見出し画像

色々と残念だった映画『愛にイナズマ』

いやあ、変な映画でした。
変な映画って失礼な物言いですが。

想像してたのと全然違うんです。
『愛にイナズマ』というタイトル、
映画宣材ポスターイメージ

これですね。
雨に濡れた2人が運命的な出会いをする。
まるでイナズマに撃たれたかのような衝撃。
「この出会い、一億ボルト」

ところが、ところが、
え?そんな映画だっけ?という感じ。

観てから一週間くらい経っているので細かいところは記憶も定かではありませんが、
それでも、一億ボルトの衝撃の出会いだっけ?

確かにこのシーンあります。
でもこのシーンは2人が出会ってからしばらく経ってからです。

2人が出会ったのはコロナ禍真っ只中、地下の寂れたバー。
バーのマスターと地元(群馬だか栃木だか)が同じだということで、いつもツケで飲ませてもらってる元俳優業の生肉加工で働く常連の正夫(窪田正孝)。

プロデューサーと副監督に翻弄され、もうやってらんねえや、とささくれだった気持ちの中たまたま見つけたバーへ入った花子(松岡茉優)。
しばし酩酊している時に偶然2人がお互いを認識し、意気投合し、挙句にキスまでしてしまう。
ところが、花子は酔っていて覚えていない。

なので、電流流れてないんです。
だって、忘れてたのだから。

それでも前半は映画業界の古い因習とあってないようなしきたりに、ほとんどハラスメント状態で1500万円の制作費を人参としてぶら下げられながら無給で映画制作をさせられる花子。

なんやねんコイツらという、一見物分かり良さげな女プロデューサー(MEGUMI)と副監督という立場でプロジェクト参加している先輩風を吹かせるクズのような男(三浦貴大)。
この2人が本当にムカつく。
一気に観客はその不条理さに花子に同情する。

そして、さらに幸薄に輪をかけたような正夫が出会い、これは完全に負けでしょう、という中で燃え上がる恋愛を縦糸に大逆転劇が横糸で絡まってくるのかと思いきや、
突然に仲野太賀は自死してしまうし(ぶらぶらさせるなよ。。)、
挙句に後半で別の映画か!というくらい全然違う話になっていく。

後半は花子が没交渉に近い2人の兄(池松壮亮、若葉竜也)と父(佐藤浩市)と失踪した母の秘密も探りながら家族の絆を取り戻していく話になる。

もちろん前半部と地繋がりではある。

結果的にまんまとプロットだけ盗まれて退場させられた花子が撮ろうとしていた映画が家族の物語だった。

なんで私の物語を関係ないお前らが勝手に撮ってんだ。
これは、私の家族の物語だ!

と、正夫を連れて実家に戻り、実際の家族を相手に自主制作映画を撮ろうとする。

ところが、その映画撮影も何だか家族の絆を取り戻すため設定でしかないようで、何だか尻すぼみになる。
挙句にカメラぶっ壊れてるし。

まぁ、それなりにいいんですよ。
家族の絆を取り戻すところ。
全くお互い理解し合えず、好き勝手にやってた兄弟が、長男(池松壮亮)の突然の責任感によって一つになろうとしていくところはジンと来る。

何故か父と次兄(若葉竜也)だけはクリスチャンで食事の前にお祈り捧げるところとか、各所で笑えるところは出てくる。

でもね、なんだかなぁ。
結局、これは何が伝えたかったのか。
若手監督には厳しい業界の話を批評的に描きたかったのか(多分違う)、

バラバラだった家族が、一つの目的のために力を合わせることで(母親の行方探し?家族の物語の撮影?どれも半端だけど)、絆を取り戻すところを描きたかったのか(多分違う)、

そして結局、タイトルの『愛にイナズマ』も何がイナズマなのかさっぱり分からずじまい。
2人の恋愛の行方もよく分からない(覚えてないだけかも、でもすれくらい印象なかった)。

監督は石井裕也。
脚本も監督自身のオリジナル脚本。
原作ありきの『舟を編む』はいうまでもなく傑作で、
満島ひかり主演の『川の底からこんにちは』も大好きな作品だったし、
仲野太賀主演の『生きちゃった』も小品ながら胸に残ったのに。

うーんどうしちゃったかなぁ。
期待し過ぎたな。

それでも次回作も期待してます!

〈了〉

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?