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『換金の件で』


これはちょっと大きな声では言えないんだけど

世界中から選ばれた

一部の人間だけが購入できる

宝くじがあって


もちろん

賞金の額も本来の意味で桁違い

孫の孫の代まで遊んで暮らせるような金額


存在を知ったのはとあるダイレクトメールから

基準は知らないが

幸運にも私にその

購入権利がある旨の報せだった


そんなうまい話があるわけがない

そもそもどんなやつが主催しているんだ

それはそれは疑心暗鬼だった


ところが

再度ダイレクトメールが届き

某所に存在する事務局に招待されたり

さらにはその事務局の紹介で

実際の当選者の方にお会いできたりと


いわば闇の宝くじについて

知識が深まると共に

制度に対する疑念は消えて行った


購入に際して

注意事項はただ一つ

本件

すなわち

この宝くじについて部外者へ口外することは

いかなる事情を以っても禁じられ

また仮に当選後それが発覚した場合

一切の権利を無効とする旨


それはそうだろうな

闇だから


しかし

つまらない私の人生

闇だろうがなんだろうが

少しくらい刺激があってもいい

妻と相談し

理解を得て

退職金のほぼすべてをつぎ込んだ


およそひと月が過ぎて

いよいよ結果発表の段


購入者専用のWEBサイトから

自身の購入したシリアルナンバーを見つけるというもの


私が購入したのは

Cの

434676351

という番号


緊張しながら

妻と共に

サイトへアクセスする


特等

の欄に

Cの

お!

4346

おぉ!

763

おおおぉ?

5

うぁ!

1

うぉーーーーーー!


434676351ぃいいいー!


大げさではなく雄叫びをあげた

年甲斐もなく踊り狂った

冷静な妻は私の傍らで

幾度も番号を確認し

そっと涙していた


一息つく

まさか当たると思っていなかったものだから

換金の方法を調べていないことに気づいた

サイトにも詳しく書いていない

闇だからなあ


というわけで改めて

電話で

事務局に問い合わせてみた


トゥルルル

素早くワンコールで繋がる


「はい、こちらお電話取り次ぎ代行の○○コールでございます」

「あぁ、えっと、宝くじの、その換金の件で...」

「宝くじ...でございますか?」

「はい」

「それは、弊社請負の業務でございますでしょうか?」











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