見出し画像

すききらい。

私たち夫婦は、食事に気をつけないといけない身でありながら「食べること」は大好きだ。それでもやっぱり「好き嫌い」はある。この年齢(50代)になっても。世の中多分、まったく好き嫌いなく何でも食べられますという人の方が、今は少ないのではなかろうか(以降、一般的な「食べ物の好き嫌い」の話です。アレルギーや体質に合わないものがある人のことではありません)。

個人的に思うことだが、男性であまりにも好き嫌いが多すぎると、子どもの頃からママが「あなたは好きなものだけ食べていればいいのよ」と、お魚嫌いな息子のために自分たちとは別のお肉のおかずを作ってくれていたような育ちなんじゃないかと・・・(すごい偏見だが)意地の悪い見方をしてしまう。

きっと「文句があるなら食べなくてもいい!」と、皿を下げられた経験などないんだろうなと。実際に同世代でこういう人もいるのだよ周りに。

女性の場合は、好き嫌いがあってもひと昔前までは世間も寛容だった気がするのだが、最近では「ワガママ」と言われてしまいそう。

まあ確かに、イイ歳をした大人の女性が「ニンジンとピーマンと、鶏皮と、青魚と、あとお漬物がキライなんです~」と言ってるのを聞くと、オバサンとしては「まあ♪味覚がお子さまなのね~」という意地悪な感想を抱くしかないのだが。

50年近く前に、一世を風靡した「黒ねこのタンゴ」という曲があった。そのB面「ニッキ・ニャッキ」という歌の歌詞にはこうある。

好きなもの ラーメン、玉子焼き、天ぷらそば、コロッケ、ジュース、ミルク、シュークリーム、チョコレート
キライなもの 赤いにんじん、玉ねぎ、お魚、ごぼう、なす、鶏の肉

これは昭和40年代の子どもの味覚なのだろうが、大人になっても好き嫌いが多すぎる人って、こういう味覚のまま大人になっているのかもしれない。

大人になっても食べられないもの

食の嗜好というのは不思議で、子どもの頃に食べられなかったものが大人になるとおいしく食べられるようになるのは誰でも経験していると思う。

私も子どもの頃は魚が嫌いだったり漬物がイヤだったりしたものだが、今では魚も漬物も自分で料理するようになった。イカの塩辛やピータンというクセのあるものも、お酒を飲むようになってから自然と食べられるようになった。

とはいえ、この年齢になっても「どうしてもダメ」というものがまだあるのも事実。

私が50を過ぎてもどうしても食べられないものは、メロン、ウニ、ホタルイカ、茄子の漬物。メロンはどんなに高いものを食べさせてもらっても「瓜」としか思えない。同じ瓜系でもスイカやキュウリは好きなのに。ウニは食べると絶対にリバースする。茄子は大好きだが、漬物になった時の食感がイヤ。ダンナが食べられないものは、生魚、ひじき、らっきょう、パクチー。香りの強いものが苦手なようで、ニンニクも効きすぎていると後で具合が悪くなる。

どうやら大人になると「好き嫌い」が細分化されていくらしい。子どもの味覚だとストレートに「ニンジンが嫌い!」となるのだが、大人になると嫌いなモノが複雑になってきている。

たとえば生のトマトやセロリは嫌いだけどソースやスープになると大丈夫とか、ステーキみたいなカタマリ肉はダメだけどハンバーグになると好きとか、味噌炒めや味噌煮、味噌ラーメンはダメだけど味噌汁は好きとか(これは私のダンナさま)。元のカタチそのままのホタルイカはダメなくせして中華街の飲茶で出てくる鳥の足を八角で煮たやつは好きとか(これは私)。

他人サマから見ると「単なるワガママ」にしか見えないのだが「別にニンジンが嫌いなわけじゃないの、煮物やカレーに入ってるニンジンは大好きなのよ、ただ、生のニンジンは馬になったような気分になるからイヤなのよ」的な言い訳をしたくなるのが大人なんだろう。

嫌いなものがあるのはちょっと恥ずかしいので…

一方、食材そのものに嫌いなものが多い人や大人になっても好き嫌いが激しい人の中には、「だって、食べられないんだもん」「子どもの頃から、これだけは無理なんだもん」とハッキリ言える「強さ」がある。

昔、一緒に仕事をしていたライター(当時30歳女性)の話。飲食店取材に行き、撮影した後の料理をお店の方が「どうぞ食べてください」と勧めてくれたのだが、その料理に入ってる食材で彼女のキライなものがあったらしい。

その時彼女は「あ、ワタシこれ食べられないんで」と店の人の前で屈託なく宣言し、同行しているカメラマンに全部食べてもらったそうだ。その話を聞いた時には「いやあ・・・強いなあ」とため息をついたものである。

私はカラダに似合わず当時から小心者だったので、嫌いなものを出されたり、ご馳走してくれるところで苦手なものが出てきたとしても「せっかくお店の人の好意だし」とか「これが食べられないっていうのも大人げないよね」などと思ってしまい、その場は何とか食べていた。

だからこそ、あれが嫌い、これは無理、と言えて、なおかつ周りから許されてしまうようなキャラクターはうらやましかったのだが。

とはいえ、そんな「ワガママ」も許されるのは若いうちだけ。

若いお嬢さんだから「形があるお魚って目が合うと怖いじゃないですか~」とか「ホルモンって気持ち悪くてダメなんです~」「ブロッコリーって青臭くて虫になってみたいで」と言っても「そうだよね、女の子だもんね」と許してもらえるかもしれない。でも、50も過ぎたオバサンが「ごめんなさーい、ワタシこれ食べられないんですぅ」と言ったところで、世間様は「イイ歳して何言ってんだよ」と冷たい目でしか見てくれないのだ。

なので、私は嫌いなモノがあるのを悟られないようにと人一倍量を食べたり、できるだけ何でもうまそうに食べたりするのである。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?