『ゆめうつつ』
季節外れの台風が列島を襲い
残り少ない桜の花びらをこれでもかと毟り取る
起きるか
書店でタイトルに魅かれて偶然手に取ったら
もう半年も前に購入済だった文庫本
窯焼きのナポリ風ピザが卓に置かれた
注文したのはシンプルなマルゲリータ
自転車をどこに置いたかすっかり忘れ
駐輪場の係に尋ねたら168番
立て替えた諸費用の領収書で財布がパンパンに膨らんでいて
月を跨がないうちに精算の申請をせねばと焦る
ひい爺さんが炭鉱で働いていたときのことを
父から又聞きしたけどあまり詳しく覚えていないことを思い出す
貰いものの入浴剤でどこだかの温泉気分を味わうものの
なんだかすっかりお湯が冷めていて沸かし直しに苛立つ
寝るか
テレビの画面の中から私だけに呼びかける声があり
その音量が次第に大きくなるから耐え切れず別のチャンネルへ
最近いよいよ
区別がつかない
酒でも飲んで
忘れるか