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思考の手綱を握るということ

今回は「なぜ思考」に並ぶもう一つのティッカーテープ思考、「次はなに思考」についてご紹介します。

ティッカーテープ思考② 「次はなに思考」

ティッカーテープ思考が未来に向けられているとき、「次はなに思考」が発動します。これは今の状況から推察される未来に関する予測の思考です。来るべき未来を想定することでふさわしい行動を起こすために備えるというもので、多くの方にも馴染みのある考え方だと思います。

しかし、この思考にも、負の側面があります。冷静に考えればありえないような危機的未来を妄想してしまうことで、不必要な不安に駆られ、現実に具体的に対処するエネルギーを消耗してしまう危険があるのです。誰しも一度くらい、壊滅的な連想思考の罠に囚われた経験があるのではないでしょうか。

再び、私の実体験の例を見てみましょう。
(具体的なイメージが付いている方は、次の章までスキップしてください)

不安は雪だるま式に増えていく

まだ社会年次も浅かった頃のお話です。私は、あるWEB調査の案件を担当していました。オンライン上で質問を配信し、回答を分析するという仕事です。大抵、金曜日の夜に調査を配信し、週明けに調査結果を受け取るのですが、その金曜日も夜遅くまで配信を控えた調査を詰めていました。配信の段取りが全て完了したのは、日付が変わる頃。ボールは私の手を離れ、ようやく始まった”TGIF”に浮かれて帰宅しました。

たっぷり朝寝坊した翌土曜日の朝、ぬくぬくとした気持ち良さを一瞬で剥ぎ取るような衝撃に体が引きつりました。
「クライアントから追加で依頼されていた修正を反映しないまま、調査を配信してしまった!」
寝起き早々閃めくようにミスに気づくなんて、どうしてそんなことがおきたのかはわかりませんが、とにかく、私は恐ろしいミスをしでかしたことに突然気が付いたのです。直前にクライアントからもらった修正依頼のメールの存在は、今この瞬間まで頭からすっぽりと抜け落ちていました。心臓が早鐘のようにドキドキとなり、顔が紅潮するのがわかりました。「ありえない!あんなに見直しをしておいて、あのメールの存在すら忘れていたなんて!クライアントの上長からの依頼だから宜しく頼むと、チームの営業さんからも念押しされていたのに!」

私の頭は高速回転を続けました。
「もうおしまいだ、調査一つまともに完遂できないなんて、先輩にもクライアントにもとんでもない役立たずだと思われる!月曜早々クライアントに謝罪に行かなくては。きっとあの担当さんは私のことを許してくれない。それどころか、上長に今回の件を報告し、私をこの案件から外すよう要求するだろう。チームの営業さんだって、あんなに念押しされたことを忘れる私のことを心底やる気がないやつだと呆れかえるだろう。その噂はどんどん広まって、どの営業さんも私のことを指名してくれなくなる!私はもうこの会社で用無しのクズになってしまう!!」

まさにパニック状態です。
冷静に読み返すと大げさに聞こえるかもしれませんが、これはまさにその瞬間、私の頭の中を電光石火のように駆け巡った一連の考えでした。次から次へと恐ろしい未来を連想し、悪い方へ、悪い方へと想像が流れて行くのを止められないのです。

過ちを反省することは大切です。しかし、正確に状況を捉えて過ちとその原因に真摯に向き合うことと、ただただ悲嘆にくれて不安に溺れることは全く違うのです。私たちは突然の逆境に向き合う時、往往にしてこの悲観的な「次は何思考」を発動させてエネルギーを無駄なことにつぎ込んでしまい、冷静に現状と向き合い解決に向かうエネルギーを浪費してしまいがちなのです。

思考の手綱を握る方法

ここまでご紹介した「なぜ思考」「次はなに思考」というティッカーテープ思考は、自分が意識するよりも早く、あなたの頭を牛耳ってしまう思考です。このような思考が飛び出した瞬間、自分の思考の手綱をとり、負の思考連鎖を止めることができるようになれば、より冷静で効率的な解決手段の模索にエネルギーを使えるようになります。

では、どのように思考の手綱を握れば良いのでしょうか。
ここに一つ、科学的に非常に重要な発見があります。

私たちの頭の中を蜂のようにブンブンと飛び回る思考は、個々人が持っている独自の言語や表現で駆け巡っています。(苛立った時、”ふざけるな!”と叫ぶ人もいれば”Damn!”と叫ぶ人もいるでしょう。)
それぞれの中では独自の言葉遣いで表現されている思考ですが、思考そのものは共通するものとしてカテゴライズすることができます。近年の研究によって、カテゴライズされた思考がそれぞれどのような感情や行動を引き起こすかが体系化され、予測することができるよう明文化されているのです。この体系化された「考え方(Belief)→感情/行動(Consequense)」という繋がりのセットは普遍的なもので、概ね誰しにも、どんな状況においても当てはまります。

考え方(B)はとてもパワフルですです。あなたが逆境に直面した時、あなたの頭の中に浮かぶ考えによって、あなたに表出する感情や行動が大きく左右されるのです。考え(B)と行動(C)のパターンを知ることは、自分の感情や行動の背景にある本質的な思考を見抜くのにとても役に立ちます

次は、具体的な「B(考え方)→C(感情/行動)」の繋がりを見ていきます。

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