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「うつ君 と げん君」 Let them be...just as they are.

これは11年前に書いた物語。
うつ君 と げん君

鬱病は風邪のようなもの、と言われる。
そして、私は思う。
鬱という現象は、あるメッセージを持って現れる風のようなもの。。。

鬱を排除したり、治そうとするよりも、鬱の持つ
コトバ、音、香、意味に目を向け、耳を傾ける。

すると心の扉が開き
そこに「新しい風」が吹いてくる。

それは、一元の風。
良い とか 悪い とか の二元ではなく。
良い も 悪い もない 一元の風
ありのまま に そのままに。。。

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「うつ君 と げん君」 

私の家にはふたりの男の子が住んでいる。
うつ君とげん君。
この二人は私が呼んでも、現われない。
思わぬ時に現れる。
 
うつ君が現れる時は、たいていは曇りの日。
元気がなく、疲れきって、何もやる気が起こらない時に現れる。

うつ君がいると、さらに元気がなくなり、
やらなければならないことばかりが頭に浮かび、
出来ない自分に苛立つ。

その原因が、うつ君にあるような気がして、うつ君を追い出したくなる。
うつ君を追い出す為に、明るい音楽を聴いたり、栄養ドリンクを飲んだり、
無理やりに体を動かしてなんとかしようとする。

しかし、私が追い出そうとすればするほど、
うつ君は大きくなり、家の真ん中に居る。

 
げん君が現れる時は、たいていは晴れの日。
元気に、ばりばりと仕事をこなすことが出来る。
げん君が長くいてくれると仕事がはかどるので、
いつもの時間よりも長く働く。
しかし、私がげん君に、長くいてもらおうとすると
げん君は小さくなって、家のどこかに隠れてしまう。
 
ある曇りの日。うつ君がリビングの椅子に座っていた。
私は、うつ君をじっとみつめた。

彼は恥ずかしそうに、もじもじしている。
よく見ると、色白で、目鼻立ちがはっきりとし、
手足も細く、肌も美しい。

「なにか話したい?」私は彼に声をかけた。
彼は小さな声で
「僕を追い出そうとしないで。
 僕はあなたを守りたいんだ。
 僕はあなたと仲良くなりたいだけなんだ。」と言った。


私はうつ君の手を取った。
とても冷たい手だった。
私は彼の手を優しく握りしめ、肩に手をまわし、そっとハグをした。


すると私の体が温かくなり、私は眠くなった。
そして、うつ君と一緒に泥のように眠った。


うつ君はそれからも、寒くなると私の所に来て、
「手を握って、抱きしめて欲しい」と言ってきた。


うつ君を抱きしめると両手がふさがって何も出来ない。
だから、夕飯はピザを頼んだり、外食したり、掃除や買い物をさぼった。


家族にもうつ君を紹介した。
うつ君がいる時は、やらなければならないことが出来ないことを伝えた。


うつ君のおかげで楽ができるようになった。
よく眠り、よく食べた。


知らないうちに自分は、うつ君のおかげで楽が出来、
守られていることがわかった。


「うつ君、あなたは私を守ってくれてるのね。
 ありがとう。
 あなたが大好きよ」
とうつ君に告げると、うつ君はみるみる間に小さくなって、
隠れてしまった。
 
次の日、げん君が現われた。
げん君がいると、たまった掃除、買い物があった言う間に片付いた。
部屋の中が見違えるほど明るくなった。


「げん君、あなたがいると力がわいてくる。
 ありがとう。
 あなたが大好きよ」
とげん君に告げると、げん君はみるみる間に小さくなって、
隠れてしまった。
 
そして、また次の日の朝、また、うつ君が現れた。
「僕を追い出す?」と彼は聞いた。

私は彼を抱きしめ
「追い出さないよ。
 あなたは私を大切に思ってくれる。
 あなたは、私が働き過ぎた時に現われて、
 私を休ませてくれるね。
 ありがとう。」

すると、どこからか、げん君も現われた。
ふたりは、良く見るととてもよく似ている。


げん君は言った。
「そう、やっと気がついた?僕たち双子なの」


うつ君は恥ずかしそうに
「僕はげん君と違って皆に嫌われてるの」と言った。


すると、げん君は
「実はね、僕ははりきり過ぎて、
 すぐ疲れてしまうんだ。
 でも、自分では止められないんだ。
 だから、うつ君が僕を守るために、
 自分が嫌われるとわかっても
 現われて、僕の代わりにあなたを守っていたんだ」

僕の役目は、守ること」うつ君が言った。


僕の役目は、励ますこと」げん君が言った。


僕たち、ふたりで一人なんだ
 うつげん(一元)、って名前なんだよ。」


「どっちが良くて、どっちが悪いじゃなくて、二人で一人なんだ。」

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それからというもの、この二人は、度々ふたりで現われるようになった。


現われる時は、いつも突然で、私の意志や、コントロールがきかない。
しかし、後になって振り返ってみると、彼らは絶妙のタイミングで現われ、私の力となって励まし、そして優しく守ってくれたことに気がついた。

また、私は、うつ君とげん君は嫌いな言葉と大好きな言葉があることに、
気がついた。


嫌いな言葉は、
うつ君に「げん君のように、元気に、がんばって」


げん君に「うつ君のように、静かで、いい子になって」であった。


すきな言葉は、ふたりとも同じ。
みっつの「あ」ではじまる言葉と
「ご」ではじまる言葉。


ありがとう
あいしてる
ありのままのあなたでいいよ
ごめんなさい」であった。

私達3人はいつも、この「」と「」ではじまる言葉を
たくさん使うようになった。


すると、我が家のリビングテーブルの上の
小さなろうそくの火が
あかあかと燃え上がり、家じゅうを明るくし、
温かい空気で包んでくれる。 

うつげん君は、
風のように私の心に訪れ、
風のように去ってゆく。
私の家は、うつ君とげん君が、自由に出入りする
風の家。

風が強くて寒い日もある。
暑い日もある。


けれど、勇気を出して、心の戸を開いた時、
そこは
ありのままで
そのままの 風の家@HOME

2009 家庭集会にて かざと きみこ


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