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やりたいことを、する。

私には、やりたいことが多すぎる。

そして色んなものに手を出しては、長続きしない。
そういうことをずっと繰り返していた。

そんな私が、唯一幼い頃からずっと続けられているのが、絵を描くことと物語を作ることだ。幼稚園の頃は、絵を描くことよりお話を作ることの方が好きで、ずっと「本屋さんになりたい」と言っていた。本屋さんが本を作っている人だと思っていたのである。
それが少し変わったのが小学校に入った頃。漫画を読み始めるようになり、絵を描く楽しさを覚え、「物語を作りたい、絵を描きたいんであれば、漫画を描けばいいんじゃないか」と考えた。
その頃から、30代になった今も、目標はずっと「漫画家」だ。

幼い頃は、親も親戚も周りの人はみんな、「本屋さんになりたい」という私の夢を嬉しそうに聞いてくれていた。だが、成長するにつれ少しずつその様子も変わってくる。
高校生になった頃には、「美術大学に行きたい」と親に言ったら、「医学科以外認めない」と言われた。正確には、「医大以外ならお金は出さない。自分で行け」。バイトもしたことがない(親からバイトは禁止されていたし、学校でも禁止だった)高校生の私にとって、それは「医大以外認めない」という言葉と同義であった(世間には自分で稼いで大学に通学している人が数多くいるという事実は今は置いておく)。

しかし結局、医師を志すことを決めたのは自分だ。それは、安定した資格が欲しかったというのも勿論あるし、命・倫理観に関して深く学べる機会を与えられるのは物語を作る際にも重要なことだという思いもあった。
だが、医師として働けるようになるには、6年間の大学生活に、資格取得のあとの研修期間2年間と長い期間がかかる。安定した職を得るという意味では、その頃にはもう26歳。それから先、本当にまた漫画家を目指すことができるのだろうか。
そんな時、私の母が言った。

「本当にやりたいことっていうのはね、いつになっても、何歳になっても、やりたいものなのよ」

私は目から鱗だった。
そうだ、と。スポーツなど年齢でどうしても縛られてしまうものであれば話は別だが、物語を作ること、絵を描くことなど、何歳になったってできる。むしろ年を取れば取るほど、色々な知見・知識・経験も交じり、より良い物が作れる可能性だってある。年齢、時間で諦める必要のない目標だ。

私は医大に行った。そして医学を学び、資格を取り、今も医師として働いている。医療現場は大変で毎日てんてこ舞いだが、私はそれでも漫画や絵を描く。そして今でも、漫画家になりたいという目標は捨てていない。

幸いなことに、ここ数年で育児漫画や店内内装などで時々お仕事をいただく機会もできた。コンスタントにもらうことはないし、それで生きていけるわけではないからまだまだ目標としているところとはかけ離れているが、自分にとっては大きな大きな一歩だ。

今でも時々、「あの時医大でなくて美大に行けていたら」と考えることはある。しかし、もう過去には戻れないし、絵や漫画はどこでもいつでも描ける。それに、今年の4月から「完全オンライン」の芸術大学が開講された。夫に「入学してもいいだろうか」とおそるおそる確認したら、「いいんじゃない。学びたいんでしょ」と快諾してくれた。両親も今は私が漫画や絵を描くことを応援してくれていて、忙しい中も隙間時間を見つけながら、授業と課題をこなす日々を過ごしている。

子育て、漫画を描くこと、仕事をすること、授業・課題をこなすことを同時にするのは、周囲の助けがないと不可能だ。現在それらを続けられている私はとても恵まれた環境にいると痛感している。そしてその恵まれた環境を手にすることができたのは、あの時医大に進み、医師になり、現在の夫に出会うという一つ一つの選択の結果だ。その人生の中での選択を後悔するかどうかというのは、現在の生き方によるのだと分かった。私は今までの選択を後悔しないように、今を生きていきたい。

だから今後も私は、私のやりたいことをやって生きていく。
60歳でも、70歳でもいい。私の目標をかなえるために。



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