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謎の行列が気になって仕方ない

最近たまに通る道端に謎の行列が並んでいて気になって仕方がない。

JR田町駅西口(三田口ともいうらしい)を出て大通り沿いを左へ少しだけ、札の辻交差点の手前ハローワーク品川のある区の役所ビルの斜め前辺り。

17時頃を過ぎると大体いつも大通りと歩道の間の植え込みに沿って行列を作って並んでいる。
今日も軽く10人、いやその倍くらいはいただろうか。

1人の人もグループらしき人もいる。
スマホを見ている人が多いので、最初に見たときはポケモンGOのレアモンスターの出現場所なのかな?とも思った。

それにしては、何かを待っているかのようにきちんと列をなして並んでいる(ように見える)。

現場作業系のバイトのピックアップ地点なのかな?とも思った。
それにしては、老若男女、スーツの人、普段着の人、若い女性、学生風の人、いろんな人が列をなしている。

何かを待っているのであれば、しばらくそばに立って一緒に待っていれば判るかもしれないが、残念ながら平日の夕方はそんなに暇ではないのである。

一体この行列は何をしているんですか?
何かを待っているんですか?

そんな風に尋ねてみたい衝動にも駆られる。
ここが大阪なら迷うことなく声をかけて訊いてみるが、どうも東京、しかも田町とはいえ港区だと思うとこちらも構えてしまってダメだ。

もし、勇気をだして尋ねたとしても、

「はて、何も待ってませんよ」
「でもみんな並んでいるじゃないですか」
「そうですね。でも、別に何というわけではなくて。あなたも並んでみればいいじゃないですか」

そんな問答になったらどうしようと思うと怖くて声を掛けられない。

そういえば、最近出た中村文則さんの「列」という小説が似たような話だったなぁと思い至る。

僕は群像に掲載された時に読んで、なんと変わった話だと思いつつ心に引っかかるものを感じたのだが。

ある研究者が気がついたら列に並んでいるところから話が始まる。
先頭は遥か遠くで最後尾も見えない。
何のために並んでいるのかも分からないまま、ずっと並び続けながらいろんなことを考える。
たまに、列を抜け出す人がいるが、ほとんどの人はそ知らぬ顔で並び続ける。
男は列を抜け出した人がなんだか羨ましくなってくるが並び続ける。
やがて同じく列に並んでいる女性と会話をするようになる。
そもそも人生なんてみんな何かの順番を待っていて同じようものじゃないか。
そんな哲学的な話にもなっていく。

まぁ話はとんでもないところへ行くのだが、そういう話だ。

そんなことを思い出しながら、
あぁどうして列を作って並んでいるんですか?

謎の行列のことが知りたくて気になって仕方がない。

いや、ひょっとしたら行列は僕にだけ見えていて、本当は誰もいないのかもしれない。
まさか、そんな訳はないか。

夕方この通りを通るたびにずっとそんな事を思わなければいけないのだろうか。


〈了〉

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