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#人生

サイクル

サイクル

デザイナーの伸子は、一仕事を終え買い物に出かけることにした。
夏の夕暮れ時は、まだ明るく暑さも和らいでくる。
運動不足気味なので、歩いて出かけることにした。

靴を履き、玄関から出ると蝉の死骸が転がっていた。

気持ちが切なるなると同時に、あることを思い出す。
伸子がまだ小学校の時、時江ちゃんという子がいた。
その子は、体が小さく内気な子だった。

学校終わりの夏の帰路、時江ちゃんと一緒に歩いてい

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嫌だけど、やりがいはある(短編作品)

嫌だけど、やりがいはある(短編作品)

 
 和樹はため息を漏らした。実に深いため息。
こんなため息をついてはいけないと思ったが、仕方ないかとも思う。
ここ最近、嫌なことが連続して起きて、仕事をするのがえらく億劫だ。
職場にくるまで、なんでも仮病で休もうかと思った。
 真面目にやっているが、周りがそうではないのだ。
今日も、朝から雑な管理。ルールの「ル」文字も守ろうとしない。
以前、指摘したら、
「これくらい、わかるだろ〜 悟れよ」

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友の影響 短編作品

友の影響 短編作品

 仕事が終わり、食堂に行くと忠信が項垂れている。
「あぁ、また御愁傷様かぁ。瞬時にわかる。
声を掛けるのが億劫に感じるが、ここは忠信の話を聞いてやるとしよう。
そばによると、待ってましたの如く忠信が顔を上げる
「おぉ 誠司・・・・・・」
「忠信、ダメだったかぁ」
「あぁ・・・・・・」
忠信がマッチングアプリを始めて、1年になる。
実らない恋を悔やみ続けているのだ。
1年で出会った数は、今日のを含め

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天賦を探しに (短編小説)

天賦を探しに (短編小説)

 遂に、オール三の成績となった。ここまでの努力と道のりは
長かった。
しかし、もう受験シーズンとなり、これ以上の成績アップは望めない。
頑張って頑張って、努力したものの、これが、限界だ。
始まりは、オール1からだった。
だが、ここまで上り詰めた。そして、高校受験。
受ける気すらない。
もう懲り懲りなのだ。頭の悪さと不器用さが自慢なんだ!
と、ひどく自暴自棄になり、ひどく項垂れていた。
 塾の個室で

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