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音が主役の不思議映画「MEMORIA メモリア」

こんにちは、makoto です。

アピチャッポン・ウィーラセタクン監督の最新作「MEMORIA メモリア」を観終わったばかりなので、noteしておきます。

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アピチャッポン・ウィーラセタクン監督作品はこれがはじめてである。
なので、監督の作風がどんなものなのかは全く知らない。
タイの映画監督であること
本作を含めてこれまでカンヌ国際映画祭で4度受賞していること
本作がタイを離れて海外(南米コロンビア)で撮影した最初の映画だということ
それくらいしか前提知識がないままで観た。
何かを映画館で観た際に予告編で紹介されていて、そこでも
「ティルダ・スウィントンが出演しているタイの監督の作品らしい」
という情報しか分からなかったが、それだけでも十分面白そうだから絶対観ようと決めていた。

「MEMORIA メモリア」はなんと7カ国合作(コロンビア、タイ、イギリス、メキシコ、フランス、ドイツ、カタール)とクレジットされている。
(ちなみにFilmarksのクレジットではカタールの代わりに中国、スイスになっているけど何故?単なる誤り?)
物語の舞台は南米コロンビアで、セリフもスペイン語と英語でスペイン語多め。
タイトルのMEMORIAもMemoryのスペイン語

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ストーリーはあってないようなもので、なんだかよく分からない。
どうやら海外を転々とした暮らしをしている様子のティルダ・スウィントン演じるジェシカ(正直、何者なのか最後まで分からなかったけど何かの学者でフィールドワークで旅しているのだろうか)が、南米コロンビアに居を構えている。
ある日朝起きたら、突然脳内でドーンという大きな球体を落としたような低い音が鳴り響く。それは1度だけでなく何度も鳴るようになる。
それから身の回りに不可解がことが起こるが、特に解決されることなく、やがてトンネル工事の際に発見された大昔の人骨の発掘現場に行くことになり、その近所の森で出会ったエルナンという男性と会話をするうちに、音の正体に行き当たる。
という、こうやって書いていても何の話について描かれていたのか全くわからない。

作中、エルナンという男性が2人出てくるのだが、最初に出てきた若いエルナンは知り合いから紹介してもらった音響技師で、脳内で鳴っている音を再現してもらおうとジェシカが訪れる。
結果的にとてもよく似た音を再現してくれたのだが、その後何故か一緒に農園用の大型冷蔵庫を直売工場?に見に行くことになるが、
「高くて買えない」と言うジェシカに
「興味があるから資金を出そうか?」とエルナンは何度も申し入れる。
そんなことはしてもらわなくても、とジェシカが取り合わないでいるところでそのシーンは終わるのだが、後日改めてエルナンをスタジオに訪ねると
「そんな名前の音響技師はいない」と言われる。

え?で?だから??何??
こんなちょっとした不可解な出来事がいくつか描かれるのだけど、それがどういうことなのかは放置されたまま話は進んでいく。
これは暗にジェシカに何かが起きて勘違いしている、とかを描いているの?と思わなくもないがはっきりしない。

物語の最後、森で中年のエルナンと出会うが、そこでの会話も謎だ。
どうやら、エルナンは地球外から来たようなことを言っていたり、そこらに転がっている石ころに刻まれた音が物語として聴こえるようなことを言っていたりする。
挙げ句にジェシカも、彼のその様々な記憶を自分に起こった出来事のように体験出来ることが判り、そのイメージの中で例の脳内の音の正体が
UFOのようなものから発せられたものだと解るのだが。。。
はぁ?なんで突然UFO?と驚いてしまうが、それも結果的にいったい何だったのかは放置されて回収されないまま映画は終わる。
観客置いてきぼり。

物語はそんな具合に何か意味ありげ、だけど実は何もないんじゃ、みたいに進んでいくが、それを見せるカメラワークがまたものすごく特徴的だ。
とにかく長回しというか、独特の長い間が特徴的だ。
これって放送事故?フィルム止まった?(ネット配信だったので、WiFi接続切れた?)と思うくらい、1点を映したままそれこそ2-3分そのままというカメラワークが何度も出てくる。
この場面に何か意味があるのだろうか?
当然これだけ引っ張ってずっと映しているのだから何かあるんだろう、と思うのだが、全く意味が分からない。
あと300回観ても解らない自信がある。それくらい解らない。

そんな解らない物語と意味ありげに静止するカメラワークに反して、圧倒的に主張してくるのが「音」だ。
自宅のテレビで観たのだけど、映画館のサウンド・システムやヘッドホンで聴いたらもっと迫力が違ったのかもしれない、と思った。
もう一度タブレットでヘッドホンをして観てみよう(聴いてみよう)。
きっとASMR動画と同じような効果があるのかもしれない。

家の中の小さな音、物が触れる音、歩く音、街の雑踏音、車の音、森の風の音、草木の揺れる音、終始ずっと何かしらフィールドレコーディングのような音が流れている。
特に印象的なのが雨の音。町中で突然降り出す豪雨の音、森で降り出す雨、
最後のエンドクレジットでも音楽ではなく雨の音が流れていた。

最後の森のシーンで、もう1人のエルナンを通してジェシカが記憶を追体験しているシーンでも、映されているのはジェシカの横からと正面からの静止画で、記憶は音でだけ観客には再生されている。
例の脳内の音の正体のシーン(UFOのシーン)以外は。

そのように音が映画の主役かのように扱われているが、物語としては音があまり意味をあるようには語られていない。
若いエルナンが音響技師ではあるのだけど。

今、こうやって観賞後の印象を書いていても、どうにも収まりが悪い。
面白くなかったという訳ではなかったが、面白かった!とも言えず、
ポカーン( ゚д゚)
というのがリアルな感想かもしれない。

昨年のユリイカ12月号がアピチャッポン・ウィーラセタクン特集のようなので、入手して読んでみようかとも思っている。

最後にあとひとつ、ティルダ・スウィントンはいつもの奇天烈な役ではなく、自然体だけど深みのあって素晴らしかった。

今回は配信で観たアピチャッポン・ウィーラセタクンの最新作「MEMORIA メモリア」についてnoteしてみました。

それでは!

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