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2022年の学術イベント、展覧会を振り返る

今年もコロナ禍が続き、安心した外出ができるというわけではなかったが、そんな中でも学術的なイベントに参加したり、東京に展覧会を見に行った。実際に見た展覧会のいくつかはnoteにも書いたが、書き漏れたのもあるので、この機会に記しておこうと思う。

「アート×炭鉱」

1月は札幌創世スクウェアで開催された、バトンという学術イベント3回目、テーマは「アート×炭鉱」である。北大の橋本努先生と、現役アーティストで全国の炭鉱芸術をリサーチする研究者でもある国盛麻衣佳のトークだ。北海道はかつて夕張炭鉱もあり、第一次産業の要でもあったが、今やすっかり見る影もなくなった。だが炭鉱がある地域住民のインタビューや、アートとして炭鉱を捉えた場合、全く様相が違って見えてくる。現代も炭鉱は生きているのだ。橋本先生はさすが豊富な勉強量だけあって、とても学術的にインスパイアされた。イベントの書籍販売コーナーで購入したのが、岩波文庫の『まっくら』である。読むのが楽しみだ。

7月に訪れた森鴎外記念館の「読み継がれる鴎外展」

関わっている作家、研究者がロバート・キャンベルとか中島隆博といった大好きな人たちばかりで、何よりも平野啓一郎が企画の中心とというのがとてもいい。平野氏がデビューした頃は、大学時代に鴎外全集を読破したことを語っていた。いかに鴎外の影響が今の日本文学に深い影響を与えているのか、その系譜がわかる展示となっている。豊穣な鴎外の全仕事は、途方もなく広く、深い。せっかく生誕160年没後100年という節目なのだから、品切れになって入手困難なちくま文庫の森鴎外全集をぜひ復刊して欲しいものだ。

渋谷のBunkamuraザ・ミュージアムの「かこさとし展」

元々軍国少年だったかこさんは戦後、自身の犯した大きな過ちから二度と同じ道を辿らないために、セツルメントの活動に精を出す。そして、絵本作家として数々の名作を発表。自分も子供の頃は『どろぼう学校』に夢中になり、一つ下の学年が学芸会で舞台化したのを今でも覚えている(しかもメインで舞台に立っていたのが、通っていた塾の後輩だったからなおさら覚えているのだ)。『どろぼう学校』が、かこさとし作と知ったのは本当につい最近のことだ。

かこさとしは科学絵本や図鑑も多数出版している。恐ろしく密度が濃く、そして美しい原画には圧倒された。これを作るためにどれほどの勉強が必要だったのかと思うと、気が遠くなる。かこさとしの図鑑を読んで育ったのなら、きっと豊かな知識をもった次世代の研究者が誕生するに違いない。

森美術館の「地球がまわる音を聴く」

これもとんでもない展示でその発想に仰天させられた。北極点で24時間経ちっぱなしで過ごす芸術家もいれば、アウトサイダーアートのような、理解を遙かに超えた模様で構築されたアートなど、どれもアートの表現の幅を拡げる作品ばかりであった。

北海道立近代美術館「国宝法隆寺展」

あまりにも貴重すぎる展示品の数々。これを逃すともう一生見ることが不可能ではないかと思える仏像やお経の経典ばかりであった。特に、中宮寺の本尊《菩薩半跏思惟像》にただただ圧倒された。菩薩半跏思惟像は日本史の教科書でおなじみの仏像で、およそ1500年近く経っても、仏像から発するおだやかな波動にうっとりとした、心地よい瞑想のような優しい感覚に全身が満たされる。いつまでも展示室に残っていたいほどであった。菩薩半跏思惟像が放つ不思議な法悦は、時代を超えて今も人びとを魅了するのだ。

そして、YouTubeの本の紹介動画、今年も2週間に1本の割合で続けてきた。
このnoteでも紹介しようと思ったが非常に大変な作業となるため、年末に収録した特別編のリンクを張っておこう。

今年(2022年)に紹介した本を振り返る、という企画で、なぜか読んだことすら忘れてしまったという本があったりする。いかに人間の記憶が脆いものか感じずにはいられないが、だからこそ何度も再読して血肉化することが大切なのだ。

書店関係では、弘栄堂書店が全店閉店、紀伊國屋書店のオーロラタウン店が閉店した。さらには、円山の古本屋らくだやが閉店と、大好きな店が次々と姿を消した。らくだや閉店セールのおかげで、これまで買いたくても買うのを遠慮していた本を大量にゲットすることができた。大変なりがたいことだが、もう二度とらくだやの空間が存在しないと思うと、なんともいたたまれないものだ。店主のtwitterによると、らくだやの跡地にふたたび古本屋ができる可能性もあるので、注意深く見守っていきたい。

東京の大手書店では、重洲ブックセンターと三省堂書店神保町本店もビルの建て替えのためしばらくお休みとなるが、復活の暁には、令和ならではの新しい書店体験を味わってみたいものである。

他にも今年のアニメは相変わらずP.A.WORKS制作による『パリピ孔明』と『アキバ冥途戦争』には楽しませてもらった。そして、ラジオでは「ASKA Terminal Melody」、「KOTOKOノコト」、「アニソンR」といった番組をradikoで聴くようになり、ますます音楽を楽しむ環境が増えた。

映画関係では、サツゲキのSDバリューポイント制度が廃止になったため、少し足が遠のいてしまった。これにはがっかりさせられたが、なんとか新しいサービスで対応していただきたいと切に願う。

また、今年はJAPAN LIVE YELL PROJECT in HOKKAIDOに参加し、今後の北海道のクリエイティブについてメンバーと議論したり、栗山町を訪れる機会もあった。これについては別項で記したいと思う。

2023年も様々な活動を通して文化にもっと貢献していきたい。

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