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日曜日、夜、雨の渋谷。


3ヶ月前、わたしはあなたとの決別も込めて髪を茶色に染めた。
1ヶ月経った頃、似合ってないな、と思った。 


 
ひな祭り。女の子のお祝いの日だ。
もう「女の子」としてお祝いされる年でもないが、年に1度の【女の子のお祝いの日】、久しぶりに1人の夜だったのがどうしても寂しくて、遅い時間も対応している美容院を予約した。


『黒髪ストレートが好き』


そういったあなたの呪縛から離れようと思って染めた茶髪は、正直あまり似合わなかった。茶髪派には「似合ってる。黒にしないで」と言われたが、喜んだふりをした。


これは違う。 あなたの呪縛じゃない。違うよ、と自分に言いながら、美容師さんに「透明感のでる黒っぽいろにしてください」といった。
でも、シャンプーの時、閉じた瞼には【黒にしたんだ】と笑うあなたが写った。
シャワーが暖かったので、ちょっとあったかくなった気がした。




サラサラの黒髪になった。
自分に投資できた気がして、帰りの渋谷はいつもよりキラキラしてるし、目の前の道は私のために用意されたみたいに開いている気がした。


明日、あなたに会う。髪型が変わっても基本的に何も言わない。
私だって、あなたに気に入ってほしくて黒にしたわけじゃない。
でも、悲しいけど、早く会いたくなった。
いつもの渋谷と同じ渋谷のはずなのに、いつもの渋谷とちがう気がした。




ひな祭りの渋谷は雨。


目の前に派手に酔った女の子が3人歩いていた。カラオケ行くよ!えーあんた絶対死ぬじゃーん!あはは!素直に楽しそうだった。日曜の夜。友達と飲んでカラオケ。きっと私とは違う、キラキラの渋谷が彼女たちにも見えてる。


すれ違った女の子は、サッと涙を拭っていた。顔は歪んでいなかったが、涙を拭いたのは一瞬でも明らかだった。振り返ると、早歩きで颯爽と風を切っていた。そうか、あの涙は今の彼女をつよく歩かせているのか。どんなふうに彼女は渋谷を歩いたんだろう。



ひな祭り、雨。夜の渋谷。

女の子の数だけの『渋谷』。

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