『後ろめたさがあるわけですから』

毎日会社で

あなたを見るのが苦痛です

それは失恋の痛みなのでしょうか

もうそんなことは

とうに忘れてしまいました

あなたみたいなひとを

なぜかつてのわたしは

好いてしまったんでしょう

あなたの傍若無人な振る舞いが

とても許せません

わたしの苛立ちをわかって

そんな行動を取っているのでしょうね

同僚のデスクに飛び乗り

踊り出す

役員の後頭部を

突然叩く

そんなことをしてもあなたは

一切お咎めなし

課長は注意をするどころか

へらへら

ときには

爆笑までしています

ほかのメンバーのみんなも

怒りの矛先がわからないようで

って

当たり前なんですよね

あなたの姿が見えているのは

わたしを除いて

課長だけ

あの日のあの晩

課長が運転する車にはねられて

あなたは帰らぬひととなりました

ご遺族と示談がついて

課長も無事に

会社に残ることができています

課長からすれば

後ろめたさがあるわけですから

見えないあなたを

注意することも

できないのでしょうね

あなたもそんな課長のもとで

成仏されずに

毎日オフィスを暴れまわっては

みんなが慌てたり

焦ったりする姿を見て

楽しんでいるのでしょうね

あぁそういえば

まだ言っていませんでしたね

あの時ほろ酔いのあなたを

道路へ突き飛ばしたのは

わたしでした

警察もなぜかわたしを

疑いはしなかったけど

なんだかこんな毎日が続くなんて

まるで刑罰を受けているようです