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映画『ツルネー始まりの一射』から想う

ずっと観たかったアニメの映画が公開されました。

コロナの前の年の令和元年。京都アニメーションの放火殺人事件が起りました。犯人は自身の作品を盗作されたと一方的に京都アニメーションを憎み、沢山の人がいるビルの一階にガソリンを巻き放火したと当時、ニュースで知りました。

アニメクリエーターになるのが夢だった人の話。作品を心から愛し、自分の仕事にプライドを持って活躍していた人の話。

私は災害や事件で亡くなった人の背景や人柄を紹介している番組をなるべく沢山観るようにしています。

私には遠い遠い誰かの生涯だけれども、生きている私達が少しでもその災害や事件を生かして学んでいくことが、少しでもその誰かの供養になるように。悲しくて目を背けたくなる出来事に向き合うようにしています。

テレビで観た京アニ事件の特集は、皆さんが作られたアニメの明るく華やかな世界と、あまりに対照的な、真っ黒に焼け焦げた焼け跡の現実が印象的で、本当に苦しく私の胸にも突き刺さり、何だか夢も希望もなくなったような・・・。無力感に苛まれた。


その京都アニメーションが作っていたのがアニメ『ツルネ』

弓道はあまり動きのあるスポーツではありません。

見ていると、ただ弓で矢を放つだけ。

アーチェリーのようにポイント制でもなく、ただ単純に『当たったか、外したか』

誰と戦う訳でもなく、ただ自分と向き合っていく。

究極にシンプルだからこそ、自分の『心』や『身体』の状態の機微な動きや変化も影響する。簡単なようで奥が深く、そして難しい弓道。

弓道を通して仲間と一緒に、揺れ動きながら成長していく子ども達の様子が優しく描かれている『ツルネ』を見て、こんな優しく美しい作品が作れるクリエーターの皆さんはきっと優しく愛のある人達なんだろうなとぼんやり考えながら、放火事件より前に放映されていたテレビアニメを観ていた私。


物語の舞台は高校の弓道部。今回の映画では弓道を始めるきっかけになった『始まりの一射』を中心に話しが展開していきます。

心の状態が大きく影響を受ける弓道。高校生という多感な時期。団体戦5人で並んで矢を射る立ち位置ですら感じ方は人それぞれ。

作中、主人公達には気になることがあり5人がそれぞれスマホを見ている。弓道や試合のことも上の空になっている男子部員を女子部員がたしなめるシーン。男子部員はその後、その女子にスマホを預ける。そして、この局面を仲間と一緒に乗り越えることで大きく成長していきました。

ただシンプルに「今、目の前の相手を大切に想う」

相手の様子に目をやり、相手の話に耳を傾け、相手のことをおもんばかって心を沿わせる。

そうすることで気づけ、感じられる仲間(相手)との絆やあったかい繋がり。


中高生6年間ずっと弓道を続けてきた息子くん。

大学でも弓道をするのだと、憧れの先輩のいる大学に進学した。

あぁ、こんな素敵な仲間との体験をしっかり中高生の時に経験できたから、大学でも毎日、弓引きを続けていられるんだと、映画を観ながら合点がいった。途端に。。。

そんな息子くんは何て幸せなんだろう。そんな彼に出会ってくれた仲間達に感謝してもしきれない。そんな気持ちになり、嬉し涙がどんどん溢れこぼれ落ちた。


エンディングロール。沢山の名前がスクリーンを流れていく。

この名前の一人一人が、大切な仲間との別れの悲しみを乗り越え、この沢山の仲間と共にこの映画を生み出してくれた。そう思うとまたまた涙が溢れてくる。

はじめてこんなにじっくりと、エンディングロールを噛みしめた。

もう映画が終わっているのにボロボロ泣いている私を、隣の旦那さんが驚いてのぞき込んだ。


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