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絵本と、絵本好きな人たちが私を支えてくれた8年間 【エッセイ風】

1810文字 
声に出すと約7分



幼い頃の家の風景を思い出してみると、
「絵本」がいつもテーブルの上にあったように思う。

超が付くほど本好きの母が、幼い私にたくさんの絵本を読んでくれた。
そのお陰なのか、私にとって本というものはとても身近な存在だった。
年齢とともに児童書、ライトノベル、小説と読むものは変わっても、本はいつも生活のどこかに必ずあった。

子どもを授かったと分かった時、何より先に用意したのは、赤ちゃん用の絵本だった。

胎児が最初に外を知ることができるのは、音だという。
まだ見ぬ世界の美しさを、優しさを、選び抜かれた言葉たちから届けられるようにと、絵本を声に出して読んだ。

それが私の「読み聞かせ活動」と呼ばれるものの始まりだ。

小学生の頃から音読が好きだった。
声で表現することは、いくつになっても変わらず好きなままで、きっとこれが私の一番の安定剤なのだと思う。

そんな好きなことと、好きな絵本をどちらも楽しめる「絵本の読み聞かせボランティア」という活動があることを知った。

娘が10ヶ月の時に講習を受けに行き、晴れて読み聞かせグループへ参加できることとなった。

いよいよ好きなことができる!と、期待に満ち溢れて始めたボランティア。
しかし私は、ここで大きな2つの壁にぶつかった。

1つ目は、読み方。

私の芝居がかった読み方は、講師の司書さんから厳しく注意をいただいた。

まず、”読み手”が前面に出てはいけない。
絵本の内容をシンプルに届けるために、感情を込めてはいけない。
声色は大きく変えないこと。

講師の方によって読み方への指導に差はあるものの、「私が住んでいた市の図書館」ではこのように統一されていた。

平坦で分かりにくくないだろうか
聞いていて、つまらなくはないだろうか
どう読めば、子どもたちに絵本の素晴らしさを届けられるのだろうか

迷いと経験のなさから、とても不安になった。


そしてもう1つの壁

「私の中の蔵書の少なさ」

おはなし会をする際、「選書」という工程がある。
何の本を読むか、どの順番で読むか、という作戦会議である。

私は、母から読んでもらった絵本くらいしか分からない。

もちろん、思い出の絵本はそれなりの数あったが、おはなし会のプログラムを組む上では圧倒的にその数が足りなかった。

これは、改めて読み聞かせ向きの絵本について学ばなければならない。

そんな焦りや不安を解消するべく、私はいくつもの「おはなし会」に聞き手として勉強に伺った。
そしてその時、架け橋となってくれたのが娘だ。

ボランティアとして見学したいという場合、各所への連絡や確認が必要であることが多いく、場合によっては断られることもある。

しかし、子どもはパスポートとはよく言ったもので、娘がいると公共施設では大概歓迎してもらえるのだ。

あちらこちらのおはなし会に行くことで

〇歳頃にはこの絵本が喜ばれる
この季節には、この絵本が鉄板

そんなことが見えてきた。


当初、私が「選書」に持って行った絵本はちっとも選ばれないことが続いたが

ある時「これいいね!これも!」と
その月のプログラムの半分を私が選んだ絵本で組んでもらえる日がやってきた。


ボランティア活動の間は、娘を母に預かってもらっていた。
娘を迎えに行った際に

「やったよ!たくさん選ばれたよ!」と、得意げに話したことを今もよく覚えている。


最初は、絵本を読ませてもらえる場所が登録している図書館しかなかった。
もっと読みたくて、別の図書館でも講座を受けボランティア登録した。
そこで、読み聞かせボランティアグループの立ち上げに関わり、代表となった。

その後、保育園で、子育て支援施設で、地域のイベントで、
私たちは絵本を介して、お子さんやそのご家族と出会うことができるようになった。



絵本にのめり込んでいった私は、
絵本を読み漁り、
「絵本」と名のつく講座には飛びつき、
「おはなし会」「読み聞かせ」と聞けば県内どこでも娘と馳せ参じ、
自称「絵本オタク」となった。

後に「絵本のことならマコさんに聞いてみよう」と
地域でお声を掛けていただけるようになり、少しばかり講師のお仕事もいただいたりした。

おはなし会の練習の全てに付き合ってくれた娘。

読み聞かせ活動を裏方で応援し続けてくれた母。

やる気と瞬発力だけの私を頼ってくれたグループの方たち。

絵本と、絵本好きな人たちが私を支えてくれた幸せな8年間。

ここで一旦の区切りを付けて、絵本のボランティア活動にピリオドを打った。

ー   次は、絵本と何をしようか   ー




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