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小説_『同窓会の帰り道』

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あれは成人式の日だった。

同窓会の帰り道を、
俺はかおりと適度な距離を
たもちながら並んで歩いていた。

少し歩いたさきに公園がある。

「公園に迎えがくるの」
同窓会の終わり頃、彼女は言った。

俺はその公園にバイクを停めていて、
成り行きで一緒に行くことになった。

「たっちゃんは今彼女いないの?」
とかおりが言った。
「いないよ」と答えた。
「かおりは彼氏いる?」とおれは続けた。

「いるよ。いま迎えにきてくれてるんだ」
かおりは笑顔で答えた。

街灯が照らす彼女の笑顔は美しく
俺は吸い込まれそうだった。

公園に着くと、
中型バイクの横に長身の男が立っていた。
吸っているタバコから出る煙が
ゆっくりと空に登り薄まってく。

かおりはその男に笑顔で手を振った。
俺は、男に会釈をした。
男の反応は無かった。

「またね!たっちゃんも彼女作りなよ!」
応援するように、彼女は言った。

「またね」
と俺は右手を上げた。

公園に停めていた原付バイクが
とても頼りないものに見えた。

おれはバイクのエンジンをかけて、
しばらくそこに佇んでいた。

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