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交流の「多様性」と「自由度」が同期を生み出す

今日は『ソーシャル物理学 - 「良いアイデアはいかに広がるか」の新しい科学』(著:アレックス・ペントランド)より「エンゲージメントを成功させるルール」を読みました。

エンゲージメント、すなわち「繰り返し行われる協調的交流」がソーシャルネットワークを連鎖的に伝播することで、価値観や行動が変わり、やがて文化が形成される。個人は複数の人と接する中で、様々な経験を重ねる。その経験の蓄積が短期間に厚みを持つほど、大きな行動変容の力となる。

エンゲージメントが醸成されるためには、何が必要なのでしょうか?

著者は、3つのルールを取り上げています。

エンゲージメントには交流が必要…人々が共同作業を効率的に行うためには、「ネットワーク制約」と呼ばれるものが高い状態が必要になる。これは集団に属するすべての人々の間で、繰り返し交流が生まれていることを意味する。交流がリーダーとメンバーの間だけにしかない場合も、メンバー同士の間だけの場合も、ミーティングのように「構成員が一堂に会して」しかないという場合でもだめだ。

エンゲージメントには交流が必要とのこと。特に強調されているのは「交流の多様性」です。リーダーとメンバー(垂直)、メンバー同士(水平)、ミーティング(密度・凝集性)のいずれかだけでもダメ。

「分け隔てない」ということ。それの一言に尽きると思います。役割に関係なく、わざわざ話し合う場を設けるでもなく、自発的に誰とでも気兼ねなく交流する。交流の多様性、自由度、双方向性。それらが満たされることで、ソーシャルネットワーク上で模範的行動や価値観が連鎖的に伝播していく。

もし、ネットワーク内部に交流の伝達を阻害する障壁、ボトルネックが存在したら、連鎖はそこで止まってしまう。伝えること、理解しようと努めること、試してみること、真似してみること。ネットワークを情報やアイデアが流れやすくなるためには発信する側と受ける側のインターフェースが重要。

同調、共感、同期、共鳴。そのような言葉が浮かんできました。

エンゲージメントには協力が必要…ベル・スター研究で明らかにされた「スター(花形)研究者」の姿は、チーム内の全メンバーに働きかけ、彼らにチームの一員であるという意識を持たせると共に、目標設定、研究活動、業績達成の各アクティビティに皆を巻き込むというものだった。こうしたスターたちは、チームメンバー全員に集団意識を持たせることで、チーム内のエンゲージメントを促す。そして誰もが新しいアイデアを受け入れるよう、十分なコンセンサスを形成しようとするのだ。

エンゲージメントには協力が必要。協力にも「自ら協力したい」と自発的なこともあれば、協力を求められる状況が外発的に作られる場合もあります。

巻き込み上手、巻き込まれ上手。花形の研究者はメンバーを巻き込むのが上手ということですが、それと同様に「巻き込まれ上手」も必要なのではないでしょうか。言い換えるならば「フォロワーシップ」ですが、フォロワーの存在が注目される機会は案外少ないように思うのは気のせいでしょうか。

「フォロワーシップ」には、やや重い響きがありますがSNSで「いいね!」してみたり、人が推薦していた何かを自分の生活に取り入れてみるなど、様々な形があります。「自分も同じように〇〇してみた」と相手に対してもフィードバックしつつ、他者にも伝えていく必要がありそうです。

信頼感を醸成する…信頼感(公正で協力的なやり取りが将来行われると期待すること)は、人々の間で交わされた過去のやり取りの中から生まれる。その結果、ソーシャルネットワークには過去のやり取りの履歴とその勢いが反映される。また特定の人物の間で協力的なやり取りが直接行われた回数からも、彼らの間の信頼感を正確に予測することができる。

信頼感を醸成する。ソーシャルネットワークにおける過去の履歴。何かが連鎖したとすれば、その軌跡を逆にたどるとルーツに行き着くはずです。最初に発案した誰か・何かに。

たとえば、Slackというコミュニケーションツールがありますが、様々な話題が様々なチャンネルで展開されています。誰かの投稿に対して、コメントが次々と返されていきます。その履歴はツリー構造を基本としながらも、そのスレッドのリンクがコピーされて、他の会話の中で引用されることで網の目の構図ができていきます。

「相互リンク」しあうことで、情報が広がりと深さを持って伝播していく。ソーシャルネットワークにおける「リンクの特性」についてさらに深く知りたくなりました。

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