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サクセスフルエイジング。

私が非常勤講師をしている大学の科目のカリキュラムでは、前半でエリクソンさんのライフサイクル論をベースに人の『こころの発達』について学んでいきます。
今日の授業は、その人生の締めくくりである老年期について。

エリクソンさん曰く、発達や成長は若い人達の専売特許ではなくて、人のこころは一生涯発達し続ける。
何度も何度も各年代で、こころの危機を乗り越えて、その年代での発達課題をクリアしながら人は成長し続けると。

30才で臨床心理学を学びに大学院に飛び込んた私。
エリクソンさんの理論に初めて触れた時
「あぁ私もまだ成長できるかもしれない!」
と物凄くほっとしたことを覚えています。

当時、1才と3才だった息子くん達の子育てと家事をしながら大学院に行き、本を読みレポートを書き。。。
矢のように目まぐるしく飛び去る毎日。
自分の体力と能力の限界を感じていた。
でも後戻りはできない。
息子くん達を寝かしつけてからレポートがしたくて。
「お願いだから早く寝て!」

やっと寝た息子くん達の寝顔を眺めながら
「一番大切なのは子ども達なのに。何やってんだろぉぉ私。。。」
涙が込み上げてきた。
けど、泣く暇もなくレポートを書いたこともあった。

もともと私には無理だったんじゃないか。。。

そんな私の背中を、エリクソンさんに「大丈夫だよ。まだ進める」と押してもらえた気持ちになった。

今日の授業の内容の老年期のテーマは「統合」と「絶望」人生を締め括っていく大切な作業です。

学生さんからの質問。
「人生を振り返り統合していくって言うのは分かるけど、実際どうしたら統合できるんですか?」

これから対人援助の仕事に就こうと考えている彼らだからこそ、湧いてくる素直でポイントのおさえられた良い質問に、受けた私も嬉しくなった!

夕方テレビを着けると、昨日あった80代の男性が拳銃と刃物を持って、人質と郵便局に立て籠ったニュースが耳に飛び込んできた。
その男性は郵便局だけでなく、その前には病院でも発砲事件を起こしていたと言う。
そして、彼はどちらも自分への対応に対する不満があったと動機を語っているとのこと。
郵便屋さんの対応への不満。
お医者さんの対応への不満。。。

ふと学生さんとの授業でのやり取りを思い出した。
「統合」とは、「悪いことや苦しいこともあったけど、喜びや幸せな日々も沢山あった。沢山の人と出会って一緒に過ごしてきた。掛け替えのない時間だった。自分の人生これもなかなか良いもんだったなぁ」

人生を振り返って、そんな心持ちを気付ける為には、誰かとの対話が不可欠で。
暖かく穏やかで肯定的な誰かとの関係性の中での対話を通して、そんな「統合」の作業を進めていけるんじゃないのかなぁ。と。

そんな老年期にいるおじいちゃんやおばあちゃんに、私達ができることは何かな?
彼らは立ち止まって、自分なりに考えている。
自分達にもできることがあるんだと気付いてくれたら嬉しいなぁ。。。
そんな思い自分の考えを伝えてみた私。

ニュースの男性には社会への不満を消化する機会がなかったんだろぉか。
彼が安心して対話できる相手は居なかったんだろぉか。。。
あんな暴力的なやり方ではなく穏やかで安心した関係は作れなかったんだろぉか。

授業の終わり。
「幸せに年をとれるように今できることを考えてみたい」と話してくれた学生さん。

私も常々、うちのばあちゃんみたいに年を取りたいなぁと考えていた。
ばあちゃんの周りにはいつも人が集まってきた。
大笑いの声と笑顔と美味しいご飯が満ち溢れていた。

でもそれは、いきなりそぉなった訳ではなく、ばあちゃんがそれまでの人生で、相手への思いやりと男気に溢れる姉御肌と根っからのユーモアで関係を作り上げてきた賜物だったに違いない。

まだまだ。まだまだ勉強中。
まだまだ。これから成長中。
一生涯。発達中。

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