『説教パターンね』

「君と私はいまここで初めて会った。でもよければ、訳を聞かせてくれないか」

なにがキミとワタシ…

時間稼ぎをして

説得を試みようとしているのは

見え見えだった

「赤の他人のほうが、話しやすいってことも、あると思うし」

よくわかってんじゃん

でもワタシは話なんかしないよ

そもそもアンタがこっちに来ればいいんだよ

「君が死んで、悲しむ人が大勢いる、いや…」

悲しむ人なんていないし

それに…

「迷惑かけるんじゃないよ！たくさんの大人たちに！」

うまい手を使ってきたな

泣き落としとか

懐柔ではなくて

説教パターンね

しかも親が可哀想とかじゃなくて

社会一般が迷惑するからやめろという主張

んっ

と小さく

ワタシは頷く

「わかったら、そんな危険な場所にいないで、さぁ」

手すりにかけていた足をおろし

靴を履いて

おじさんの元に向かう

ワタシはニッコリ笑って

小さく拍手

８５点だよって

伝える

「な、なにが、８５点なんだよ…」

点数伝えて困惑しなかった人はいないから

これは慣れっこ

ワタシの幼く憎たらしい趣味

飛び降りほのめかし

気が向いた昼下がりに

ビルの屋上にふらっと行って

靴を脱いで

手すりに…

もちろん誰かがいるのを

見計らってね

あんまり大勢いられても

困っちゃうよ

おじさんに訳を話したら

なんだそれ面白そうじゃん知ってたらもっと捻っただって

二度目はチャレンジ不可って決めてまーす