他所の国の絵空事だと笑っていられない映画 「NEW ORDER /ニューオーダー」
ネタバレありです。ご注意ください。
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本日観た映画はメキシコのミシェル・フランコ監督作品「NEW ORDER/ニュー・オーダー」
恐ろしい映画だ。
メキシコ・フランスの合作で2020年に製作されていますが、本国では2022年に公開されている。
89分という、これまた絶妙な集中力がマックスに保てる上映時間で、一度ライドしたら最後ジェットコースターのように悪夢に向かって突っ走る。
そして出口なしのバッドエンド。
怖いっ!!!
ここから先は、映画を観た直後のメモ書きでお届けします。
映画のあらすじや基本情報はFilmarksのサイトをご覧ください。
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映画のモチーフ、イメージカラーは緑色
水道栓から出てくる緑色に染まった水
ぶちまけられる緑色のペンキ
緑色はメキシコの国旗で使われている1色「独立の色」
最初は民衆の暴動から始まる
待ったなし情け容赦なく撃ち殺す
一般民衆の上流社会の人間に対する凄まじい憎しみ
分断、格差
使用人は町で働くよりよい収入を得ているのか、それなりに良い住居に住んでいるようだが、
それなりでも、暴徒が襲撃してきた際には簡単に寝返る使用人もいる
ひょっとして最初から手引をした者もいる?
混乱に乗じて家中の金目の物も金目で無いものも強奪していく使用人もいる
流石に酷い犯罪行為だとは思う反面、
ま、そりゃそうなるわな
というのも正直な感想
7年前まで使用人だった男が訪ねてくる
妻が心臓を患い高額な費用のかかる手術が必要だと援助を依頼に来た
それなりに気遣う様子を見せるが、パーティの方が重要な家主の一家は財布から手持ちの3万ペソ程度を握らせて追い返そうとする
20万ペソには到底足りず、これが最後の望みだと帰れない元使用人の男
結婚式の主役の新婦マリアン、赤い服を着ている
赤い服に意味がある?
赤色も国旗で使われていて、国に殉じた愛国者の血を意味する
または、民族の統一
その赤い服を着たマリアンだけは、昔の使用人であっても無造作に追い返そうとはしない。
自分が子供の頃から世話になったのだろうと推測する
しかし、父も母も兄も手術費用を出そうとしないので、
業を煮やして自分で車を運転して使用人の家まで行き、病院へ連れて行こうとするが。。。。
しかし、それは地獄への入り口となった
使用人の家に着いたが、そこに暴動を制圧していた兵士がやってくる
危険なので今すぐ家まで送ると言いマリアンはトラックに乗せられる
トラック内でピアス、指輪、時計など装飾品を奪わる
様子がおかしい
着いた先は収容所らしき建物
トラックから降ろされるマリアン
もはや暴動を起こしていた民衆ではなく、兵士達〜軍が組織的に誘拐をしている
「地獄へようこそ」
男女別に集められる
彼らは人質
人質は一人づつ身元を確認させられる
名前、住所、自宅の様子(一軒家かビルか)、警報装置の有無
家族の名前、電話番号など一切を聴取される
身代金を要求するために
男性は暴行され、女性は陵辱される
外道、動物
人質達は、おでこに番号をマジックで書かれ、
身代金の要求のためビデオで撮影される
マリアンも例外ではなく、16という数字を書かれる
「16」が彼女の名前だ
人情で使用人に寄り添い助けようとしたその行為がかえって仇になった皮肉
家に戻っていた使用人の男は、妻の状態が悪いので医者を求めに表に出る
しかし町は兵士たち軍に占拠されている
今すぐ家に戻れ
静止を聞かないとあっさり射殺される
誰のためのクーデター?
兵士たちの会話
今回の作戦(?)での自分たちの取り分を気にしている
マリアンを誘拐した兵士たちが使用人の家へ行く
80万ペソを払えばマリアンを逃してやる
雇い主のところへ行き、そう言って金をもらって来い
働きになら外へ出られるから許可をもらえと
数日経ったのか、占拠した区域外へ住民が働きに出るために
就業許可証としてIDカードが労働センターで発行される
住民統制がシステム化されてきた
IDカードは常に提示しないといけない
朝、バスで一斉に働き先の区域外へ送られる
バスの中では、消毒液が噴射される
これが毒ガスでバス内で大量虐殺されるのかと一瞬思ったが、
そうではなかった
何のための消毒液??
6時から20時までは区域外へ働きに出られる
21時以降は外出禁止
誰を制圧するための仕組みだ?
元々は格差底辺の民衆が暴動を起こしたのではなかったか?
しかし、軍の統治によるニューオーダー=新しい秩序の元では
新しい格差が構築され、搾取の枠組みが変わっただけではないか
翌日、奉公先の金持ちの家へ行った使用人の母と息子
誘拐犯の兵士の伝言「80万ペソ」を要求していることを伝えると
結婚パーティで銃撃されたが命だけは助かった父は簡単に
「金を出せ」と指示する
元の使用人に20万ペソは出せないが、80万ペソは簡単に出すのか
80万ペソを持って帰宅する使用人親子
しかし、検問でみつからないようにと指示されたのか、80万ペソは手持ちのバッグではなく肌身につけていた
金を取る兵士
「これは頭金だ。明日は100万ペソもらって来い」
こいつら兵士に取っては、巻き上がられるだけ巻き上げられればどうでもよいのだろうな
一方、収容所では「正規の」身代金要求で支払われた人質達は
「身代金が支払われたので釈放する」
と番号で呼ばれる
しかし、外へ出た途端聞こえてくる銃声
身代金と交換で用無しとなった人質は簡単に銃殺されるのだろう
翌日、また奉公先へ行く使用人親子
今度は100万ドルを
と伝えるが、今度は信じてもらえない
「使用人が誘拐犯だ」
と懇意にしていた将軍に電話で通報される
使用人の自宅では、追加の100万ペソを回収に来た兵士を待ち伏せしていた
「商売は上手くいっているようだな」
そして、勝手に身代金を要求していた兵士達も捕らわれ、
人質と一緒に銃殺される
マリアンは将軍に連れられ、黒塗りの高級車で家まで届けられる
しかし、行き先は使用人の家
マリアンは拳銃で銃殺され、帰宅した使用人の息子にその銃を握らせて罪を被せる
「使用人が誘拐犯だ」という家族からの通報どおりに処理するために
何という皮肉、悲劇
完全に将軍もグル
組織的に「正規に」金持ち達から身代金を奪う分にはいいが、
マリアンの80万ペソは、兵士が勝手にやっていたことだ
要はヤクザのしのぎを、下っ端の構成員がこっそり横取りしていた
それは許さねえぞ
そういう話だ
これは、軍がクーデターを起こして、軍事政権として新しい秩序を確立するまでの話だった
出口なし、バッドエンド
これは他所の国のフィクションだ、ディストピアSFだと笑ってはいられない
権力者が巧妙に絵を描いて、裏で笑っているなんて
今でもこの国で普通に起きているのではないか?
殺人こそ起きていないだけで
いや、自死したり、不自然に死んでいる人もいるな
国民は早く目を覚ませ、何処の国でも起きている不正義に気付け
という強烈な警告の映画ではないか
恐ろしい映画が、恐ろしい現実にならないように
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