地方ブランドが大手メーカーの事例を真似してもうまくいかない理由について。
皆さん、こんばんは。桜井です。
最近、未顧客理解・パーセプションなどの消費者の意識・行動変容系の本を読んだこと、有名ブランドの売上をつくっている裏側を覗かせてもらったこと、実際に直面している地方ブランドの支援業から気づきを得たことをここに書き残しておこうと思います。
マーケターと名乗るのであれば必読であろう2冊はこちらです(どちらも名著です)。
前提:マーケティングとは人間理解
私は現在、静岡を拠点に全国の地方ブランドのお手伝いをしています。その傍ら、自分たちのブランドの立ち上げも行っています。支援業でも実業でも共通するのは「結局商品を手に取ってくれるのは機械(AI)ではなく人間である」ということです(至極当たり前のことですが)。
つまり人がどんなことで意識や行動を変容させるのか?がわからない限り、商品に興味を持ってもらえないし、手にも取ってもらえない。ましてや購入など検討してくれないわけです。
となるとマーケターは人間理解に努めなければならないわけですが、本屋さんやSNSの実態はというと、マーケティングフレームワークや図解、事例などがもてはやされています。これらをインプットしたことでマーケティングができるようにはならない、というのに。
詳しくは富永さんのnoteに解説されていらっしゃるため、ここで深く説明することは割愛しますが、マーケティングができるようになるためには大きく分けて2つの溝があります。
1つ目は、(あらためてですが)マーケティングの本懐は「人間理解である」ということです。
マーケティングフレームや論理的思考を手に入れたところで、それだけではマーケティングを経営に実装することはできません。
それらはあくまでもマーケのアプリ(上記の図の上から2つ目)の話であり、本当に必要なのは仕事のOS・マーケのOSである「教養/リベラルアーツ」「人間理解」が根底になければならないからです。
2つ目は、上記の枠組みが「わかる」と「できる」には天と地ほどの差がある、ということです。さらに「(課題を与えられて)できる」と「(課題を自ら見つけて)できる」にも同じように天と地ほどの差があります。
概論として大筋が理解できたとしても、各企業が抱えている経営課題に概論を落とし込むことはとても難しい。わかっていてもできる、という領域まで踏み込むには多くの時間がかかると感じています(無論、私も修行中です)。
さらに、「課題」とは与えられている状態でスタートすることはほとんどなく、多くは課題を見つけることからはじまるため、利害関係者の対話の中から課題を見つけ、優先順位を絞り込み、対話を通して合意形成をし、方向感を定めていく、という一連の流れをとる必要があります。
また、マーケティングの実装とは単なるロジックの理解ではなく、高いコミュニケーションスキルが求められるとも言えます。
以上の前提条件から、図解をブックマークするだけではマーケティングをできるようにはならないというわけです。
CEPを増やす実例(寸又峡サウナ)
私の大好きな本である「未顧客理解」ではCEP(カテゴリーエントリーポイント)の設計について丁寧に解説されています。
これまた私が大好きな池田さんのnoteからCEPの説明を拝借します。
図で表すと↓のようなイメージ。生活文脈を理解して新しいCEPの仮説を立てていきます。
例えばサウナ。現在、私自身も事業に携わっているため消費者の行動は注意深くみているのですが、「用途・便益競合・行動」のそれぞれの接点から考えると、以下のような競合が浮かび上がってきます。
※私が携わっている寸又峡サウナ、サウナ寸又峡-TripTrain-(静岡県北部の秘境温泉にあります)を例にしています
直接競合のサウナだけではなく、「気分転換・ストレス解消・心身のデトックス」を望んでいる消費者や、「サウナを楽しむことが手段ではなく目的」になっている消費者=旅行ユーザーも取り込めるのではないか?と仮説が広がり、同時にターゲットも広がっていきます。
それを踏まえて、オルタネイトモデル(こちらも未顧客理解リスペクト)に当てはめると、以下のような行動を仮説立てしコミュニケーションを取っています。
上記の「きっかけ」の数を増やし、いかに報酬(=ベネフィット)を想起させ、欲求(=インサイト)と抑圧(=バリア)のせめぎ合いを制し、行動まで導いていくか?がマーケターの腕の見せどころではないかと思っています。
成功事例の疑問
先日、マーケ関連のニュースを漁っていたところCHOYA梅酒の新業態についての記事に出会いました。
記事を読む限り、うまくいっている事例のように見受けられたのですが、私には一体なぜこの事業がうまくいったのか?についてよくわかりませんでした(もちろんすべてを書いているわけではないので完全理解するのは難しいと思うのですが)。
もう1つ、UNOが出しているフェイスカラークリエイター。
パーセプション(認識)チェンジの事例として取り上げられることもある事例ですが、私見としては、「男性用BBクリーム」→「第一印象をよくしてビジネスの成果を高めることができるツール」としてパーセプションを変えたのではないかと考えています。
確かにその通りだなぁと思う一方で「いや、確かにそうだけどどうしてパーセプションを変えることができたんだ?」という疑問を持ちました(ロジックはわかる。でもこの広告投下量と配荷を真似できるのか?)。
同じように地方ブランドが化粧品やBBクリームを同じような提供価値に変えて販売したところでうまくいくのか?というとかなり難しいだろう、ということです。
このように、大手メーカーの事例を見れば見るほど、地方で実装することの難易度の高さを多々感じています。
結局必要なのは配荷と営業
地方でCEPを増やしたり、パーセプションを変える取り組みを行う際に大きな壁となるのが配荷と営業です。大きくいうとフィジカルアベイラビリティー。
売上の変数で言うとした↓(ココ=配荷)です。
地方ブランドの多くは認知率が低く、かつ販路も脆弱であることが多いです。そのため、まずは「Web広告をやりましょう!」や「SNSを運用してリーチを増やしましょう!」と、Webマーケターと呼ばれる人たちが提案をするのですが、それでは売上は伸びないと考えています。
認知率を上げるために大切なのは「実体験」および「リアルな行動」なので、広告や投稿などのデジタルでの体験ではインパクトが出せない。
特定の状態になってもらうにはまず「体験/行動」が必要。なぜなら「体験/行動」があるから「(特定の)状態」になることを消費者は理解するからです。
だからこそ、地方ブランドがまずやるべきは配荷と営業活動になるわけですが、これを愚直にできている先は案外少ないように思います。
ついついブランドコンセプトに磨きをかけちゃったり、認知という名の広告を垂れ流しちゃったり、誰が見ているかわからないプロダクトLPを作ってしまう。それ自体にまったく意味がないとは言いませんが、ブランドの認知がない中でそれらに時間とお金を使うのは投資対効果がよくないと思います。
まず、ターゲット消費者が手に取る場所に商品・サービスがあること。これこそが地方ブランドが大手メーカーを真似る最重要なポイントだと考えています。
そうなるとこんな声が聞こえてきそうです。
戦い方はいろいろあると思います。同プロダクトでも異なるベネフィットを提供したり、ドミナントで特定エリアで小さく買っていったり、地元ブランド同士でタイアップして購入を増やしていったり、、などなど。何も大手と同じ土俵で同条件で戦うだけではないはずなので。
アカデミックに、かつ実戦的にブランド戦略、マーケティング戦略を学んできたからこそ言えるのですが、配荷と営業が強いブランドはめちゃくちゃ強いと思います。
MVV・ブランドコンセプトを決めることはとても大切ですが、地方ブランドが数字を動かすには配荷と営業に力を入れよう、大手メーカーに学びながら消費者との接点構築を進めよう、と言う話をまとめてみました。
地方ブランドが強くなり、多くの消費者に商品・サービスが届くことを祈っています。私自身もこれからも地方のために尽力していきたいと思います。
※ブランド支援のご相談はお気軽にどうぞ!(TwitterDMでもHPでも)
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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