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「台湾有事」下の国民保護ー住民避難訓練に反対する!

*皆さんは、このマークを知っていますか?

――「国際法ではオレンジ地に青い三角形で描かれた特殊標章が定められており、これを掲示した施設や設備は文民保護に専従しているものとみなされて、攻撃を免れることになっている」が、自衛隊ではこの標識をつけることが何処にも明記されていない!

――「台湾有事」キャンペーンとともに、石垣島・宮古島などの「台湾有事下の住民避難」が、けたたましく叫ばれ始めた! 中国との平和外交を全く行うことないこの「有事キャンペーンー住民避難」を、私たちは、厳しく批判しなければならない。このキャンペーンに、乗っかり「住民避難訓練」なるものに手を貸してはならない。

そして、「台湾有事」下での、自衛隊の「住民保護」なるものは、もともと自衛隊が予定していない(戦闘優先)だけでなく、もし仮に自衛隊が住民避難に関わったとしても「軍民分離の原則」からして、危険極まりないという事実である。

*先島ー沖縄住民を、再び戦争にさらそうとしている、「台湾有事」キャンペーン、対中戦争態勢に全力で反対しなければならない。

宮古島・保良ミサイル弾薬庫

*以下は、中林啓修 (国士舘大学防災・救急救助総合研究所准教授)論文からー

「防衛省の国民保護計画では、輸送手段に制約がある島嶼地域などでは、保有する輸送手段を活用して可能な限り避難住民の運送を支援することや、避難住民等に対する炊き出し及び飲料水の供給、救援物資等の緊急、運送、生活必需品の貸与等を行うと定めるなど、離島地域の特性に配慮する一方で、自衛隊への特殊標章(文民保護に従事する人物等を明示するための国際的な標章)の交付については記述がない。

このことは、自衛隊が国民保護のための(特殊標章の交付を受けた)専従要員・部隊や資機材の提供を予定していないことの示唆だと理解されている。」

自衛隊の航空機や船舶は、先に紹介した「軍民分離の原則」から、他に手段がない場合の緊急措置として理解すべき事情がある。この原則は攻撃側だけでなく防衛側でも遵守すべきものとされていることから、住民避難に自衛隊を用いることは慎重に検討しなければならないのである。たとえば、不用意に海上自衛隊の艦船で住民を避難させた場合、日本側にその意図はなくても、相手国に「日本は軍民分離の原則を遵守せず住民を盾に軍艦を移動させた」と「解釈」させる余地が残ることになる。

過去の戦史に照らしても、「軍民分離の原則」の遵守は重要である。太平洋戦争中の沖縄戦では、住民の疎開に供された船舶の被害は、1944年8月に発生した米潜水艦による対馬丸沈没のみであったが、沖縄の住民には強い衝撃を与えた。その対馬丸が直前まで中国大陸と日本本土との兵員輸送に従事しており、かつ対馬丸を含む避難船団は軍艦による護衛を受けるなど、軍民分離が徹底されていなかった点は留意されるべきである

「文民保護に軍隊を用いることが絶対に不可能というわけではない。国際法ではオレンジ地に青い三角形で描かれた特殊標章が定められており、これを掲示した施設や設備は文民保護に専従しているものとみなされて、攻撃を免れることになっている。日本政府が自衛隊の航空機や艦船にこの特殊標章を交付することで、「軍民分離の原則」に則った住民保護は可能になるただし、特殊標章を交付された航空機や艦船は、その紛争の間は文民保護に専従することとされている

そのため、武力攻撃事態が迫る中での国民保護への自衛隊の協力は、極論すれば、軍民混合を前提に上で例示したようなリスクを負うか、特殊標章の交付により自衛隊の勢力を削って(つまり軍事的な不利を甘受して)行うかの二者択一とならざるをえない」

(海上保安庁は)国民保護に従事する要員、船舶、航空機、車両等への特殊標章の使用についても記述されており、住民避難等を資機材の提供も含めて支援する意図が読み取れる

 「結果的に避難が間に合わなかった住民に対する保護の手段となりえるであろう無防備地区・非武装地区の取り扱いなど、現在は武力攻撃事態の認定と同時に指定等の方針が示されることになっている諸措置についての2018年6月事前準備を加速させることも必要であろう。

無防備地区や非武装地区の設定には戦闘地域と避難地域の分離(軍民分離)が必須となるが、戦史上の教訓としても、島内避難で住民の安全を守るための前提として島内でその実現には自衛隊と自治体との綿密な事前調整……島内避難に伴い島内一部地域に対する無防備地区の宣言にまで発展した場合に日本として残留住民をどのように保護していくのかは、国民保護法で見送られた文民保護のための専従組織の必要性にも通じる重要な問題である。」

●参照論文

●「先島諸島をめぐる武力攻撃事態と国民保護法制の現代的課題一島外への避難と自治体の役割に焦点をあてて一」

https://www.jstage.jst.go.jp/.../46/1/46_88/_pdf/-char/ja

●「南西諸島での国民保護が問いかけてくるもの――安全保障政策で「何」を守るのか」中林啓修 (国士舘大学防災・救急救助総合研究所准教授)

https://synodos.jp/opinion/politics/23623/

●「有事の際に沖縄県民を守るための2つの課題」

中林啓修

https://wedge.ismedia.jp/articles/-/26615

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●拙著『ミサイル攻撃基地と化す琉球列島―日米共同作戦下の南西シフト』から

「言うまでもなく自衛隊の「島嶼防衛戦」は、平時から有事へとシームレス(切れ目なく)に発展することが想定されている(防衛白書など)。これは何を意味するのか? つまり、平時と有事の切れ目、区別がないということは、先島―沖縄の民衆らは、戦火を避けて島外へ避難する時間的余裕は全くない、ということである。

 確かに、制定された国民保護法では、住民避難が定められている。だが、同法では、政府が「武力攻撃事態」「武力攻撃予測事態」などを認定(有事事態・戦争宣言)することが必要であり、平時から緊急事態へ、有事事態へと切れ目なく移行するこの戦争では、住民避難は、全く不可能である。

 現実に、自衛隊制服組の島嶼防衛研究では、「島嶼防衛戦は軍民混在の戦争」になり、「避難は困難」としている。だから、この研究の一部では、避難は困難だから、イスラエルのように各家に地下サイロを造るという見解も出されている。

 そして、実際の「島嶼戦争」でも、作戦面からして住民避難は困難だ。この戦争の初期には、自衛隊は宮古海峡などの主要なチョーク・ポイント、中国軍の予想上陸地点や港湾に、大量の機雷をばらまくことになる。

 このような事態の中で、先島諸島だけで10万人を超える住民らを避難させる輸送手段はない。民間輸送においてもだが、自衛隊による輸送においても、その手段は全くない。実際に、国民保護法による住民避難の法律上の実施責任は、自治体であるが、先島などにはその輸送態勢は全くない。自衛隊にしても、「作戦上支障ない限り協力する」としているが、自衛隊の第一義的任務は戦闘行動である。

(注 既述の統合幕僚監部『統合運用教範』および「防衛省・防衛装備庁国民保護計画」[2005年]には、有事下の自衛隊による国民保護に関して、以下の記述がある。双方とも同文。

 「防衛省・自衛隊は、武力攻撃事態等においては、我が国に対する武力攻撃の排除措置に全力を尽くし、もって我が国に対する被害を極小化することが主たる任務であり、この防衛省・自衛隊にしか実施することのできない任務の遂行に万全を期すこととなる。このため、防衛省・自衛隊は、その機能及び国民からの期待に鑑み、主たる任務である我が国に対する武力攻撃の排除措置に支障のない範囲で、国民保護等派遣を命ぜられた部隊等又は防衛出動・治安出動を命ぜられた部隊等により、可能な限り国民保護措置を実施する」(『統合運用教範』第3章「武力攻撃事態及び存立危機事態における行動、第11款「国民保護のための措置」、傍点筆者)

 このような、島民・住民の避難が不可能という状況下で、見てきたように「島嶼防衛戦」は、対艦・対空ミサイル部隊が島中を移動し、戦場と化する。また、島嶼間の高速滑空弾や、島嶼間の巡航ミサイルなども、雨霰のごとく降り注ぐのである。琉球列島の小さな島々は、この中では、焼き尽くされ、破壊し尽くされるだろう。」
(拙著『ミサイル攻撃基地と化す琉球列島―日米共同作戦下の南西シフト』264頁から引用)


私は現地取材を重視し、この間、与那国島から石垣島・宮古島・沖縄島・奄美大島・種子島ー南西諸島の島々を駆け巡っています。この現地取材にぜひご協力をお願いします!