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『「お義父さん、はいお餅どうぞ」』


「お義父さん、はいお餅どうぞ」


今年は例年になく露骨

じいちゃんに対する

母の餅テロ計画


俺の小さい頃から

この習慣は続いていて

なんでじいちゃんにばっか

餅を食べさせるのかなって思ってた


ネットで偶然目にした記事で

いろいろと察した


正月三が日は当たり前

それが過ぎてからは

午後のおやつに毎度

餅が出される


じいちゃんはわりと餅が好きみたいで

特に文句を言うこともなく

そして喉に詰まらすこともなく

黙々と食べる


それにしても

1月ももう下旬


今年は元日から毎日

餅を出しているから

さすがにと思って


俺は母に対して

ちょっとやりすぎじゃないかって

それとなく伝えてみた


「なんのことかしら」


すらっとぼける母


きょうは俺もじいちゃんといっしょに

きなこ餅を食べる羽目になった


浪人生の俺も

ある意味で肩身が狭い


じいちゃんのおやつの時間が終わると

いつも母は小さな舌打ちをする


それと

近所で救急車のサイレンが聴こえるたびに

溜息をつく


「またお餅、買ってこなくちゃ」


そう言って母は

夕食の買い出しに出かけた


今夜は冷えるから

なべ焼きうどんらしい


ここまで徹底していると

笑ってしまう


「お義父さん、お餅お好きでしたね」


父と母と俺には餅をひとつ

じいちゃんには3つ入れた


逝った


慌てるそぶりをしながら

119番にかける母


「あぁーら、そうですよね寒いですからね」


何があぁーらだよ

119番と世間話かよ


「火事やら急病が多くて、ちょっと遅れますって」


そういうと母は

悶え苦しむじいちゃんに

水の入ったコップを渡したきり

洗い物を始めた


父はいつのまにか

リビングから居なくなっている


俺もきょうくらいは

勉強するかな







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