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ある天才編集者の教え。
その日、僕は、行きつけのバーで彼と呑んでいた。
”彼”とは、大手出版社の天才編集者。
毎年、累計で100万部を必ず売り上げる、
まさに天才、編集の匠とも呼べる男だった。
僕は彼とは本を出したことは無く、単なる呑み友達だったのだが、
実に色々な話を聴き、また聴いてももらった。
そんな彼の命が、ある日、突然消えた。
事情と言うか、理由は分からない。
家族からも一切、聞こえてこないまま、何年もが過ぎた。
そして僕は、今もまだ彼の冥福を祈りつづけている。
で、その行きつけのバーでの話だ。
BGMにジャニスイアンが流れる静かな空間。
僕と彼が良い気分で呑んでいると、
そこへうるさいオヤジの3人組が入って来た。
その3人組は、これまた出版社の重鎮で、全員、
業界では知らぬモノがいない存在だ。
そして彼らはその天才を見つけるとすぐに絡み出した。
何でも近くで会合があったらしく、
一軒呑んだあとの2軒目としてこのバーにやってきたらしい。
最初は大人しく呑んでいた重鎮達は、徐々にヒートアップし、
天才に面倒な絡み方をしてきた。
相当ストレスが溜まっていたのだろう。
中のひとりが、「よう!天才!またベストセラーをだしたんだってな!
俺たちダメ親父にその秘訣を教えてくれよ!」と言い出したのだ。
天才は黙して語らず、静かにグラスを傾けている。
「おいおい、天才さんにはダメ親父の声は聞こえないみたいだぞ!」
「意地悪しないで、お願いだから秘訣を教えてくださいよ!」
としつこい。
僕も、その3人とは知らない仲ではないし、
そもそもそのバーを紹介したのも僕だったので、
店に迷惑がかからないかと気が気ではない。
喧嘩になるのを覚悟で、「勘弁してやってくださいよ!酒がまずくなる」
と言ったのだが、親父達は引き下がらない。
「お願いしますよ~、何とか頼むよ!教えてもらわないと帰れないよ!」と、もはや脅しだ。
すると天才が突然口を開いた、
そして、
「教えることなんて無いですが、気をつけていることなら話しますよ。
そうしたら静かにしてくれますか?」と。
「うれしいね~、はいはい、気をつけてること?いいね~、ぜひぜひ」
と彼ら。
天才は静かに右手の指を立て、こう言った。
「ひとつ、自分が作りたい本は作らない」
「ひとつ、著者が書きたい本は書かせない」
「ひとつ、読者が読みたい本だけを作る」
以上。
重鎮達は一瞬きょとんとして、そして黙った。
店には静寂が訪れ、重鎮達の喧噪も消えた。
僕は静かにプラットバレーのロックに口をつけた。
いつもより、コーンの香りが心地よく感じた。
その天才は、とにかく書店が好きだった。
激務の中、いつも何とか時間を捻出しては、書店の売り場を見ていた。
僕も何度か同行したのだが、書店の売り場に立った彼はニコニコと、
「ここには社会があるんですよ」と言っていた。
そして「本の売り場は社会と繋がる”窓”なんですよ」とも。
「だから、社会と繋がる本を作らないといけないんです!」
と言うのが口癖だった。
僕は今も本を書いているが、ふと詰まったり、悩んだりした時には、
彼のあの言葉を胸に刻むようにしている。
「ひとつ、自分が作りたい本は作らない」
「ひとつ、著者が書きたい本は書かせない」
「ひとつ、読者が読みたい本だけを作る」
天国の天才!
僕はあなたの教えを守れているだろうか?
あなたの伝えてくれたことを、ちゃんと理解できているだろうか?
その彼から教わった、テーマの見つけ方がこの本↓に書かれている。
もし良かったら読んでみていただけないだろうか?
【kindle出版はテーマ選びが9割。: 紙の出版50冊超えのベストセラー作家が教える、バカ売れテーマが面白いほど見つかる方法。】
https://tinyurl.com/bdfbn6v7
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