『サム』
超絶有能新人君が職場にきて、そろそろ三か月くらいか
わが営業管理部の生産性は、これまでのおおよそ十倍となった
管理者である私も彼の本名がうろおぼえで
なんとかいったな
とにかく、そうそうめずらしくない名前だ
月が替わると、私と七人の部下総出で
売上を足し
経費を引き
利益を算出していた
彼が入社するまでは
ところが、彼の登場とともに、そんな作業は瞬く間に終わり
月次決算業務はほぼワンタッチで終わるようになった
ああ思い出した、彼の名は山田君だ
ありふれていて、忘れてしまった
山田君は、パソコンの何かをつかって
売上金額の合計値を素早く導き
わが営業管理部の一大業務をひとりでこなしてしまう
結果を確かめるべく、人員を割いたこともあった
正しかった
これが何を意味するか
つまり私たちは存在意義を失う
会社における存在意義、仕事を奪う
山田君に仕事を奪われた七人の部下と私は、路頭に迷う
私たちは知恵を出し合った
結果、パソコンの線を抜くことにした
山田君は来月から、存在意義を失う
私たち営業管理部は安泰だ
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