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小説集

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記事一覧

ハツネミルク

 ここに一つのウインナーがあるとき、あなたはそれを人と分けて食べますか?
 ラシドは自分だけで食べてしまうような人でした。  
 ラシドには相方が居ます。相方はアミと言います。アミは自分が食べて美味しいと思った食べ物を必ずラシドに分けてくれる人です。
 ラシドが自分の食べているものをアミに分けることは最初のうちはありませんでした。
 アミはそれでもラシドに怒ることもなく、相変わらず自分の食べてい

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堺くるみ

 実際以前描いたハツネミルクの続きなど書くこともないだろうとタカをくくっていた。
 甘かったと反省はしているがさほどしまったとも思っていないラシドだった。
 アミはその後、推しが出来て推し事に忙しくしている。
 本当に世の中を眺めていると適当なことを言ったりやったりして生活がでっちあがっている者がいる一方で失調の迷宮をさ迷い生活もままならず極貧でろくに食べておらずという者もいる。
 ラシドはネット

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そこにある街

この話はフィクションです。
 雅内発関司港行のディーゼル列車江差号に乗り込んだ夫婦はもう行くあてなどなく片道切符で礼幌を出て、気動車の低振動に揺られて眠りについた。
 江差号で二人たどり着いたその街は松屋という街だった。
 公彦は妻の亜希子と地味に破産した後に僅かな所持金とリュック一つで江差号に乗ってきた。
 妻の亜希子と共に松屋駅に立った公彦は、二人とにかく駅前の柳麺屋に入って、柳麺を注文した後

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サバトラ

 サバトラの様子がおかしくなったのは疫病の緊急事態宣言が解除された五月の末頃だった。
 食べ物が喉を通らなくなり、食べてもしばらくしたら吐瀉した。料理を一切しなくなり、近所の喫茶店や定食屋でも食べてしばらくしたら吐瀉するので出入り禁止になった。
 白猫はサバトラの高齢認知症が進んでいて食道にできものが出来て居るであろう、しかるべき病院に連れて行った方がいいと思っていたが、クロトラにもサバトラは病院

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和泉国六十二座

房之助 歴史学者。
みどり 歴史学者。房之助の妻。
章太郎 内職業経営。
あずみ 内職業の夫章太郎を手伝う。
茅淳海 元十両。ちぬかつらぎのちぬ
のぞみ バツ三。スーパーで働いている。
葛城山 元十両。ちぬかつらぎのかつらぎ
はるか バツ一。スーパーで働いている。
女主人 昭和の頃からコーヒー屋を営む。
運転手 内職部材を運ぶトラックの運転手
女店員 携帯ショップの店員
男店員 コンビニの店員

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キティワールド

 発表年は忘れてしまいました。キティランドという電子書籍をKindleで出版していた時期があり、その作品を出版停止にしていますので、その作品を手直しして題名も変更した別の作品として新たに公開いたします。  
2016年11月15日 阿蘇山(名義変更)

 キティは腐れている。腐臭が身体中から放射されて、その臭いが充満している。
 キティたちのたむろうキティランドでは、妙な声こそ聞こえてはこないが、

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原石

はてなブログに公開していました金剛石と黒曜石とを合わせて原石という小説としてnoteに公開し直します。

原石

1 金剛石

 人には1人ぐらい忘れられない人がいる。
 緑が誠司と出会ったのは、学校であった。
 当時学生であった緑と誠司は同級生で、同じサークルに入ったことから知り合った。
 昭和63年の春のことであった。
 松江という町は静かな所で、ひっそりと勉強するには良い所であった。
 本来

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