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映画 「アイ・アム まきもと」〜葬儀は故人を弔うためのものでもある

こんにちは、makoto です。

10月1日は映画の日。
映画がいつもより安く観られます。
1週間の疲れを癒やすために、映画を観に行こうと近所のシネコンへ行ってきました。

今日は気軽に邦画でいいか
と阿部サダヲさん主演の映画「アイ・アム まきもと」を選択。
観賞してきた直後のファーストインプレッションをnoteしておきます。
少しネタバレになりますのでご注意ください。

「アイ・アム まきもと」は予告編で何度も見ていて気にはなったんですが、予告編でみる阿部サダヲさんは「真顔でおかしな人の阿部サダヲ」
パターンだったので、何となくキャラクタが想像出来てしまいます。
阿部サダヲさんは演技上手なのですが、
キャラクタの方向性がパターンとして想像出来るというのは
どちらかというとマイナスポイントなんではないか?
と思わなくもなかったり。
この真顔でおかしな人(FunnyではなくStrangeの方です)は
阿部サダヲさんがよく演じるキャラパターンの1つだと思うのですが、
ふとした表情が近作「死刑にいたる病」のシリアルキラーと変わらん!
とちょっと気になって仕方ありませんでした笑。

あと、登場人物としては皆さん脇役でも良い味を出されていましたが、
宮沢りえさんがいつもとは違う感じで素敵でした。
満島ひかりさんは何をかいわんや、文句なしです。
何を演じていても無条件で100点満点です笑。

***

ところで、まったく知らなかったのですが帰宅して少し情報を見返していたら、この映画は元ネタというか、リメイクだったんですね。
日本公開が2015年のイギリス映画「おみおくりの作法」が元となる映画です。
この映画はポスターくらいは見たような記憶があるのですが、中身は知らなくて、今回予告編を見てみたら、ほとんどストーリーは同じですね。
でもオリジナルが結構シリアスな感じなのですが、こちらのリメイク版は阿部サダヲさんというのもあるのでしょうが、コメデイ色が多くトーンはかなり違っているんではないでしょうか。
一度、オリジナルの方も観てみたいです。

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さて、映画は阿部サダヲ演じる牧本(まきもと)が働く役場でただ一人、おみおくり係として無縁仏になりそうなご遺体を火葬し埋葬する仕事なのですが、本来の職務範囲を超えて、自力で親族を探し出し、自費でおこなう葬儀に来てもらおうとします。
その理由は最後まで明かされないのですが、故人を弔うことに何らかのこだわりを持っているようなのです。

ある日、おみおくり係を管轄する部署に新任の責任者が配属されてきます。
そして、おみおくり係が役割以上の業務をしていることを咎め、係の廃止を宣言します。
その時、牧本に
「葬儀は遺族のためにやるものだ。遺族が出席しない葬儀なんて必要ない」
と意味のことを言います。
それに対して牧本は涙を流して「そんなことはない」と激しく反発します。
やはり何か理由があるんでしょう。

僕がこの映画でキモだなと感じたのはまさにこの部分です。
これまで僕も葬儀とは
「遺族の気持ちに一区切りつけるため」
だと考えていました。
2019年に会社の同じチームだった同僚を、
そして、2020年・2021年と連続して父母を喪主として見送った際にも
同じように考えていました。

ですが、この映画で牧本は
「葬儀は亡くなった故人が安らかに眠れるように見送るものだ」
という彼なりの「おみおくり係」の信念から、葬儀も自費で行い、少しでも葬儀に参列して故人を見送る参列者が増えるように日々走り回ります。
親族が遺体の受け取りを拒否し、無縁仏として役所で処理して欲しいと言っても、牧本はその遺骨をすぐに納骨はせずに、自席の周りに溜め込んでいます。遺骨のお取り置きです。

周囲からみたら異常な光景なのですが、牧本の中では
「もしかしたら遺族の気が変わって遺骨を取りに来てくれるかもしれない」
という想いがあります。
そこには、無縁仏として葬るよりは、やはり遺族を知る身内や親族に弔ってあげて欲しいという強い想いなのでしょう。

映画では、おみおくり係最後のケースとして、身寄りのない老人の死として扱われそうになった宇崎竜童演じる蕪木と彼の人生で関わった知人や親族を探す旅が描かれます。

最後のシーンとなる鏑木の葬儀には、牧本の努力と願いが実を結び10名を超える参列者が集まり、それは立派な葬儀になります。
しかし、その葬儀にだけ牧本はいません。
葬儀直前に彼自身も交通事故で故人となってしまい、まさに同じ日に牧本自身の葬儀が無縁仏として執り行われていたからです。
これにはかなり驚いたのですが、その牧本の葬儀と(無縁仏としての)納骨には、いつもは遺体の受け取りで対立していた若い刑事だけは参列して、
「牧本さん、あんたの粘り勝ちだよ」と言います。

その後です、なんと鏑木が(宇崎竜童さんはこのラストのシーンだけで出てきます!)、そしてこれまで牧本が一人見送ってきた故人達がひとり、またひとりで集まってきて、牧本の遺骨に無言で手を合わせます。
まさに、故人を弔うためにお見送りをしてきた牧本に、見送られた故人たちが感謝をあらわしているのです。

***

「葬儀は遺族のためだけでなく、故人自身のためにもあるんだな」
と深くうなずいた瞬間です。
僕も亡くなった父母のためにあらためて手を合わせようと思いました。

想像したほどには感涙するという映画ではありませんでしたが、
今一度、葬儀とは何か、故人を弔うとはどういうことなのか
について考えさせてくれた映画でした。
観てよかったです。

映画の日、このあと夕方にもう1本観ようと思っています。
その話はまた明日。

それでは!

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