ポップアップストアを開催するメリットとは?
近年、ポップアップストアを活用した事例が増加しています。
例えば、セリーヌは、国内初のポップアップストア「THE DANCING KID」を東京に出店しています(※1)。また、自動車メーカーのポルシェは、電動スポーツカー「タイカン」のポップアップストアを展開しました(※2)。
他にも、アイドル業界やアニメ・マンガ業界のポップアップストアが、全国各地で展開されています。
このように、様々な業界で活用が進んでいるポップアップストアですが、企業がポップアップストアを展開するメリットは何でしょうか?
今回の記事では、最新の研究成果を踏まえながら、ポップアップストアを活用したマーケティングについて紹介します。
ポップアップストアとは?
ポップアップストアは、期間限定で開催される店舗です。期間は様々で、数週間で終わるものもあれば、数か月にわたるものもあります。
上述したように、ポップアップストアを活用する企業は多様です。
ファッション業界では、ラグジュアリーブランドに加え、ナイキやリーバイスといったブランドも、ポップアップストアを開催してきました。
実務の中では、ポップアップストアは以前から活用されていますが、学術的な観点からみると、比較的新しいテーマになると思います。私が調べた限りですが、ここ数年で関連する論文が増えている印象です。
ポップアップストアのメリットは?
先行研究の中では、ポップアップストアのメリットがいくつか取り上げられています。今回は、ラグジュアリーブランドに関する研究成果を紹介します。
1. 顧客に特別な体験を提供することができる
ブランドによっては、ストア限定品を販売したり、顧客にストアならではの体験を提供するものもあります。
特にラグジュアリーブランドのポップアップストアにおいては、顧客に特別な体験を提供することは、非常に重要だと言われています。
実際に、セリーヌの「THE DANCING KID」では、店舗内にゴーカートやヘルメットを展示したり、ポップアップストア限定品も販売されているそうです(※1)。
特別な体験を提供することで、顧客の満足感やブランドロイヤルティの向上に繋げることが期待できます。
2. 口コミの効果が期待できる
現代のマーケティングにおいて、口コミは重要なテーマの一つです。
ポップアップストアの目的の一つは、製品を販売することだけでなく、既存・新規顧客にブランド認知を広げるために、口コミを促すことが挙げられます(※3)。
実際に、Kleinたちの研究によると、ポップアップストアにおいて特別な体験をすることは、口コミを促すことが明らかになりました(※3)。
3. 敷居の高さを解消できる
ラグジュアリーブランドに対して、敷居が高く、店舗に行っても居心地が悪いと感じている消費者もいます。Lunardoたちの研究では、こうした「居心地の悪さ」を、ポップアップストアは和らげることができるかを検証しました(※4)。
彼らの研究結果によると、ポップアップストアによって、居心地の悪さを低減することができ、ストアに対して好意的な評価に繋がることが分かりました。
まとめ
今回の記事では、ラグジュアリーブランドにおけるポップアップストアを活用したマーケティング研究を紹介しました。
ポップアップストアを開催するにあたって、「顧客に特別な体験を提供する」という点は、非常に重要な観点かと思います。
また、今回紹介したメリット以外にも、「テスト市場として活用できる」など、他にもいくつかの利点があると言われています。
学術的な観点では、ファッションマーケティングの中でも、新しいテーマとなっています。ファッション業界では、ポップアップストア以外にも、いくつか興味深いマーケティング戦略がとられており、研究テーマとしても可能性のある市場ではないでしょうか。
※1: FASHIONSNAP.COM参照
※2: Porsche Japan公式ホームページ参照
※3:Klein, J. F., Falk, T., Esch, F. R., & Gloukhovtsev, A. (2016). Linking pop-up brand stores to brand experience and word of mouth: The case of luxury retail. Journal of Business Research, 69(12), 5761-5767.
※4: Lunardo, R., & Mouangue, E. (2019). Getting over discomfort in luxury brand stores: How pop-up stores affect perceptions of luxury, embarrassment, and store evaluations. Journal of Retailing and Consumer Services, 49, 77-85.
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?