から、2019年に世界保健機関WHOが出す診断基準は約30年ぶりに「ICD-11」と改訂が決定し、発達”障害”という言葉は用いずに神経発達症、自閉スペクトラム症…という診断名にしていく方針になりました。
もう、曖昧もOK、はっきり決めなくてもいいから、多動症の特徴をもつ子も自閉症の特徴のある子もみんな同じグループでまとめ、まず子供達をどう伸ばすか考えていきましょう!という流れになっているのです。

(2022年5月段階では厚生労働省がいつからICD11を採用するかは未定です)

「子供には細かく診断名をつける必要がないし障害という言葉を当てはめることもすぐには必要ない。まず家で伸ばせることをどんどん進めるべきではないか」という現場の声がやっと届いたのです。

【障害】という単語の破壊力…

障害のある子かも…と思って見つめていた我が子が障害ではないと言われたとき、親の心にはどんな変化か起きるでしょうか。我が子への視線はどう変わるでしょつか。
言葉が持つ力はとても大きく、子供を育てるにあたりその影響力に振り回されないよう気をつけなければなりません。
どんな子供であっても、親が描く既存の”いい子像”や"理想の子供像"のカテゴリーに無理やり当てはめないこと。
そうしないと、カテゴリーからはみ出した途端に、我が子の全体像が見えなくなり嘆く親を私は外来で沢山みてきました。

例えば発達特性のある子供は、いわゆる普通(定型)と言われる子供と異なる思考や行動パターンが見られます。それを、多数派ではない少数派思考、平凡ではない非凡な行動と表現したらどうでしょう?発達の”障害”ではなく、特性でAI時代に適した”人材の素質”であるという表現にしたら、どうでしょう。

多動は多動力、過集中は過集中力、注意散漫は旺盛な好奇心。
ママの我が子を見つめる目が輝き出します。

私は、こうした内容のアドバイス何度でも外来でお話ししています。
子育てでつまずきそうな時、何らかのマインドシフトを繰り返し行えるかどうかが、発達の特性の有無は関係なく子供を伸ばすための重要な鍵となるのです。
その上で、言葉を伸ばしたり困った行動を変えていくにはどんな声がけ働きかけがいいか個々に応じて専門の育児アドバイスをしております。(10年以上、診察室での診療だけでなく療育現場で直接我が子を通わせたりしながら常にアップデート続けております)


既存の言葉で表される常識で我が子を振り回さないでほしいです。
子供たちが生きる時代は、昭和や平成にはないほどの変化を迎えようとしています。


子育てウェビナー、個別相談、無料相談会ライブなども行っております。活動にご興味ある方
はコチラのママ友ドクターのホームページまで

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